奴隷商人 Ⅸ、第51章 ●奴隷商人49、紀元前46年
奴隷商人 Ⅸ
第51章 ●奴隷商人49、紀元前46年
●砂漠行 3
【砂漠行10日目】 200+60キロ
今日は絵美と二人きりだ。絵美が、今日は私の番よ、みんな出ていって頂戴!と小テントからみんなを大テントに追い出した。珍しいこともあるもんだ。第1夫人の強権発動とは。
「ムラー、昨晩はどうでした?」と聞かれた。
「あのなあ、高校1年生の可愛い処女と高校2年生のクレオパトラそっくりとやるなんてものじゃないぜ。お前と違って、酒飲みながらお話してまったりするって感じじゃない。エミー、アイリスとするのとも違う。イシスはアイリスよりもクレオパトラの血筋を濃くひいていて、お前の言う高校2年生なんてもんじゃない。ありゃあ、生まれながらの娼婦だ。普通の男だったら骨抜きになっちまう。さすがにクレオパトラが自分の身代わりにしようと仕込んだだけのことはある。房中術のテクニックなら、ハレムの中でナンバーワンだろう。それで、昨日の夜でアルシノエの体を開発しやがった。今までご無沙汰だった高校1年生と高校2年生だぜ?俺が貪るんじゃなくて、貪られたよ」
「ふ~ん、ムラーがそうだったなんてね。アルシノエは、宦官のアブドゥラとパシレイオスに任せればいいじゃない?」
「昨日知ったが、ピティアスの娘だぜ?宦官にやらせるわけにもイカンだろう?第一、アルシノエが旦那様以外とするのはイヤ!舌噛み切って死にますよ!と言うんだから」
「生意気に。まあ、可愛いところがあるじゃない?」
「絵美、お前も余裕こいてるけどな、入っている体は大学1年生の金髪碧眼の白人女のエミーなんだぞ。意識は27才の日本人女性だが、体の欲求は大学1年生の金髪碧眼の白人女なんだからな。自分じゃ自覚していないだろうが」
「あら?私、そんなに激しく求めてないわよ?」
「お前のは、激しい肉弾戦じゃなくて、長時間ネッチリなんだ。アンアン泣くから攻めているつもりが、搾り取られるんだよ。それで、途中交代でエミーが出てきたら、今度は激しい肉弾戦になるだろ?一番大変なのが絵美/エミーだ」
「そうなの?自覚なかったわね。それにしても、イシスがもしもクレオパトラに奪い返されて、プローブを転位されたら、7世よりも強力になりそうね。注意しないと」
「イシスが『旦那様と絵美/エミー様が私とアイリスを守ってくださると信じています。それでもクレオパトラの手中に落ちたら、私を殺してください』と言ってたぜ」
「いざとなったらね。だけど、私にイシスとアイリスを殺せるかしら?」
「クレオパトラが彼女たちに転位しそうになったら、躊躇せず殺せ。さもないと、俺たちが危ない」
「わかっているわ。肝に命じましょう。ところで、話は違うけれど、大スフィンクスがなぜ2つあり、八千年昔、一つは将来の大ピラミッドの築かれるギザ台地、もう一つがエジプト古王朝のメイドゥム・ピラミッドまで15キロの位置の砂漠のど真ん中に建設されたの?」と聞かれた。
俺なりの解釈を説明してやった。長くなるぞと。
まず、純粋知性体ってのを理解してるか?わからない?正直でよろしい。知性体になる前の実体のある生物だったとき、それが酸素呼吸系種族であろうと、塩素呼吸系種族であろうと、メタン呼吸系種族であろうと、その母体の相違とは関係なく、純粋知性体は、全宇宙中のレシピを知っているグルメだが、料理はしない存在になっちまうということだ。
わかんないって?純粋知性体はエネルギーがない、当然質量もない実体がない存在だ。それが宇宙の、マルチバースの森羅万象をほぼ知っている。ところが、実体がないものだから、自分で手を出すのはかなり面倒なんだ。なんらかの物質、生物に働きかけないといけないからな。
グルメと料理人の例えを変えよう。純粋知性体は、20世紀の天才物理学者、アルバート・アインシュタインに似ている。アプリオリに、先験的に真理がわかっちまうところがある。深く思索しなくてもわかっちまう。途中をかっ飛ばしてマラソンのゴールに現れちまう汚さがある。
ところが、真理はわかるんだが、アルバート・アインシュタイン、数学は得意じゃない。だから、え~と、あれだよ?あれ?とか数学者に説明すると、数学者があんたの言わんとする真理の数式はこれかい?と数式を見せられると、おう、それそれだ!ちょっと違うがね、ここをこう定数を加えると、完璧だ!とか言い出す。
第51章 ●奴隷商人49、紀元前46年 に続く。
シリーズ『奴隷商人』
奴隷商人とその時代
奴隷商人とその時代 (続き)
奴隷商人 Ⅰ
奴隷商人 Ⅱ
奴隷商人 Ⅲ
奴隷商人 Ⅳ
奴隷商人 Ⅴ
奴隷商人 Ⅵ
奴隷商人 Ⅶ
奴隷商人 Ⅷ
奴隷商人 Ⅸ

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