フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)、雅子 総集編1

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)、雅子 総集編1

目次

Page-1
●プロローグ、2021年2月16日(火)
●部室での出会い、1977年春
●神楽坂、居酒屋
●雅子の部屋、彼女のモノローグ
Page-2
●明彦との初めて
●まず、エッチから入るの?
Page-3
●私はこれで彼の女なんだよ、真理子、ざまぁ見ろ
Page-4
●由美と秀明と彼が三人で・・・
●そうねえ、私達も誰かを入れて試してみようか?
Page-5
●雅子のお隣さんの奥さん
●美佐子さんの盗み聞き
Page-6
●旦那さん以外とやっちゃった罪の意識はないの?
Page-7
●朝食と独占欲、所有欲、支配欲、依存心や執着心に勝るもの
●美沙子さん、専攻が哲学科なの?
●これじゃあ、実験にならないよ
●美沙子さんに私が攻められるわけね

出だし

 大学に入学して一年間、部活やサークルに所属しなかった。二年になってからでもいいかな、大学の様子も知りたいしね、なあんてぼくは思っていた。それよりも、バイトで忙しかった。六本木のプロカメラマンのスタジオで助手のアルバイト、横浜の伊勢佐木町の友人のアトリエで、小学生相手に油絵の先生をしていた。


 カメラマンの助手なんていうと、モデルや俳優のポートレートの撮影とか晴れがましい光景を想像するだろうが、いつもそんな案件が舞い込むわけじゃない。ぼくの先生だって、モデルや俳優の撮影だけで食っていけるほどの大物じゃない。


 いつもは、レストランのメニューを作るための食材の撮影をしていたり、植物園の先生の論文作成用の植物の超近接撮影をしていたりする。大学の超低温研究所の依頼で、雪の結晶ばかりを二週間撮影させられることもあった。


 そんなこんなで、下宿先のアパート→大学→スタジオ→アトリエの間を往復して、女の子とも付き合わず、大学の講義とバイトに専念した。かなり貯金も貯まった。それで、大学二年に進級したのを機会に、助手の仕事も週四日だったのを週二日に減らした。先生はブツブツ言ったが、ぼくだって大学生活を楽しみたかったのだ。アトリエも夏休みの間だけにしてもらった。


 じゃあ、部活でもするかな?と思って、ぼくは出遅れた入部をすることとした。入部するのはやっぱり美術部だよなあ、と思って。GW前の木曜日の午後だった。二号館を回り込んで、部室やサークル室の固まっている棟屋の二階に行った。ニ号館、2513室で、部屋はまだ真新しそうだった。部室のドアを開ける。


「すみません。入部希望の者なんですが」と言って部室に入ると、そこには女性が一人ベンチシートに座っていた。ショートヘアをちょっとだけ茶髪に染めているボイッシュな女性だ。


 彼女は立ち上がって「あら、季節外れの入部希望者ね?」とぼくの顔を見ていった。小顔で背はあまり高くなさそうだ。黒のブランドロゴがデザインされたTシャツ、白の脚にフィットしたチノパンツにスニーカーを履いている。可愛い顔つきだ。


「二年生で出遅れの入部希望者です」と言うと、「二年生から部活なんて珍しいわね。どうぞ、歓迎するわ」と言って自分が座っていたベンチシートの横をパンパンと叩いた。隣に座れということかな?彼女は本棚からノートを持ってきて「ここに記入して」とぼくにノートのページを指し示した。氏名、生年月日、住所、電話番号、学生証番号、所属学部学科、美術部でやりたいこと欄。


 ぼくがノートに記入していると彼女が覗き込んだ。「名前は、宮部明彦くんって言うんだ。物理科の二年生ね。ふ~ん、私は雅子、小森雅子よ。よろしくね。化学科の三年生よ」「あ!小森さん、先輩なんですね?」「先輩って言っても、宮部くんは五月生まれじゃない?私は同じ年の一月生まれだから、四ヶ月年上なだけよ」「ちょっとだけお姉さまなんですね」「でも、年上には変わりないわね。部費は月に千円だけど、持ち合わせある?」と聞かれたので、「じゃあ、今年度の残り、十一ヶ月分、まとめて払います」と言うと「リッチやなあ」と柔らかいアクセントで言った。あれ?関西の人なのかな?方言フェチのぼくはちょっとゾクッとした。


 GWも過ぎて、週にニ、三日、部室に顔を出すようになった。体育会系の部活でもないので、部員は三々五々集まっては、とりとめのない話をしたり、急に部員同士がモデルになって、クロッキーなんかをしている。ぼくは、部員同士の話を黙って聴いているのだが、雅子さんが京都出身だというのがわかった。普通は標準語で話しているが、何かの拍子で京都弁が出る。だんだん慣れてきて、雅子さん、明彦と名前で呼び合うようになったのがちょっとうれしい。


 彼女の方言が出るたびにぼくは雅子さんの方を見てしまう。ゾクッとするのだ。時々、雅子さんと部室で二人っきりになる。そういう時、雅子さんは、標準語が減って、京都弁が出ることが多い。あれ、ぼくを意識しているんだろうか?


 もうすぐ夏休みというある日の金曜日、その時もぼくと雅子さんが部室で二人っきりになった。もう夕方になっていて、陽も暮れかかっていた。


「ベラスケスの『宮廷の侍女たち』を見にプラド美術館に行きたいわね」と雅子さんがぼくに言う。「ぼくも行きたいですよ、プラド。バイトで旅費を貯めて来年ぐらいに行こうかなあ」そう答えると、雅子さんはニコッと笑ってぼくの顔を見た。


「あら、うちも来年の夏ぐらいに行きたいなって思ってて、貯金してるんや」ああ、ゾクッとした。


「ねえねえ、明彦、うちと一緒にプラド行こう?どう?私と一緒じゃダメ?」ぼくたちはベンチシートに隣同士で座っていたんだけど、雅子さんがぼくに顔を寄せてきてボソッとたずねた。ドキドキした。「い、いいですよ、雅子さんとヨーロッパ旅行なんて楽しそうだ。でも、ぼくで良いんですか?旅のお供が?」


「明彦とやさかい一緒に行きたいねん」ゾクゾクゾクとした。「ぼ、ぼくとだからスペインに?」「そう。明彦とだから行きたいのよ。あ、もう日ぃ暮れてるわぁ。遅くなちゃったね。明彦、この後予定ある?」と雅子さんが言う。今日はいつにもまして京都弁の出現頻度が多い。特別サービスなんだろうか?


「なあ、これから、明彦、居酒屋に飲みに行こ」
「いいですよ、雅子さん」
「そのさんづけ、止めて。雅子でええわ。じゃあ、決まりね。神楽坂、上がったとこにええ居酒屋があるのよ。うちのマンションの近くなんだけど」
「わかりました。行きましょう」え?彼女のマンションの近く?それって、どういうことかな?「じゃあ、雅子って呼びますよ。実は、雅子、その雅子の京都弁、ゾクゾクしちゃうんですよ」


「感づいとったわ。うちが方言で喋るとうちの顔を見てモジモジするんやもの。キミは標準語しか話さへんものね。物珍しいのかしらね?それで、どうゾクゾクしとったん?性的にゾクゾクしたん?」と大胆なことを彼女は言う。
「そ、そうです、実は・・・」
「エッチな男の子ねぇ?」
「だって、雅子、可愛い顔してるし、ボイッシュだし」
「あら、おおきに。キミのタイプなん?うち?」
「ハッキリいってそうです」
「私、年上よ?」
「学年が一つ違うだけでしょう?それに同じ年生まれで、数ヶ月しか生まれた月は違わないでしょう?じゃあ、雅子はどうなんです?ぼくのことどう思っているんです?」
「直球で聞くわね。うちもキミのこと、タイプよ」
「うれしいです。じゃあ、ぼくたち、付き合っちゃいませんか?」
「もっとすごい直球でくるわね。ええよ、初めてあってから、明彦が好きやってん。って、私、すごいこといってるね?」大きな目をクルクル回してちょっと赤くなっている。
「うれしいです。ぼくも最初に会ってから雅子が大好きでした」おっと、このぼくがなんと大胆な発言を。
「今度は、私がゾクゾクするわ。ああ、もっと言って」
「ぼくは雅子が大好きです」


ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)、雅子 総集編1に続く。

登場人物

宮部明彦    :理系大学物理学科の2年生、美術部。横浜出身
小森雅子    :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身


加藤恵美    :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
杉田真理子   :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学専攻


森絵美     :文系大学心理学科の2年生、明彦の恋人
島津洋子    :新潟出身の弁護士、明彦の愛人


清美      :明彦と同じ理系大学化学科の1年生、美術部

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅰ)」