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よこはま物語、ヒメと明彦11、ファンと浩司編、ヒメと明彦 XXXXXV

ヒメと明彦 XXXXXIV の続き。

よこはま物語
ヒメと明彦11、ファンと浩司編

ヒメと明彦 XXXXXV
 1977年7月29日(金)
 久美子 Ⅲ
 横浜、久美子


 私は月曜日から署に出て勤務していた。副署長と加藤刑事部長が『具合はどうかね?』と聞いてくる。女の子の日とウソをついて先週の火曜日から病欠と言っていたのだ。まだ、ちょっと、と言葉を濁した。バカ野郎ども。もう二度とお前らには抱かれないんだよ。それよりも、これからどうなるか、覚悟しやがれ、と思った。


 週末の午後、慶子が久美子を連れて加賀町署にやって来た。浅草警察署からの帰りだという。久美子に兵庫県警で上野の男の住まいの聞き取り調査をした。浅草の地図を見せてだいたいのアパートの場所の目星はつけたそうだ。それを警視庁に通報し、警官が任意同行を求めたところ、逃走しようとしたので、確保したそうだ。久美子が面通しを所轄の浅草警察署で行い、男を特定したとのこと。久美子の上野の男の部屋におきざりにした持ち物は、浅草署から引き渡された。これで刑事事件の懸案事項は終わった。


 慶子が持ってきた引き渡し書類に署名、捺印した。久美子の勤務先のH飯店を見せないと確認にならないわね、と交通課の課長に断って、署を出た。直帰です、と言いおいた。


 久美子の実家の持ち物は、秋田の両親に電話をして、また脅して、小荷物で郵送させて既にH飯店の寮にある。高校は、退学届を両親に出させた。H飯店近くの神奈川県立磯子工業高等学校の定時制に申し込んだ。久美子は高校3年生なので、残り半年通えば高校を卒業できるので、単位制コースで卒業に足りる授業だけ受ければいい。学んだ科目の修得単位数が74単位以上になると卒業できる。京浜東北線で、石川町駅から三駅目だ。久美子の秋田の高校に連絡して、仮手続をしておいた。来週の月曜日から通える。


 H飯店のおバア様は、本人が進学したいなら夜間大学も受験させるという。神奈川県じゃあ、横浜国立大学の経営学部しかないけどね、とのこと。本人次第だ。


 H飯店に行くと、永福、おバア様と王さんが個室で待っていた。久美子と慶子を紹介した。事前に慶子はほとんど、ここと神戸の誘拐・集団人身売買のことは知ってます、兵庫県警を通じて、協力してくれるそうです、と報告しておいた。


 6時過ぎに、吉村刑事が来た。ファンファンと良子も東京の大学の授業が終わって顔を出した。久美子が怪訝な顔でファンファンと良子を見ていた。私はハンカチを取り出して、こんな感じ?と久美子に見せた。あ!と言って、ファンファンと良子に『あの時はありがとうございました!』とお辞儀をした。ファンファンが良子に『この子に何かしたっけ?』とそらとぼける。


「そう言えば、慶子、あの時の台湾の連中はどうなった?」と聞いた。
「犯人5人の内の4人よね?彼らはまだ入院中。誰かに陰部を踏み潰されたんだって。再建手術を受けたそうよ」と答えた。吉村刑事がファンファンを睨む。ファンファンは『私、知ぃらないっと』と言った。
「ファンファン!良子!今度はそういう手を使えないからな!」と吉村刑事が二人を叱る。確かに、相手がハジキを持っていれば、さすがの二人も危ないだろう。


「吉村さん、久美子ちゃんの前でそういう話はお止め」とおバア様が言う。吉村刑事が恐縮した。「久美子ちゃん、仕事は女給、ああ、いまじゃあウェイトレスって言うのかい?その仕事だ。お客様へ料理を配膳したり、片付けたりの仕事をまずしてもらう。慣れたら、給仕や注文取り、キャッシャーも手伝ってもらう。勉強は、良子、芳子に見てもらいなさい。大学に行くかどうかは、おいおい相談しよう」と言う。
「ハイ、頑張ります。いろいろとお助けいただいてありがとうございました!皆さま、これからよろしくお願い致します。粗相のないように頑張って働きます!」とお辞儀した。


 王さんが、女性従業員を呼んで、久美子を寮まで案内させる手配をした。久美子がドアのところで、またお辞儀をした。あの子なら大丈夫じゃないかな?でも、叔父さんに強姦されたことだし、時々様子を見に来ないといけないと思う。


 私と慶子で、神戸で起きたことをみなに説明した。誘拐・集団人身売買事件は、犯人5人の自供で罪を5人がひっかぶったので、神戸の台湾マフイアはほぼ無傷だ。警察は内偵しているが、マフィアの上層部までは追求できないだろう。入荷待ちだった残りの一人の消息はわからない。地方の暴力団経由だったのか、誘拐されて、入荷元が手入れを食らったんで、今頃は地方のソープランドやピンサロなどの性風俗産業に売り飛ばされているだろう。香港に売り飛ばすのとは違って、売値は5分の1の2百万円ぐらいだろう。


「しかし、仲里美姫、佐藤久美子、彼女たちは俺たちの知り合いだったから良かったが、そうでなかったら、別の子が入荷して、5人揃ったところで、香港に出荷される。年6回の取引なら、30人。横浜と神戸で60人。6億円くらいにはなる。地方の暴力団や米軍、倉庫のコストを考えると純益は5割。3億円程度じゃないかな?」と王さんが言う。
「王さん、仲里美姫って?」私の知らない名前が出た。
「在日米軍郵便局の内密に先に逃した5人目の女の子だ。良子の同級生だ」
「なるほど。その子の一件からこの騒動が始まったのね?それがなければ、私は永福と仲直りができなかったんだ。美姫ちゃんにお礼を言わないと」
「彼女も後藤巡査や佐藤久美子と似たような強姦から始まった。クスリを盛られてやられたんだ」
「まったく。無理矢理やるのがスキな男が多いこと」
「嗜虐心をそそられるんだろう。俺も同年代の娘がいるが、心配だよ」


「女の子一人の売値が1千万円なの?高くないの?ペイするのかしら?」
「日本人は特に高い。処女だともっと高く売れる。中国人は処女が好きで、初体験に30~50万円払う金持ちもいる。買い手は、金持ちが個人的に囲うケースもあれば、組織が買って売春をさせるケースもある。1回、5~10万円で売春させれば、3ヶ月で元が取れる。薬漬けにして、逃亡する気力をそぐとともに、薬物を使ったセックス、キメセクで快楽を味わわせれば、自分から男を欲しがるようになる。5年から10年で廃人になるが、その間に2~4億円稼がせる。女の子一人でだ。どうしても逃げようとする子は、四肢を切断されて『だるま』にする。そういう片輪が好きな変態もたくさんいる」


「四肢を切断?ひどいことを!」
「ヤツラに人間的な感情は期待できない」
「なぜ、日本人女性が高く売れるのかしら?」
「アラブじゃあ、アジアの先進国の日本人の女を囲っているのがステータスなんだそうだ。ロールスロイスほどの金を払っても日本女を欲しがる。自分が楽しみ尽くしたとしても、セカンドハンドでも十分な価格で売れる。政治の道具として使えばいくらでも利用価値がある。それに日本女はアラブ女と違って年を取っても肌は衰えないし、いつまでも若い。中国人、朝鮮人も同じ極東人種だが、日本女性の性格の良さからは程遠い。だから、日本人女性は高額なんだそうだ」


「しかし、横浜と神戸で年60人。すごい人数だわ」
「氷山の一角だ。美姫や久美子のように家出して行方不明になる人間は年間数千人。いやもっとかな?それに国内だけじゃない。外務省は、海外渡航して、パスポートの期限が切れたのに帰国しない人間が年間6千人以上いるとしている。国内国外で、1万人程度のこういった誘拐、人身売買の日本人被害者が出ている勘定だ。日本人以外だと何万人、何十万人になるんだろう?美姫や久美子は高校生だが、小児性愛者が好む10才以下の少年少女も誘拐の対象だ。中華系の俺が言うのもあれだが、中国人、中東のアラブの金持ちは変態だよ」
「私たちがこの商売を根絶するのは不可能なのね」
「紀元前から続いている商売だからな。古代ローマなどでは、海賊が村を襲い子女をさらって奴隷にしていた。近代でも、アメリカの黒人奴隷は有名だろう?」


「ファンファンと良子たちがここに現れてから、俺はイヤな予感がしたんだよ。そうしたら、徐がじゃじゃ馬を一人増やした。神戸でもお前らは突撃した。それで、兵庫県警の婦警さんまで増えた。なんてこった。俺は普通に中華料理屋の商売をしたいんだ」
「王さん、ほっとけないじゃない?誘拐、売春、薬物を商売にするヤツラが悪いんだよ」とファンファンが言う。
「お前のパパは、そういう商売には手を出さない。月極のシノギで満足しているマフィアだからな」

ヒメと明彦 XXXXXV に続く。