フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

A piece of rum raisin - 第3ユニバース 第4話 セルン、2008年9月16日(火)、2008年9月18日(木)

A piece of rum raisin - 第3ユニバース
第4話 セルン、2008年9月16日(火)
 ●アトラス
 ●量子脳理論、2008年9月18日(木)

 私たちは、アイーシャの運転で、アトラス搬入口に向かった。アイーシャに青色のヘルメットを渡された。


 大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は直径8.6キロ。周長は27キロでほぼ山手線と同じ長さだ。深さ106メートルの地下に設置されている。LHCの円周の途中に設置されているアトラスへは、搬入口の横のサービスエレベーターで降りていく。

 宮部さんと湯澤さんとは別行動で、セルンスタッフの素粒子物理学者に取材して、島津さんとアイーシャさんのオフィスに戻ってきた。このオフィスは居心地がいい。それに、アトラス搬入口も近くにあるのだ。


「お帰りぃ~」とアイーシャが日本語で言う。「ちょうど紅茶を淹れたのよ。お飲みなさい」とマグカップを渡された。彼女の故国のセイロンのウバ茶という紅茶。スリランカ式で甘くて、疲れた体にはピッタリの飲み物だ。

「面白いわよ。でも、人間の意識・知性・思念はどういう仕組になっているのか、まだ誰も証明していないの。それが素粒子、量子力学に絡んでいる、なんて考えるとワクワクしちゃう。昨日の夜は、研一とはその話をしていて、盛り上がったのよ。あ!それで、今度、デートしないか?とは聞かれたわ」

「やっぱり!」


「でもね、レイコ、私が思うに、この宇宙は一つじゃない、マルチバースで構成されていて、別のユニバースには、私と似た存在がいる。量子脳理論なら、そういう存在との記憶がなんらかの拍子で転送されちゃう、なんて思えてくるのよ。そして、宇宙には、実体を持たない、純粋知性みたいな、意識・知性・思念だけの存在もいるんじゃないかと思えてくる。ドキドキしない?別の宇宙の自分に会ってみたい」と少女マンガのキラキラ眼で、アラフォーの南アジア美人は言う。やっぱり、私たち、オタクかも。こりゃ、結婚できないね?


「あ!ところで、今晩のご予定は?」とアイーシャさんが聞く。

「これといってありません。セルンを見学してまわろうかな?と思ってますけど。もっとあの半球状の『Globe of Science and Innovation、ビジターセンター』も見てみたいの」と私。


 島津さんとアイーシャさんのコテージに行った。日本からお客さんがたくさん来ていた。島津さんもアイーシャさんも何も言ってなかった。サプライズ?日本の物理界で名のしれた人たちだった。


 カミオカンデでニュートリノの研究をしている東京大学宇宙線研究所の小平一平教授と加藤恵美博士。宮部さんと同僚の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の森絵美博士の三人が先にコテージにいた。


 小平教授が宮部さんと湯澤さんに「おまえら、文科省にうまく取り込んで、省予算で出張を組みやがったな。おまけに、担当は洋子にアイーシャときたもんだ。さらに、こんな可愛いマスコミの人まで一緒。お前らだけにいい目はみせんよ。わしらも、明日のLHCの5テラ電子ボルトの磁石励磁試験を見学させろ!と大学とKEKにねじ込んだんだ。どうだ?メグミと絵美、ふたりの美人も連れてきたぞ。美人が5人。ハレムだな、ここは」と言う。

第4話 セルン、2008年9月16日(火) に続く。

第1話 プロローグ、2008年9月8日(月)

第2話 神岡鉱山、2025年9月8日(月)、第三ユニバース

第3話 島津洋子、2008年9月9日(火)

第3a 話 セルン、概要(写真集、イラスト)

第3b 話 セルン、概要(写真集、イラスト)