シリーズ『フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅰ)』
あらすじ
大学に入学して一年間、部活やサークルに所属しなかった。二年になってからでもいいかな、大学の様子も知りたいしね、なあんてぼくは思っていた。それよりも、バイトで忙しかった。六本木のプロカメラマンのスタジオで助手のアルバイト、横浜の伊勢佐木町の友人のアトリエで、小学生相手に油絵の先生をしていた。
下宿先のアパート→大学→スタジオ→アトリエの間を往復して、女の子とも付き合わず、大学の講義とバイトに専念した。かなり貯金も貯まった。それで、大学二年に進級したのを機会に、助手の仕事も週四日だったのを週二日に減らした。先生はブツブツ言ったが、ぼくだって大学生活を楽しみたかったのだ。アトリエも夏休みの間だけにしてもらった。
じゃあ、部活でもするかな?と思って、ぼくは出遅れた入部をすることとした。入部するのはやっぱり美術部だよなあ、と思って。GW前の木曜日の午後だった。二号館を回り込んで、部室やサークル室の固まっている棟屋の二階に行った。ニ号館、2513室で、部屋はまだ真新しそうだった。部室のドアを開ける。
「すみません。入部希望の者なんですが」と言って部室に入ると、そこには女性が一人ベンチシートに座っていた。ショートヘアをちょっとだけ茶髪に染めているボイッシュな女性だ。
彼女は立ち上がって「あら、季節外れの入部希望者ね?」とぼくの顔を見ていった。小顔で背はあまり高くなさそうだ。黒のブランドロゴがデザインされたTシャツ、白の脚にフィットしたチノパンツにスニーカーを履いている。可愛い顔つきだ。
「二年生で出遅れの入部希望者です」と言うと、「二年生から部活なんて珍しいわね。どうぞ、歓迎するわ」と言って自分が座っていたベンチシートの横をパンパンと叩いた。隣に座れということかな?彼女は本棚からノートを持ってきて「ここに記入して」とぼくにノートのページを指し示した。氏名、生年月日、住所、電話番号、学生証番号、所属学部学科、美術部でやりたいこと欄。
ぼくがノートに記入していると彼女が覗き込んだ。「名前は、フランク・ロイドくんって言うんだ。物理科の二年生ね。ふ~ん、私は雅子、小森雅子よ。よろしくね。化学科の三年生よ」「あ!小森さん、先輩なんですね?」「先輩って言っても、ロイドくんは五月生まれじゃない?私は同じ年の一月生まれだから、四ヶ月年上なだけよ」「ちょっとだけお姉さまなんですね」「でも、年上には変わりないわね。部費は月に千円だけど、持ち合わせある?」と聞かれたので、「じゃあ、今年度の残り、十一ヶ月分、まとめて払います」と言うと「リッチやなあ」と柔らかいアクセントで言った。あれ?関西の人なのかな?方言フェチのぼくはちょっとゾクッとした。
登場人物
小森雅子 :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
フランク・ロイド:理系大学物理学科の2年生、雅子の恋人、美術部。横浜出身。方言に弱い
田中美佐子 :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身。雅子とフランクと体の関係を持ってしまう
ヒデと由美 :フランク・ロイドの同級生と同じ美術部の彼女
真理子 :理系大学化学科の2年生、フランクと同期、美術部、杉田真理子とは別人
杉田真理子 :フランクの大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学科専攻
加藤恵 :フランクの大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
森絵美 :フランク・ロイドの恋人
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 1
プロローグ、部室での出会い、雅子のマンション、雅子とフランク
→ 2021年2月16日(火)、1977年春
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 2
雅子のマンション、雅子とフランク
→ 1977年春
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 3
雅子のマンション、雅子とフランク
→ 1977年春
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 4
雅子のマンション、雅子とフランク、ヒデと由美
→ 1977年春
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 5
雅子のマンション、雅子とフランク、美佐子のセックス
→ 1977年夏
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 6
雅子のマンション、雅子とフランク、美佐子のセックス
→ 1977年夏7月
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 7
御茶ノ水、四ツ谷、真理子とフランク
→ 1977年夏9月
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 8
雅子のマンション、雅子とフランク、美佐子、京都に戻ってこい
→ 1977年夏9月
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 9
雅子のマンション、雅子とフランク、美佐子
→ 1977年夏9月
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 10
大学、真理子とフランク、横浜デート、雅子とフランク、美佐子、京都へ
→ 1977年夏9月、1977年11月26日
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 11
渋谷、屋根裏、フランクと美佐子、真理子と恵
→ 1977年冬
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 12
横浜、上野、フランクと真理子と恵
→ 1977年冬
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 13
上野、フランクと真理子
→ 1977年冬
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 14(絵美1)
目白の絵美の自宅、絵美と神宮寺奈々、明大講堂、フランクと森絵美
→ 1979年2月16日(金)、1979年2月17日(土)
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 15(絵美2)
フランクと森絵美
→ 1979年2月17日(土)
● ヰタ・セクスアリス - 雅子 16(エピローグ)
神田、雅子とフランク、森絵美
→ 1977年11月26日、1979年8月、2021年2月16日(火)
● シリーズ『フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅰ)』
● 関連シリーズ『A piece of rum raisin - 第2ユニバース』

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