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エレーナ少佐のサドガシマ作戦(20) 北、韓国侵攻開始 Ⅱ

エレーナ少佐のサドガシマ作戦(20)
北、韓国侵攻開始 Ⅱ

エレーナ少佐のサドガシマ作戦(20)
北、韓国侵攻開始 Ⅱ ピックアップ

●エレーナの状況説明、レーダー管制室


 非常用照明のみの暗い室内でモニターとスイッチ類の光が明滅しているだけで、室内は静寂に包まれた。北朝鮮の攻撃が途絶えたようだ。これで終わったんだろうか?


「卜井ちゃん、ちょっと静まったね?」とNHKの藤田アナが日テレの卜井アナに聞いた。「でも、鈴木三佐とエレーナ少佐が第二撃の話をしていたわね」「とすると、また始まるんだろうか?」「これじゃあ終わらないような気がする」「鈴木三佐とエレーナ少佐に話を聞くか?今なら話ができそうだ」「そうしましょう。ライブ中継の映像だけで、視聴者もなにがなんだかわからないと思う」「現場にいる我々もわかってない」「そうだよね。音声を聞き直さないとなにがなんだか」「聞き直してもわかんないよ」


「ぼくは取材してくるよ」と藤田はエレーナたちの方に歩いていく。


「三佐、少佐、緊急時に申し訳ない。ちょっと現状を取材させて頂いてもよろしいですか?」「いいですよ、今なら」「あまりの展開に、何が起こっているのか、理解できないんですよ。後でネタに使いますので、これ、録画のみでライブしません。時間軸に沿って、何が起こっているのか、解説していただけますか」「わかりました。私の理解の範囲内で。この地図がいいかな?」とモニターに朝鮮半島の地図を出した。

「最初の一撃が、在韓米軍の本拠地ハンフリーズ基地、烏山空軍基地、水原空軍基地とその周辺の韓国軍基地です。ソウルに近い。38度線に近い。だから、射程が短い通常弾頭のロケット砲755発を撃ち込みました。これで、在韓米軍、韓国軍の指揮系統、航空戦力を叩いた。地図を見て下さい。ソウル近郊でしょう?」


【ソウル近郊の基地】

 ハンフリーズ基地(Camp Humphreys、京畿道平沢市 )

 烏山空軍基地(京畿道平沢市) Osan Air Base

 水原空軍基地(Suwon Air Base、京畿道水原市 )

【韓国南部の基地】

 鎮海海軍基地(Jinhae Naval Base、慶尚南道昌原市鎮海区 )

 大邱基地(Daegu Garrison、大邱広域市南区)

 浦項空港

 星州THAAD基地


「次に、首都ソウルはミサイルを使わず、北朝鮮工作員多数の破壊活動を開始した。一説によると、脱北者を装った工作員などの工作員が、何千人、何万人もいると言われます。それで、韓国大統領官邸、省庁を攻撃した。こうなると、平壌からも近く、ソウル市民は人質になったようなものです。ソウル近辺の米軍、韓国軍基地をまず叩いてますからね」と鈴木三佐がマップを指して説明する。


「工作員も韓国市民と見分けが付きません。彼らが韓国軍の軍服や警察の制服を着用したらどうなります?それで、流言飛語を流す。これから、ソウルの他の都市への交通インフラを破壊するかもしれない。市民978万人は逃げられません。大統領や閣僚も釜山に逃げ出して、指揮命令系統は崩壊している」


「でも韓国南部の韓国軍、在韓米軍がいますよ?第7艦隊だって急派されている。北朝鮮の軍事力を叩けば自然と立ち枯れになると思いますが?」と藤田アナが三佐に聞いた。


「韓国南部の韓国軍、在韓米軍は、ロケット砲の数や射程もあって、第一撃でS-400が撃墜しましたが、スカッドで霊光(ハンビッ)原子力発電所を攻撃しようとしました。これは霊光(ハンビッ)が破壊されれば、放射能汚染で、真東にある韓国南部の韓国軍、在韓米軍が戦力を失うことを意図したものです。虎の子のミサイルを使わなくても、原発が原爆代わりになります。ロシア軍のS-400で助かりましたが」と鈴木。


 エレーナが「私にも説明させて」と言った。「米国は在韓米軍の陸上戦力を削減し続けて、かつて4万人だったのが今3万人弱。それもソウルから南に基地を移しました。海上と航空戦力で韓国防衛を考えたからです。しかし、北朝鮮は孤立無援じゃない。中国の人民解放軍北部戦区がいます。みなさんもおわかりの通り、ロシアと同様、中国も一枚岩じゃない。北部戦区は北京の言うことを聞きません。西部戦区に核開発能力を取り上げられて、頭にきてます。だから、北朝鮮を支援して、核を手に入れようとしている。さらに、北の地下資源があって、北部戦区の朝鮮族高官はその権利を持っています。彼らは中国を乗っ取るつもりか、朝鮮半島を吸収して、東中国として分離独立するつもりか」


 これから、北部戦区の陸軍勢力は、北と中国の国境を越えて、38度線を目指して北と一緒に南進する可能性が高い。北部戦区の後押しもあって、米国も海上と航空戦力で北を押さえつけるのは難しい状況です。


「彼らは、38度線から36度線に国境を変更するつもりかもしれない。38度線から36度線の間にあるのは、サムソン、LGなどの半導体工場他工業施設。これが手に入れば、北京もあまり苦情を言わないでしょう。だから、霊光(ハンビッ)原子力発電所以東は、放射能汚染地帯にして、捨てた、とこういうことでしょう」エレーナが藤田に向かって厳しい表情で説明した。


「恐ろしい話だ」と藤田アナ。


「それだけじゃありません。在韓米軍の動きもおかしい。陸上戦力の損耗をおそれて、海上と航空戦力で反攻しようとしてますが、動きが遅い。台湾防衛もありますからね。日本防衛はもちろんのこと。私の私見ですが、アメリカは、台湾の工業生産能力を評価、替えがたいと判断、朝鮮半島を捨てた、とこう思えてしまいます」

シリーズ「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」

登場人物

●東ロシア共和国
 エレーナ   :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍少佐
 アデルマン  :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍大尉
 アナスタシア :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍少尉
 アニータ   :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍准尉
 スヴェトラーナ:東ロシア共和国、東部軍管区陸軍准尉
 土屋と本間  :佐渡ヶ島島民、アニータとスヴェトラーナの夫
 ソーニャ   :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍准尉、
         コリアン族(朝鮮族)のロシア人、
         広瀬二尉の婚約者
 カテリーナ  :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍伍長
●自衛隊佐渡ヶ島空自分屯基地
 鈴木三佐   :航空自衛隊二等空佐、エレーナ少佐の婚約者
 小野一尉   :航空自衛隊一等空尉、アデルマン大尉の婚約者
 南禅久美子  :航空自衛隊二等空佐、防衛省防衛装備庁航空装備研究所
         所属、尾崎・遠藤の同僚
 羽生健太   :航空自衛隊二等空佐、防衛省防衛装備庁航空装備研究所
         所属、尾崎・遠藤の同僚
●自衛隊南西諸島守備統合部隊
 紺野美千留  :航空自衛隊三等空佐、自衛隊情報保全隊調査第2部、
         内閣情報調査室出向、統合部隊指揮官
 富田     :公安警察、沖縄県の親中国反日本活動の調査担当、
         紺野とチームを組む
 卜井、藤田、佐々木:佐渡ヶ島作戦からのマスコミクルー
●自衛隊、先島諸島防衛水陸機動団
 広瀬二尉   :東ロシア輸送船団に同乗する陸自水陸機動団の指揮官、
         ソーニャ准尉の婚約者
 畠山三佐   :鈴木の同期、水陸機動団指揮官、広瀬二尉の上司


 尾崎紀世彦:防衛省防衛装備庁航空装備研究所上級技師、ミノルの上司
 比嘉美香 :尾崎の恋人。石垣島出身の建築設計事務所勤務
 遠藤実  :尾崎の部下。防衛省防衛装備庁航空装備研究所技師
 遠藤早紀江:遠藤実の婚約者、高校3年生
 時任純子 :氷川神社の娘、長女
 時任直子 :氷川神社の娘、次女
 吉川公美子:小料理屋分銅屋の女将さん
 後藤順子 :高校3年生で傷害事件で中退、分銅屋のアルバイト
 節子   :高校2年生、分銅屋のアルバイト
 田中美久 :北千住の不動産屋の娘、元ヤン。大学1年生
●中華人民共和国、人民解放軍
 楊欣怡少校:ヤン・シンイー、人民解放軍海軍所属、在日中国大使館武官
 金容洙少尉:キム・ヨンス、人民解放軍海軍所属、日露のスパイ
●中華民国
 蔡英文    :中華民国総統
 陳寶餘陸軍大将:中華民国国防部参謀本部参謀総長

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