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奴隷商人 Ⅲ 第22章 ●奴隷商人20、紀元前46年

奴隷商人 Ⅲ
第22章 ●奴隷商人20、紀元前46年

 翌日、ムラーがエジプトに連れて行く宦官3人、私とアイリス、ジュリアとソフィアを呼び出して、また丘の家の森に連れて行った。ピティアスと手下30人も一緒だ。フェニキアの街の鍛冶屋と弟子が大八車にボウガンと矢を山盛りに乗せて坂を登っていく。


「結構、苦労したんだよ。ボウの部分を板バネで作らせようとしたが、一枚板だと弦を引くのに力が要りすぎる。それで、重ね板ばねを作らせた。焼入れ、焼きなましにコツがいった。弦は細いワイヤーを編み合わせた。難しかったのは弦受けだ。すぐクラックが入る。これも試作を何度も作らせた。トリガーもスプリングを入れた。台座・弓床は金属じゃあ重くなりすぎてダメだ。レバノン杉で作らせた。滑車の付いたフルサイズクロスボウを30丁と連射式クロスボウを20丁作ってみた。各自、どちらを使うか、練習して腕の良い方を使わせよう」とムラー。


 ピティアスが「ムラーの旦那、これはギリシャのヤツラが使っているのに似てますな」とボウガンを触ってチェックしている。「こりゃ、海賊稼業にも使えるかな?」と物騒なことを言う。荷物をおろした鍛冶屋一行をムラーが金をやって街にかえした。


「ああ、ギリシャのは、コッキングと言って、腹と地面を使って、体重をかけて固定し、背筋を使って弦を引いてセットする方式のクロスボウだ。そんなんじゃ、次の弓をつがえるまで時間がかかって仕方がない。これは滑車がついてる。この滑車についたハンドルを回して、弦受けにひっかけてやる。簡単だろう?」


 ムラーが丸い弓矢の的を作らせていて、杉の幹に固定した。いいか、みんな、まず、10メートルから初めて、各自、だんだん離れていけ。その命中度を見て、フルサイズか連射式か、使うのを決める。両方携帯するのは重くってかなわん。矢ももっていくからな。矢は金属製と木製の二種類。もちろん金属製の方が威力はあるが、重くってかなわん。さあ、やれ。


 ボウガンだと、普通の弓矢と違って、男だろうが女だろうが、弦をちゃんとセットすれば威力は同じだ。フルサイズで金属製の矢を10メートルの距離から使うと、漬物石程度の岩石を貫通した。フルサイズで木製の矢だと40メートルの距離からでもかなりの殺傷力があるのがわかった。


 俺は使い慣れた半月刀がいいぜ、というヤツもいるが、接近戦でしか半月刀は使えないだろう?敵も飛び道具を持っていたらどうするの?と言うと、殺られるのもイヤだからなあ、としぶしぶ練習している。


 意外と命中率がよかったのが、ジュリアで、次はソフィアだった。アイリスもうまい。ソフィアは大柄だから、男並みだが、フルサイズで金属の矢を使うと、弦をセットするのに手間取って、次の矢を射るのに時間がかかった。ジュリアとアイリスは、連射式クロスボウと木製の矢を使うことに決めた。それでも、弓と矢20本で20キロ近くなる。アイリス用にもっと小型の連射式クロスボウを作らせようとムラーが言う。

奴隷商人 Ⅰ

奴隷商人 Ⅱ