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奴隷商人 Ⅳ 第24章 ●奴隷商人22、紀元前46年

奴隷商人 Ⅳ
第24章 ●奴隷商人22、紀元前46年

 ムラーがピティアスの船を改修したから見に行こう、と言った。


 エジプトにはピティアスの商船(実は海賊船)で行くのだが、船で行くのは気が進まない。真水がないじゃない!海水で体を洗うとカイカイになってお肌に悪いでしょう?トイレはどうするのよ?海に飛び込んでするの?小さい方はいいけど、立ち泳ぎで大きい方なんてできないわ。かといって、陸路で行っても途中の宿とか、不潔そうじゃない?


 歴史ロマンとか太古の世界とか、そんな小説とかマンガが20世紀にあったが、お便所の話とかお風呂の話とか、誰も書かないのはなぜなの?『そうぞうりょく』の欠如よ!


 いいこと?20世紀の小説家!マンガ作家!紀元前にはケツを拭く紙はないんだからね!古代ローマでケツを拭くのは、ウンコをこそぎとる木のへらとみんなで使う海綿スポンジなのよ!・・・興奮してしまった!


 そう言えば、歴史書で、オクタウィアヌス軍とクレオパトラ/アントニウス連合軍が闘ったアクティウムの海戦で、クレオパトラはエジプトの艦隊の旗艦に乗船していたけど、彼女、お風呂やトイレはどうしていたんだろう?


 なんて思っていると、エミーが、ああら、20世紀のか弱いお嬢さんはどうしようもないわね。私なんか、黒海東岸のアディゲ人の村から拐われてきて、ピティアスの船とは比べ物にならない小さな船で二週間も航海してフェニキアに来たんですからね!


 おしっこ、ウンコ、だって?そんなもん、海賊が見ている前で、その前で、木の桶よ、桶!桶にまたがってしたわよ!その桶を自分で海水で洗ってたわよ!真水を使えるのは、数日に1回、港に寄港したときだけ。


 私は族長の娘で巫女長で処女だから、奴隷の売値が下がるので手をつけられなかったけど、他の拐われた女たちは、海賊にバカスカ犯されてたわ!絵美さん、お嬢様、贅沢言うんじゃないわ!と絡まれた。


 まあ、確かに。20世紀にフェリーで優雅に船旅を楽しむわけじゃない。エジプトには戦闘に行くのだし。諦めよう。


 ピティアスの船は、紀元前の今頃の世界でよく使われるコルビタ船だ。当時、ローマ帝国の領土の港を行き来していたポピュラーなデザインの船で、戦闘艦としても使われる。

 コルビタ船は、2本マストで船体は西洋梨の形をしている。船尾へいくほど中が広くなる構造をしている。最も大きいコルビタ船は、乗客とともにワインやとうもろこしなど千トンもの積荷を運ぶことができ、遠くはインドまで航海していた。ローマの話に出てくるガレー船とはちょっと違う。



奴隷商人 Ⅳ 第24章 ●奴隷商人22、紀元前46年 に続く。

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