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奴隷商人 Ⅴ、第33章 奴隷商人31、紀元前46年

奴隷商人 Ⅴ
第33章 奴隷商人31、紀元前46年

 神殿から離れた地下通路の出入り口の兵士はすぐ片付けられた。私たちは地下通路を神殿方向に進んだ。しかし・・・

「おい!アイリス!なんでこうなるんだよ!」とエミー様が怒鳴る。「お前、地下通路の横道を塞ぐ鋼鉄製の下がり格子があるなんて言ってなかったじゃねえか!」


「そ、そんなこと言われても。私はクレオパトラに連れられて、見て回っただけで、格子が落ちてくる仕組みがあるなんて知らなかったです!」

「ばっか野郎!私とお前だけがこっちにいて、残りのウチの連中は格子の向こうじゃねえか!」


 そう言われても、ツーハンドで手斧をぶら下げて、駆け出したのはエミー様で、私は一人で行かせちゃダメと思って、みんなと離れて横道にそれるエミー様の後を追っただけなんですけど。なんで、こんな時に、絵美様は引きこもるのよ!


 正面はアヌビスが二頭いる。私たちは、天井から崩落した砂岩の塊の後ろにいた。ムラー様は私たちが横道にそれたのを気づいていないだわ。アヌビスがマシンガンで連射してくる。砂岩の破片が飛び散り、目に入る。これでは埒が明かない。


「エミー様、私が飛び出して、ビームで相手を倒します!」と言って飛び出そうとした。エミー様がその手を引いて、危ないと私を引き戻した。アヌビスの機関中の射線がエミー様の右腕を引き裂いた。動脈から鮮血が吹き出る。腕が半分ちぎれかけているのがわかった。


「エミー様!」あああ、どうしよう?どうしよう?どうしよう?し、止血を・・・


「い、痛い!ア、アイリス、エミーの馬鹿野郎、気絶しちゃったわ!」あ!絵美様に交代したのね。「マズイ!マズイ!マズイ!腕が千切れかけてる!」

「絵美様、し、止血を!」

「こりゃ、ダメだ。動脈失血だ!ああ、どうしよう!どうしよう!どうしよう!・・・ア、アイリス!ムラーの血清は?血清と注射器は?」

「え?あ?・・・ここです!」とバックパックを探って、血清の入った試験管と注射器を取り出す。

「ムラーが言ってたね?腕や脚がちぎれたヤツにそれを心臓に注射しろって!アイリス!やって!すぐ!」


 私は、注射器に針をつけて、試験管の封蝋に突き刺し、プランジャーを引き上げた。どのくらいの分量か、聞いてない。目一杯吸い上げる。

「早くして!意識が遠のいてきた・・・」と絵美様が言う。彼女のボディーアーマーを左右に開いて、左胸の乳房の下の肋骨の間に思いっきり突き刺した。プランジャーを押し込む。

奴隷商人 Ⅴ 第33章 ●奴隷商人31、紀元前46年 に続く。

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