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奴隷商人 Ⅷ、第44章 ●奴隷商人42、紀元前46年

奴隷商人 Ⅷ
第44章 ●奴隷商人42、紀元前46年

●戦闘


 ムラー様たちは、ホルスを迎え撃つために飛んでいってしまった。残っているのは、38人の人間だけだ。絵美様が堀を掘って擁壁を作ったと言っていたが、相手はベルベル人の盗賊団30人とアヌビス20頭だ。ムスカは大丈夫なのかしら。


「マンディーサ、アヌビスはジャッカル頭だろ?鼻が効くんじゃないかな?」とキキが言う。なるほど。私たちは、風下の砂丘に移動した。ジャッカル頭は夜目も効くだろう。砂丘の峰の上に腹這いになって、隠れた。頭だけ出して、ナイトスコープで覗き見る。一団は私たちの砂丘の横、500メートル位を通っていく。やり過ごす。


 アヌビスが時々立ち止まって、フンフンと鼻面をあげて臭いを嗅いでいるようだ。やっぱり嗅覚が鋭い。私たちのキャンプの調理の臭いなどが風に運ばれているんだろう。私たちのキャンプまでもうすぐそこだ。3キロと離れていない。30分ほどで着いてしまう。ナイトスコープで見ると、キャンプの方角がボヤッとして見える。アヌビスもナイトスコープみたいな視覚があるのかしら?嗅覚と視覚で、キャンプの場所がわかっちゃう!


「マンディーサ、後ろから陽動で射撃したらどうだろう?」とキキが言う。

「そりゃ、ダメだ。私たちに気づく。キャンプは堀と擁壁があるからいいけど、私たちは気づかれたら逃げ切れない」

「ムラー様たちは?」とジャバリ。

「連絡はない。ホルスと闘っているんでしょう。テレパシーって奴で連絡しちまうと、戦闘の最中だ、気が散ったらダメだ。連絡できない」


 私たちは、奴らの後ろをついていくことしかできない。やきもきする。チクショウ!私、まだ、ムスカと抱き合ってキスしかしてないじゃん!私を犯さないで死んだら、ムスカ、承知しないからね!生き延びたら、金貨10枚、要らない!タダでやらしてやる!


 あっという間に奴らはキャンプに近づいた。堀の手前500メートルで左右に散開した。キャンプを包囲するつもりのようだ。密集して攻撃すれば、要撃するのが簡単だが、等間隔で囲まれると各個撃破しないといけない。


 奴らの装備は、ムスカたちと同じようだ。盗賊もアヌビスもマシンガン、レーザーガン、レールガン、グレネードランチャーを持っているようだ。レールガンを使われたら擁壁なんて貫通する。グレネードランチャーだったら、擁壁を越えて手榴弾が中で爆発する。ラクダが怯えて暴走したら大事だ。


 私たち三人は、狙撃用にレールガンを持っているだけだ。奴らは包囲の円陣をジリジリと狭めていく。もう堀から300メートルほどだ。チクショウ!


「なあ、マンディーサ、このレールガンってヤツは、音もシュポっていうくらいだろ?マシンガンと違って光も出ない。後ろから撃たれたら気づくだろうが、擁壁の反対側の奴らを撃てば、擁壁の中から撃たれたと勘違いするんじゃないか?それで、私とジャバリが左右に分かれて、あっちの離れた砂丘の峰から、あんたと三方向から狙撃するのってダメかね?気づかれる可能性は低いと思うよ」とキキが言う。

「ああ、それならうまくいきそうだぜ。ガンをショールで巻けば目立たないだろう。そうしないと、ピティアスの旦那たちが殺されちまう」とジャバリも頷く。できるかしら?


 キキがジャバリに「さっきさ、出掛けにマンディーサに言ったんだけどよ、私は12才から体を売っていて、普通の暮らしは知らない。誰かいい男がいて結婚しても、娼婦だったことを隠したりしてもその内バレる。でも、ピティアスの旦那の手下なら、私が娼婦だって、もうバレバレじゃないか?生き延びたら、私もジャバリも金貨百枚、お大臣様だよ。金持ちだ。ジャバリ、二人合わせりゃ、金貨二百枚、どうだい?私と所帯を持つのも悪かないよ。20才の年増だし、マンディーサほどキレイじゃないが、そこそこだぜ?あそこも悪かなかったろ?これからだって、じゃんじゃん、ガキを産めるよ」とレールガンを抱きしめながら、ちょっと照れて言った。二人合わせて金貨二百枚って、私が言ったセリフじゃない?プロポーズの流行り言葉なの?

第44章 ●奴隷商人42、紀元前46年 に続く。

シリーズ『奴隷商人』

奴隷商人 Ⅰ



奴隷商人 Ⅱ

奴隷商人 Ⅲ

奴隷商人 Ⅳ

奴隷商人 Ⅴ

奴隷商人 Ⅵ

奴隷商人 Ⅶ