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フランク・ロイドの徒然

奴隷商人 Ⅸ、第49章 ●奴隷商人47、紀元前46年

奴隷商人 Ⅸ
第49章 ●奴隷商人47、紀元前46年
●砂漠行 1


【砂漠行6日目】 140キロ
 昨晩は、ムラー様と絵美/エミー様に可愛がっていただいて大変満足。絵美様が、私が16才の時、そんなに性欲があったかしら?と言う。エミー様が、12才頃から始めないとガキを十分産めねえじゃねえか、絵美の生きていた時代は安心安全で贅沢だったんだ、この時代は、早熟じゃないと生き残れないんだよ、と言う。なるほど。あの堅物の侍女頭のアルシノエも性欲あるんだろうな?


 30キロ、オアシス方向に進む。最初の予定では、オアシスまで150キロ、オアシスからネクロポリスの大スフィンクスまで180キロ、1日目標20キロ、人家を避けて進む予定だ。2週間ちょいで着くはずだったが、ベルベル人と半神半獣の攻撃もあったので、進行速度を速めた。攻撃されたから迂回路をとったので、ムスカがオアシスまで残り60キロぐらいじゃないか?と言う。とすると、明後日にはオアシスに到着するんだろう。


 今日はアイリスと飛行訓練。だんだん、意識しなくても空気抵抗を減らすベストの空力形状に空気層を変形できるようになってきた。一緒に移動する空気層の容積を減らして、イルカのような紡錘形にすればいいのがわかった。ただ、あまりに空気層の容積を減らすと呼吸が難しい。空気層の容積を加減して空気の入れ替えをするタイミングを練習しないと。


 アイリスと上方直上をとる練習をする。まず、私がアイリスの上方直上の位置について、急降下して、すれ違いざま、相手を真っ二つに切り裂くイメージ。武器は40センチの刃長のグラディウスを使った。


「アイリスお姉さま、間違って本当に切ってしまったらどうしましょう?」
「頭、心臓以外だったら、またはえてくるから大丈夫よ」
「私、手脚がはえたことありません!」
「私だって、旅の最初の日にホルスに腹を裂かれた時の経験だけよ」
※第43章 ●奴隷商人41、紀元前46年、遭遇
「どうやるんですか?体の再生って?」
「意識があったほうが良いわね。意識がある方が再生速度が速いとムラー様が言っている」
「じゃあ、無意識でも再生はできるってことですね?」
「でも、意識がなくなったら、相手の次の攻撃でやられちゃうでしょ?」
「ああ、なるほど。それで?」
「治れって念じるの。治れ、治れ、治れ、でも、チチンプイプイでもなんでもいいから、負傷部位を意識して念じるのよ」
「痛そうですよね?」
「死にそうになるくらい痛い!だから、痛覚を遮断するの」
「練習しないとそれ難しそう」
「練習できるかな?手か脚を切断して試してみたほうが早いかもしれない」
「・・・それはまたの機会にいたしましょう・・・」


【砂漠行7日目】 200キロ

 30キロ、オアシス方向に進んだ。上空からオアシスが見えてきた。到着は日没寸前。キャラバンに戻って、オアシスの位置を報告した。


 ムスカが旦那様に「オアシスの脇にベルベル人の村があるはずです。水利権を守るために武装してます。仁義を通して使わせてもらいましょう」と言う。旦那様とムスカが村の方に行く。女は後ろに下がってろ、女のいるキャラバンは襲撃されるからな、と言われた。襲撃されても皆殺ししちゃうんだけど、目立たないようにことなかれで行動しないといけない。


「銀貨で払ってやったよ。それと酒をプレゼントした。それから、オアシスに直接入るのは水質保全の問題でダメだ、って言うから、じゃあ、浴場を脇に作ってやって、水を引き込んで浸透槽を作ってやると言っておいた。他の人間も使えるようにしておく。浴場付きオアシスなら入浴料も取れるぜ、と言っておいた」と言う。

 確かに、ここは低地で、地下水が湧き出た泉というところ。42人が水浴びして、ラクダが水を飲んだらオアシスが汚れてしまう。


 絵美様が村人から見えない砂丘の陰で、くぼみを作って、直径10メートルくらいの浴槽を作った。浴槽面は硅砂の溶けたガラス質になっている。ラクダの水飲み場も作った。オアシスに向けて細いトンネルと導水路としてうがって水を引く。上下の引き上げ板でバルブ代わりにした。排水路の終点で、十数メートル井戸を掘って、浸透桝にする。お風呂に入れる!!!


 オアシスは、水面と周囲にはえているヤシの木などの植物からの水の蒸発で周辺の気温は低くなる。さらに夜になると急激に温度が下がるので水の温度はさらに下がる。日没あたりがちょうどいい。ぬる湯だ。


 砂漠の民は、オアシスに住んでいる人間でも入浴の習慣はない。体を拭う程度。絵美様の言う20世紀の映画で、オアシスを見つけて、ドボンと飛び込んだら、水質汚染になるわよね。でも、排水設備付きの浴場なら、水浴びしても大丈夫になる。


 みんなで水浴びした。ラクダにも水を飲ませる。こいつら、どれだけ飲むのかしら?150リットルくらい飲むんじゃないかしら?ムラー様が言うには、ラクダがコブに水を貯めるなんて間違いだ、と言う。飲んだ水は血液中に吸収され、大量の水分を含んだ血液がラクダの体を循環する。ラクダ以外の哺乳類では、血液中に水分が多すぎるとその水が赤血球中に浸透し、その圧力で赤血球が破裂してしまうが、ラクダは水分を吸収して2倍にも膨れ上がっても破裂しないのだそうだ。なるほど。

第49章 ●奴隷商人47、紀元前46年 に続く。

シリーズ『奴隷商人』 

奴隷商人 Ⅰ



奴隷商人 Ⅱ



奴隷商人 Ⅲ



奴隷商人 Ⅳ



奴隷商人 Ⅴ



奴隷商人 Ⅵ



奴隷商人 Ⅶ



奴隷商人 Ⅷ