フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)第七話 絵美 Ⅰ 👈NEW

フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)第七話 絵美 Ⅰ 👈NEW

●第七話 絵美 Ⅰ

●森絵美の家

●御茶ノ水、明治大学

●明大の講堂

●山の上ホテル


1979年2月16日(金)、1979年2月17日(土)あらすじ

 どうも、あのあと(#7 第五話 真理子 | フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)- 第4ユニバース - フランク・ロ - pixiv)、メグミとも真理子とも気まずくなったのは仕方がない。そりゃあそうだ。しばらく女性とは距離を置こうと思った。


 去年のクリスマス・イブは、女弁護士先生の島津洋子(#8 第六話 洋子 Ⅰ 👈NEW | フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)- 第4ユニバース - - pixiv)さんと危うくどうにかなりそうだったけど、キスだけで逃れた。危ない、危ない。


 だけど、今回、2月の寒い日、出会った女の子は・・・


 レモン画翠を出て、駅の御茶ノ水橋前の交差点を渡り、明大通りの坂を下る。お茶の水は何事もなく、ひっそりしていて、春休みの大学街には古本あさりのおじさんがちらほら傘を差して歩いているだけだ。この坂で70年安保の際に、石畳を剥がして投石していた十年前が想像できない。トボトボ歩いて、明治大学の横に来た。文系の大学の方が理系の大学より大学っぽい、というのはなぜなのだろうか?やはり、女の子がいるか、いないかの差なのかもしれない。


 門をくぐって、構内に入っても誰もとがめる人もいないので、ズンズン奥の方に行ってしまう。ここは、いつもなら飯田橋の理学部にはあまりいない女子学生が闊歩しているのだろうな、などと思いながら、教室、教室を覗いて歩く。もちろん、誰もいないのだが。


 どこを歩いているかわからなくなった時、廊下がつきて、ロビーに出た。ロビーに面して、第一講堂なんて、両開きの古い木の扉の上に大書してあり、その木の扉はちょっと開いていた。そして、講堂の中から、ピアノが聞こえた。


(へぇー、キース・ジャレットを弾いている人がいる)


 扉を少し開けて、ソォーと、着ていたピーコートを引っかけないようにすり抜けて、講堂に入った。後ろの扉だったので、演壇まではエンエンと座席が三十列くらい続いていた。


 演壇にはスポットライトが一灯だけついていて、その光の輪の中で、女の子が長い髪をサラサラ揺らしながら、鍵盤をのぞき込むようにして、ケルン・コンサートのパートⅠを弾いていた。やけに脚も手も長い女の子だ。


 ぼくは邪魔をしないように、一番後ろの列のたまたま下がっていた座席にそっと腰を下ろした。キース・ジャレット本人とまではいかないが、ミスタッチがないのはすごい。ケルン・コンサートは即興で演奏されたので、譜面なんかないのだが、ぼくが聞く限りそのままだ。


 女の子は、全曲を弾き終わると、顔を上げ、一番後ろに座っているぼくをジッと見た。


「見たわね?」彼女は、演壇からよく通る声でぼくに怒鳴った。


 ぼくはギクッとして、「ごめん、気付いていたの?」と謝りながら、演壇の方に降りていった。こう離れているとお互い怒鳴り合わなきゃいけない。怒鳴り合っていると喧嘩のようだ。


「ドアが開いて、一瞬明るくなれば気付くわよ」


 なるほど。講堂の後ろの扉を開ければ外光が入って一瞬光る。それが目に付いたということか。


 彼女は、前屈みにぼくを見下ろす。演壇の上から見下ろされるものだから、心理的に分が悪い。彼女は、誰もが目を引くような美人ではなかった。体つきはしなやかで背が高く、スラリとしたウェストと小ぶりな胸、長い黒髪に日本人にしては高い鼻。少し離れていても感じる強靭な意志と聡明さを感じさせる女性だった。20才の絵美は、非常に魅力的な女の子だったのだ。目がまったく大きな久保田早紀という感じだ。


「女性はね、注意しなくても、みんな見えるのよ」と言った。確かに、男性は注意しないと何も見えない。女の子は器用だな。

目次

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)」目次

第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18733823
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18740056
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18742144
第二話✔(第1ユニバースの)メグミ Ⅰ
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18750151
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18749641
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18769068
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18769591
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)
●クリスマスイブのホテル・バー
●女性弁護士
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18781878#2
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
●森絵美の家
●御茶ノ水、明治大学
●明大の講堂
●山の上ホテル
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18783330
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅰ)」目次

ヰタ・セクスアリス - 雅子 1、、2021年2月16日(火)、1977年春(小森雅子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17949476
ヰタ・セクスアリス - 雅子 2、1977年春(小森雅子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17950585
ヰタ・セクスアリス - 雅子 3、1977年春(小森雅子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17959634
ヰタ・セクスアリス - 雅子 4、1977年夏(ヒデ、ユミ)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960066
ヰタ・セクスアリス - 雅子 5、1977年夏7月(小森雅子、美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960075
ヰタ・セクスアリス - 雅子 6、1977年夏7月(小森雅子、美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960292
ヰタ・セクスアリス - 雅子 7、1977年夏9月(小森雅子、美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960307
ヰタ・セクスアリス - 雅子 8、1977年夏9月(小森雅子、美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960318
ヰタ・セクスアリス - 雅子 9、1977年夏9月(小森雅子、美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960332
ヰタ・セクスアリス - 雅子 10、1977年11月26日(土)(小森雅子、美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17960343
ヰタ・セクスアリス - 雅子 11、1977年冬11月(田中美沙子、杉田真理子、加藤恵美)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17980459
ヰタ・セクスアリス - 雅子 12、1977年冬12月(杉田真理子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17986850
ヰタ・セクスアリス - 雅子 13、1977年冬12月(杉田真理子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17998953
ヰタ・セクスアリス - 雅子 14、1979年2月16日(金)(森絵美)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18025344
ヰタ・セクスアリス - 雅子 15、1979年2月16日(金)(森絵美)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18025349
ヰタ・セクスアリス - 雅子 16(エピローグ)、1979年夏8月(美沙子)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18010931

登場人物

登場人物(ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)(Ⅱ)の世界)

シリーズ『フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅰ)』

シリーズ『フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)』

宮部明彦    :理系大学物理学科の2年生、美術部。横浜出身
加藤恵美    :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、
心理学科専攻
杉田真理子   :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、
哲学専攻
森絵美     :文系大学心理学科の2年生、明彦の恋人
島津洋子    :新潟出身の弁護士、明彦の愛人
清美      :明彦と同じ理系大学化学科の1年生、美術部
小森雅子    :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、
実家は和紙問屋、明彦の別れた恋人
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身

登場人物(第1、第2、第3ユニバース)

シリーズ『A piece of rum raisin - 第1ユニバース』

シリーズ『A piece of rum raisin - 第2ユニバース』

シリーズ『A piece of rum raisin - 第3ユニバース』

宮部明彦    :理系大学物理学科の2年生、美術部。横浜出身
加藤恵美    :お茶大の理系学生、大学2年生
杉田真理子   :明彦と同じ理系大学の2年生、明彦の女友だち
森絵美     :理系大学物理学科の2年生、明彦の恋人
島津洋子    :物理学者、明彦の愛人、第2では弁護士
清美      :明彦と同じ理系大学化学科の1年生、美術部
小森雅子    :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、
実家は和紙問屋、明彦の別れた恋人
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身