フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦10、恵子・永福と久美子編、ヒメと明彦 XXXXVIII

よこはま物語
ヒメと明彦10、恵子・永福と久美子編

ヒメと明彦 XXXXVIII
 1977年7月22日(金)
 ●後藤恵子 Ⅸ


 新横浜駅から中華街に戻った。良子が別れ際に、明日の朝はH飯店に行って、おバア様、王さん、徐さん、吉村刑事に今日のことを説明に行かないといけないわね?みんな渋い顔をするだろうなあ、と言う。そりゃあそうだよ。東の台湾の連中との揉め事が西に飛び火したんだから。でも、いずれにしろ、西の台湾の連中から十名、こっちに増援部隊が来るのだろうから、備えなければいけないけど。

 朝早くH飯店に行くと、もうみんな集まっていた。飲茶が丸テーブルに並んでいた。良子から説明があったんだろう。林田のおバアさん、王さん、徐さん、吉村刑事が腕組みをして、渋柿を食べたような顔をしている。みんな唸っている。私が部屋に入って来るのを見て、おバアさんが「後藤巡査、ここにお座り。飲茶をお食べ」と彼女の隣の席を指さした。

「誘拐された女たちを救出しなかったとしても、いずれにしろ西の台湾の連中の増援部隊十名がこっちに来るのは変わらないんだろうね。でも、人質救出という東で起こったことが西でも起こったのだから、西でのことは、横浜が関与していると強く疑うだろう。ファンファン、こうなったら、お前のパパに事情を説明しないといけないね。今日、私が出向いて説明する。お仕置きされるよ」と言う。

「お婆さん、しょうがないですね。お仕置きくらい覚悟してます」
「ファンファン、お前だけじゃない。お前と吉村刑事のことも説明しないといけない。お互い知らなかったとはいえ、高校3年生の未成年のマフィアの家の娘と肉体関係を持った刑事ってさ。吉村さん、ファンファンのパパは娘を溺愛している。まだ処女だと信じ込んでいるんじゃないか?吉村さん、ドラム缶にコンクリ詰めにされて、東京湾に沈められるかもしれんよ?」
「・・・冗談ですよね?」と刑事。
「しごく真面目な話だ。覚悟を決めて、刑事を辞職、ファンファンと結婚して、張の家を継ぐしかないかもな」

「・・・まあ、ファンファンと結婚するのはやぶさかじゃないですが・・・」
「あ!浩司!今、言ったね?私と結婚って言った!良いんだね?結婚しても?今から区役所に行こう!籍を入れよう!」とファンファン。
「あ!先を越される!ファン!吉村さんを今晩貸して!」と良子。ファンファンといい良子といい緊張感がないよなあ。

「吉村刑事、ここの台湾の連中はあんたがこの事件の裏を知っていると思っている。誰が在日米軍郵便局に人質の女がいるって話をあんたに通報したか、知りたがっている。あんたもヤツラに捕まるかもしれないよ?注意をおし。ファンファンと結婚するのはいいけど、この子がさっそく未亡人になるのを見るのは忍びないからね」

ヒメと明彦 XXXXVIII に続く。