A piece of rum raisin - 単品集、薫と明彦
A piece of rum raisin - 単品集
薫と明彦
★薫と明彦、エピソード Ⅰ
久しぶりの土日の連休がとれた。
会社のある神田を出て、さて、どうしようか?と思った。同僚は飲もうぜ、と言ってくれたが、どうにも東京で飲む気はしない。ぼくの帰る場所は横浜だ、東京ではない。
6時45分に神田駅の京浜東北線に乗った。7時18分には降りるはずの鶴見駅に停車した。でも、降りる気はしない。電車は、そのまま新子安、東神奈川、横浜と走っていった。それでも降りる気はしない。桜木町、関内。降りなかった。石川町、石川町。
いいじゃないか。時間は7時半。そろそろとバーが活気が出る時間だ。
鶴見で降りようと思っていたから先頭車両に乗ってしまった。それでは元町口だ。プラットホームを京浜東北線10輌分鶴見方向に戻って、中華街口へ歩いた。
石川町の駅を出て、さて、どこに行こうかと思った。
ホリデイインか?コペンハーゲンか?
今日は、どちらも行く気がしない。どうせ知り合いが誰かいる。
ケーブルカーだ。ぼくはすたすたと中華街に入って、警察署のある右に折れた。
金曜日の夜にも関わらず、店はすいていた。もちろん、まだ8時半。みな食事の後に来るのだから、後1時間は暇なんだろう。景気も悪いことだし。
カウンターに座る。
ぼくから4席右手において、ぼくと同年配らしい女性が一人で飲んでいる。大きめのタンブラーにカクテルか何か、with iceで飲んでいる。ま、ぼくには関係のない話。
★薫と明彦、エピソード Ⅱ
食事が来て、彼女は手早く食べてしまった。
「ゴメン、本当にお腹が空いていたんだってことが今わかった。話もしないで、ガツガツとはしたない。でも、お腹が空いているの。おいしいわ」と言う。
「おいしく食べられるのなら、ぼくはうれしいよ」
食後のコーヒーとデザートをヘルマンに訊かれた。彼女にどうする?と訊くと、バーに行って、マンハッタンを飲みたいという。ぼくはヘルマンに「伝票はバーに回しておいて。まとめて払うから」とお願いした。
バーでカオルは楽しく喋って、秀さんと美枝子さんを笑わせた。吉岡さんの手品を見て楽しんでいた。ぼくはこの隙に「ちょっと・・・」と言って席を外し、1階のフロントに降りて、チェックインをした。キーをもらった。バーに帰ると、カオルが泣いていて、美枝子さんが慰めていた。
「どうしたの?カオル?」とぼくが訊くと、「ちょっと酔っちゃった。それで、ちょっと悲しくなっちゃったの」という。美枝子さんが「たまに泣きたいこともあるわよね?」と言って、ぼくの方を向いてニコリとして、「明彦が虐めたの?」とぼくに言った。ぼくは、「美枝子さん、ちょっと複雑なんですよ、カオルは。ぼくのせいじゃなくて、泣いているんですよ」と答えた。ぼくは吉岡さんに伝票をお願いして、カードで払った。
「さ、カオル、出ようか?」と、ぼくは言って、彼女を横抱きにして立ち上がらせた。彼女のハンドバックを持った。「秀さん、美枝子さん、今日はここで失礼。また、後日ゆっくり酒を飲みましょう」とことわって、バーを出た。
まだ、クスンクスンしているカオルを抱きかかえてエレベーターに乗り込んだ。部屋の階のボタンと1階のボタンを両方押す。
★薫と明彦、エピソード Ⅲ
あれ?私、どうしたんだろう?
気がつくと、いつの間にか明彦が私の上からどいていた。毛布がはがされている。彼はバスタオルを持って、私の首筋の汗を拭いている。胸の谷間、胸、お腹、彼はそっと脚を持ち上げて、私の両膝を起こした。脚を開かせられた。太腿、内股、ふくらはぎの汗も拭いていた。わたしのあそこも拭いている。腰を持ち上げさせられて、お尻の方から前の方までドロドロになった私をぬぐってくれた。私の裸がサイドテーブルの照明で彼には見えているはず。だけど、不思議と恥ずかしくなくなっていた。私のアソコまで丸見えだというのに。私は無防備に横たわっていて、彼のなすがままになっている。
一通り私の体をぬぐうと、彼はバスタオルを私にかぶせ、その上から毛布をかけてくれた。明彦は腰にバスタオルを巻いた格好で、私の下着を拾って、椅子にかけたワンピースの上にたたんでおいていた。自分の服もたたんで、ソファーの上においていた。
ワインクーラーのワインを取り上げ、こんどはグラス二つにワインをついで、ベッドに腰を下ろした。「ほら、ワイン、飲む?」と彼は言った。私は「うん」と言ってグラスを受け取った。気付かなかったが喉が渇いている。私はゴクゴクとワインを飲んでしまった。「もう一杯だな」と、明彦は私のグラスを取り上げて、ワインをつぐ。ワインを今度はチビチビと飲んだ。おいしかった。
「明彦、ありがとう」と、私は言った。あれ?何がありがとうなんだろう?よくわからないけれど、ありがとうなんだ、と私は思った。「何を言っているの?ぼくらはメイクラブしたんだよ?共同作業じゃないか?」と明彦は言う。そうだね、共同作業だね、たしかに。
いつもは、酔っぱらって、相手の男性に体を預けて、何かされているな?と思ううちにセックスが終わる。終われば私はどうでもいいや?と思って寝てしまう。相手も体をのけて、私の横に死んだ怪獣のように横たわり、寝るだけ。朝起きると、相手はシャワーを浴びていたりして、もうネクタイを結んでいることだってある。私は起こされもしない。「ぼくは先にホテルを出るから、カオルは後ででてね」なんて言われる。同じ会社だから、彼は遅刻ギリギリでセーフ。私はというと、シャワーを浴びていて、身繕いをした時間だけ遅刻。
それで、相手は、翌日から、カオルは俺の彼女!なんて言っている。やれやれだ。たった1回寝てセックスしたくらいで、俺の彼女だってさ。でも、寝たことに変わりはない。寝れればいいや、帰るの面倒くさいと思ったのは私なんだから。その男の言われるままに、恥ずかしげもなく、脚をひろげ、彼のものを入れられて、そりゃあ、多少は感じたけれども、酔っぱらっているから、相手が鼻孔を開いて、荒い鼻息でキスされて、されるがままだったな。今みたいな感じ方では絶対になかったな。
★薫と明彦、エピソード Ⅳ
「さあ、食べようよ、飲もうよ」と明彦が言う。
なんだろう?フィッシュアンドチップス?「明彦、フィッシュアンドチップスって、これ?なに?」
「イギリスの料理だよ。要するに、白身魚のフリッターとフライドポテト」
「フリッター?」
「そう、フリッター。卵白を泡立てて、ミルクを加えて、それを衣にしてフライするんだ。西洋天ぷらだよ。知らない?」
「知らなかった」
「じゃあ、今知ったね?覚えておくといいよ。ぼくの家に来たら、どう作るか教えてあげるよ」
「私が明彦の家に?」
「そうだよ、遊びに来たら教えてあげるよ」
「だって、私は明彦の彼女じゃないって言ったわよ?」
「いまや、友達だろ?ぼくらは?だったら、彼女じゃなくても来てもいいじゃないか?」
「彼女じゃない女の子が家に遊びに行ってもいいの?」
「他の家は知らないけど、少なくともぼくの家は関係ないよ。それから、丘の向こうの同級生の家の一部も関係ないよ。ぼくの彼女の家も同じくだな。なんだったら、ぼくの彼女の家に遊びに行くかい?カオルの家やカオルの兄貴の矢部の家は知らないけれどね」
「それって・・・ふ~ん・・・」
「カオルは変なところで感心するんだね?」
彼女でもないのに、男性の家に行ってもいいのだろうか?私のママは、パパの家になど行けない。私だって行けない。私は妾の連れ子。自重しなさいとママに躾けられた。今までつき合ってきた男性で家においでよ、などと言ってくれた人はいない。私も男性を自分の家に呼んだことはない。ママが怒るに決まっている。でも、この明彦は、昨日会っただけで、家においでよ、料理を教えてあげるよと言う。同級生の父親の妾の連れ子の私を。
A piece of rum raisin - 単品集

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