フランク・ロイドのブログ

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フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)第八話 絵美 Ⅱ 👈NEW

フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)
第七話 絵美 Ⅰ の続き

第八話 絵美 Ⅱ

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)」目次

第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)
●クリスマスイブのホテル・バー
●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
●森絵美の家
●御茶ノ水、明治大学
●明大の講堂
●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
●妹に相談
●横浜のバー
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」目次

第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)


ヰタ・セクスアリス(Ⅱ)と第1ユニバースの時間軸

フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)
第八話 絵美 Ⅱ 👈NEW

●妹に相談、1979年2月21日(水)

 これでは、メグミに浮気者!と非難されて、殺されてもしょうがない。しかし、ぼくは恋をしたのだ、たぶん。それも、なんと、いうにこと欠いて、『親密な関係』とか『優先順位のトップ』なんて口走っている。いちおう、「ぼくの女性の友人をすべて抹殺、なんて、宇宙家族ロビンソンのロボットじゃあるまいし、それは勘弁して欲しいし、キミの男性の友人を抹殺してくれ、なんてことを金輪際いいたくない」と口走ったのは我ながら偉いと思うが、土曜日に会って、すぐ日曜日にデートして、また今週も会う約束をしてしまった。


 もちろん、メグミが家族旅行から帰ってくるので、今週の土曜、日曜は避けた。去年、あれだけグチャグチャになって、やっと解決したと思ったのに、また、厄介ごとの種を自分で蒔いている。


 だけど、どうすればよかったというのか?たまさか、紛れ込んだ明治大学の講堂で、きれいな女の子がピアノを演奏していて、それを盗み聞きした。それで、その女の子と話すきっかけになって、すごく気があって、翌日も近代美術館と、国立博物館と科学博物館に行ってしまって、ますます好きになった。絵美だって、同じ気分でいる。もちろん、キスもセックスもしていないが、手を握って歩いたのは事実だ。


 これをメグミにどう説明したものだろうか?ああ、頭が痛い。。。


 ドアがどんどん叩かれた。ぼくは自分の部屋にいるのだ。「兄貴?いるの?」と妹が言う。「いるよ」と答える。


「ねえねえ、暇?」
「考えごとしてるところ」
「また、くだらないことを考えているな?」
「うるさいな。なんですか?何か用事ですか?」
「暇なのよ。何もすることがないんだもん」


「彼氏とどっかに行けばいいだろ?ドライブでも何でも」
「ああ、あれ?あれね、振っちゃったから、いま私誰もいないのよ。空き部屋なの」
「もう振っちゃったのか?まだ、二ヶ月も経ってないぞ?」
「しょうがないじゃない、つまんないヤツだったんだから」
「キミは年間何人とつき合って、何人振れば気が済むんだ?学習効果というものがないのか?」
「兄貴みたいに、どんどん増えていって、まったく整理しないで、収拾がつかなくなって、頭が痛くなるよりもいいと思うよ」
「それがだね、また増えたんだよ」


「やっぱり!この前の日曜日にめかし込んで出て行ったし、メグミちゃんは旅行中のはずだし、誰とかな?と思ってたんだけど、やっぱり!」
「だから、そのことで考えごとをしていたんだよ」
「あれ?いつになくまじめに悩むんだね?どうしたの?」
「ちょっとね。メグミにどう言い訳しようかなと思ってさ」
「あら?言い訳だなんて、おかしいね?つまみ食いじゃないってこと?本気なの?」
「う~ん、そう言ってもいいと思う」


「兄貴、それ問題だよ。真理子ちゃんとあれだけグチャグチャになって、やっとメグミちゃんと落ち着いたと思ったら、もう次なの?まだ、二ヶ月も経ってないじゃん?グチャグチャから」
「そうなんだけどなあ・・・」
「兄貴の方こそ学習能力ないじゃん?それで、お次は誰?」
「それがさ、先週の土曜日の話でね・・・」と、ぼくは一部始終を説明した。


「偶然といえば偶然だし、たまさかそうなっちゃって、意気投合して、気があったということなのね。悪気があってしたことじゃないし、メグミちゃんを裏切るつもりでいたわけでもないんだろうけど。困ったわね?」
「な、困っただろ?」
「それで、また会うの?」
「明日」
「まったくもお、兄貴が会おうって言ったわけ?」
「絵美が会いたいっていったんです。もちろん、ぼくも会いたいと言いました」
「彼女だってボーイフレンドいるんでしょ?」
「いるよ」
「兄貴もガールフレンドいるって言ったの?」
「ちゃんと言いました。その部分は、お互いいてもいいや、という協定になっている」


「でも、兄貴の言う優先順位はどうなっちゃったの?」
「だから、頭が痛いんじゃないか?」
「やれやれ、バッカじゃないの?え~っとね、そういうバカな問題は、私とお酒でも飲んで、話して発散すればいいんだよ」
「キミね、いくら彼氏を振っちゃって、暇だからって、兄貴にたかろうというのか?ぼくが頭が痛いにもかかわらず?」
「そうそう、私にとっては他人事だもの。さ、お酒でも飲みに行こうよ。コペンハーゲン連れてってよ」
「まったく・・・気分転換に行こうか?三十分で出るぞ」
「私、もう着替えているんだけど。すぐ出れるよ」
「あ!最初からそう画策していたのか?キミは?」
「そうよ。早く着替えて。行きましょ!」

●横浜のバー、1979年2月21日(水)

 ぼくと妹は京浜急行で横浜駅まで行き、京浜東北線に乗り換えて石川町まで行った。中華街西門から入った。


 中華街西門通りをしばらく歩いて左側の老舗のバーのウィンドジャマー、そこを通り過ぎて、左に曲がって北門通りの加賀町警察署の前にバー・コペンハーゲンがあった。ちょっと行くと同じく、カウンターバーのケーブルカーがある。


 横浜の古いバーは、北欧やギリシャなどの地中海人経営の店が多かった。横浜港に出入りしていた北欧や地中海人が、横浜の女性とねんごろになって上陸して酒場のオーナーになったとか言われている。


 戦後、進駐軍などの外国人客が増えたため、戦時中に閉店していたそれらのバーが再度開店した。1950年代当時のほとんどのバーは、バーといっても現在のバーテンがシェイカーを握るカウンターバーとは違って、来店客の傍らでホステスの女性がサービスするグランドキャバレーやサパークラブのようなものだった。


 ホステスが付かない現在のようなバーは『コペンハーゲン』ぐらいしかなかった。格調高くて立派なバーだった。コペンという名前の通り、北欧系で、老舗の北欧料理レストラン、スカンディヤのおばさんの経営だった。


 そして、ドアを入るとL字型のカウンターの一番壁際に、船員くずれなんだからわからないが、北欧人のミスター・ヘニングというおっさんが接客をしていた。ビールを飲みながら。


 水曜日の七時だったので、会社帰りの人たちで七分の入り。ミスターヘニングがいつものコーナーでビールを飲んでいた。


「ハイ!アキヒコ!シスターと一緒だね。こっちこっち」と、ヘニングがカウンターの中央の席に案内してくれる。ハイチェアを妹のために引いてくれて、ついでにお尻を触っていく。「ヘニングのエッチ!」と妹がニコニコして言った。


「何飲むの?」とぼくが訊くと、「う~ん、今日はね、タンカレーベースでジンライムかな?」と言う。
「おうおう、いっちょまえに」
「だって、兄貴が教えてくれたんじゃんか?」


 ぼくは「そうだったね。須賀さん、須賀さん!」とバーテンのおばさんの須賀さんを呼んだ。
「ハイ、いらっしゃい。明彦、何するの?」
「え~とですね、我が妹にタンカレーでジンライム。ダブルで並々と。ぼくは、メーカーズマークをダブル、オンザロックで」


「オッケー」と須賀さんはタバコを横ぐわえにして言った。ここのバーテンダーは全員女性、それもおばさんなのだ。奥に陣取っているおばさんがここの元締め。スカンディアというデンマーク料理の老舗のオーナーでもある。


 初めてここに来た客はちょっと戸惑う。入ると、左手は4人がけの数席のテーブル。右手は、2m ✕ 12mのピカピカに磨き上げられた樫のカウンター。バックバーにはズラリと並ぶ酒瓶の数々。ウォールライトの暗い照明。こういう道具立てだと、カウンターの中には蝶ネクタイと黒のベストを着込んだバーテンダーを予想するのに、そこにいるのは3人くらいのおばさんたち。注文取りをするのは、二の腕に入れ墨をいれたレスラーみたいな白人男性。そりゃあ、戸惑うのが当たり前だ。妹も何回か連れてきていたが最初は驚いていた。


 ぼくは、ホリデー・インという聘珍樓が経営していたホテル、12階にあったミリ―ラフォーレというバーに高校の頃から通っていて、そこの常連の習さんという会社経営者(日本でコンテナ型のカラオケを最初に作った会社)に紹介されてコペンを知ったのだ。


「でも、明彦、本当に妹さんなの?似てないじゃない?」と須賀さんに訊かれた。最初に連れてきた時、妹ですと強調したのを須賀さんは覚えていたんだろう。
「本当に妹ですとも」とぼく。
「須賀さん、本当に妹よ。そうじゃなければ、こんなのとデートするわけないでしょ?」と妹。


「なるほどね」と須賀さんが頭をふりふりして、酒棚からタンカレーとメーカーズマークの瓶を取り出した。ジンをメジャーも使わず注ぐ。ちょっと見て、おまけだ!というように少し足す。明治屋のライムジュース(残念ながらRoseのライムジュースではない)をついで、レモンをグラスの縁に立てた。メーカーズマークも目分量でグラスに注いで、ちょっと足す。「ハイ、おまちどおさま」


「ありがとう、須賀さん」
「ごゆっくりね」と須賀さんはカウンターの向こうにスタスタ行ってしまった。


「ハイ、乾杯」「乾杯」とぼくらはグラスを合わせる。


「さてっと、兄貴の話だね、今日は」
「キミね、改まってリマインドするなよ。また、頭が痛くなるでしょうに?せっかくのお酒がさ・・・」
「だから、この私があんたの問題を一緒に考えてやろうと言っているじゃない?」
「うそつけ!お酒飲みたいから来たんだし、ついでに人ごとの問題が面白いから言っているだけじゃないか?」


「兄貴が女性問題で困るの見ていると面白いからね」
「これだよ。まったく」
「真理子ちゃんの前は誰だっけ?あ~、そうそう仁花だ、仁花」
「呼び捨てにするなよ。キミ、仁花、嫌いだからな」


「本能的にあの女、私、嫌いなのよ」
「そう言うなって。ぼくの一番古いガールフレンドなんだから」
「でも、彼女、さっさとレスラーくずれと一緒になっちゃったじゃない?兄貴、利用されただけだよ」
「いやいや、彼女は可哀想な女の子なんだよ」
「そういうように、兄貴は、誰も捨てないから、ゴミのように女の子がたまってくるのよ」
「ゴミって失礼だな?」
「だって、決められなくて、右往左往していて、せっかくメグミちゃんとうまくいくかな?と思ったら、もうこれだ」
「どうしようかな?」
「あのさ?」
「何だよ?」


「私がメグミちゃんと会ってあげようか?」
「おいおい、よしてくれよ。兄の女性問題で妹が出てくるなんて、とっても情けない状況になるだろ?」
「そうじゃなくってさ、私、話に聞くメグミちゃんに会ってみたいんだな」
「なんで?」
「だって、兄貴の話を聞いていると、メグミちゃんって、すごい素敵な女(ひと)じゃない?」


「うー、メグミは可愛いんだけどなあ・・・まあ、キミとメグミはたぶん気が合うよ。そういう気がする」
「なぜ、メグミちゃんと私が気が合うような気がするの?」
「好きだなんだの前に、やっちゃえ!という部分で、共通点があると思います。お母さんが聞いたら卒倒するだろうなあ・・・」
「しょうがないじゃん!その方が手っ取り早いと思うんだ、わたしは」


「あのね、キミね、キミの場合は、メグミと違って、漁りすぎだ」
「だってさ、夢の男がいつ現れるかってのが、私の主題なんだもん、しょうがないじゃん?」
「まあ、いいや。だけど、父兄参観というのは聞いたことがあるけど、兄貴の女性問題で妹が出てくるなんて話は聞いたことがないや」
「そういうのも面白いと思わない?」
「まったく、思いません!」
「あ~あ、せっかく、この私がが解決してあげようと思っているのに・・・」
「もっと、問題が錯綜する可能性が高い!」


「あのね?」
「何?」
「もう一杯?」
「キミ、もう飲んじゃったの?まだ18才でしょうに?」
「おいしいんだもん」
「しょうがないなあ・・・」ぼくは須賀さんを呼んで、もう一杯頼んだ。ついでにぼくも。それで、ソーセージとかニシンとか適当に頼んだ。酔っぱらってしまうよ。妹は酒にめっぽう強いんだ。そして、飲み過ぎるとキレることがある。


「でもさ、真理子ちゃんの最後の話、私聞いてないけど?」
「あ~、もうグチャグチャだったよ。メグミとさんざん作戦を考えて、軟着陸しようと思ったんだけどね。そりゃあ、そうだ。真理子がぼくに電話して都合が悪いと答える、それでメグミに電話してあいつも都合が悪いと答える。そんなことが何度もあったら、それは偶然か?どうか?だいたい感じてくるものだよ」
「それで、軟着陸どころか、グチャグチャ?」
「そおです、グチャグチャ・・・」


「メグミちゃんは?」
「メグミは、あっけらかんとしているけど、それはポーズなんだろうな。メグミが一番ダメージがひどいとぼくは思うんだ」
「兄貴、そのダメージがこの2ヶ月で癒されたかどうか知らないけど、ここで、絵美?その彼女?その話をしたらどうなるのよ?」
「だから、頭が痛いと言っているんじゃないか?」
「進学校に行って、頭がいいと思っていた兄貴でも、その部分ではアホウだね?」
「ハイ、アホウですとも」
「で、去年の年末に何があったのよ?」
「それはね、12月のことでね・・・」とぼくは神楽坂でメグミとホテルを出た後、真理子に待ち伏せされた話をした。(第五話 真理子


「え?ということは、真理子さん、3時間も待ち伏せしてたの?」
「ホテルから神楽坂に出るその路地の正面に喫茶店があるんだ。真理子は、そこにぼくらが入ってから出るまで、待っていたんだよ」
「すごい!」
「偶然ね、飯田橋の駅前で、ぼくとメグミが待ち合わせしているのを目撃したんだそうだ。それでさ、どこに行くんだ?手なんかつないで?と後ろからついていったら、ホテルに入ったってこと。それで、待って待って待ち続けて、現場をね、つかんだ、と言う話さ」


「真っ青ね?」
「それがね、メグミが、ぼくの前に出て、『マリ、悪いのは私』なんていうから、ぼくは『違う、悪いのはぼくだ』なんて言って、それで、真理子が、『美しいわね、ふたりで私をバカにしてたのね?』と言われてさ」
「それで、兄貴、どうしたの?」


「ぼくは、メグミに『メグミ、悪いけど、一人で帰っておくれ。ちょっと、ぼくは真理子と二人だけで話さなければいけないことがあるから』と言ったんだ」
「ふ~ん、それで?」
「メグミは帰った。真理子は残った。それで、ぼくは、真理子とバーに行って、五月からの話を正直に話したのさ」
「真理子ちゃん、どうした?」
「泣いたよ」
「そりゃ、泣くでしょうね?彼氏と友達とダブルで裏切りだからね」
「彼女が言うのは、『それほどセックスしたいんだったら、言ってくれたらあげたのに』というんだな」


「ふ~ん?」
「それって、あげるとかもらうとかの話ではないから・・・でも、まさか、そういう話を真理子には出来ないし、そのニュアンスはあいつにはわからないからな」
「私にはわかるような気がするな。って、兄貴の気持ちが。私だったら、口が裂けてもあげるとかあげないとか、そういう賞品みたいなことはいわないわよ」
「ま、わかってくれてありがとう。でも、ぼくとしては何も言えないじゃないか?」
「そうだよねえ・・・」


「で、とにかく、こうなってしまったのは、メグミが悪いんじゃない、ぼくが悪い、ぼくの責任、申し訳ない、謝って済む問題じゃないが、謝る、とね」
「それで、真理子ちゃんは?」
「メグにできて、私とセックスできないわけないわよね?と真理子は言ったんだ」
「それで?」
「しょうがないじゃないか?」
「兄貴、まさか?」
「しょうがないじゃないか?」
「やったの?」
「やりました」


「呆れた男だね、兄貴は?!」
「やらなかったら、どうなっていたと思う?」
「それをメグミちゃんに言ったの?」
「言いません。真理子だって、言わなかったと思う。第一、真理子は今メグミとは今は口をきかないからね」
「いやあ、呆れたよ、私は。それで、真理子ちゃんはその後どうしたの?」
「何もなし。真理子がメグミの悪口を言うとか、そういうのもない。ただ、メグミとは口も聞きたくないってさ」
「真理子ちゃん、偉いじゃない?」
「そうなんだ。だから、ますます、申し訳なく思っている」


「おい!」
「なんだよ?」
「兄貴は、そこまでして、メグミちゃんと一緒になろうとして・・・」
「一緒というわけじゃないよ・・・」
「兄貴の考えはよくわからないけど、ま、いいや、それまで犠牲を払って、それでメグミちゃんと今は仲良くやっているのに、それをまたぶち壊すわけ?」
「そうじゃない、そうじゃないけどね。メグミは落ち込むし、ぼくだって落ち込んださ。それで、メグミが家族旅行をしていて、ぼくは暇で、大学に行って、帰りにお茶の水をブラブラして・・・で、こうなっちゃったんだよ」


「兄貴、兄貴はね、なんで意識しないでそういう羽目に陥るんだろうね?」
「知るもんかね。いつもこうなんでグチャグチャになるんだか・・・」
「兄貴が優柔不断だからでしょ?」
「ぼくは優柔不断かな?」
「私から見るとそうだと思う。相手を傷つけまいとして、むしろ傷つけるバカ男なんじゃないの?」
「やれやれ、キミだったら、ぼくみたいな男は気にもとめないだろうね?」
「まあまあ、そう捨てたものでもないって。私が妹じゃなかったら、メグミちゃんと同じことをしていたかもしれないよ」
「ありがと、なぐさめでもうれしいよ」


「そうじゃなくって、私のバカ共の男の子達よりは、兄貴の方がずっとマシだと思うよ」
「まあ、いいや。とにかく、真理子とメグミは同じ大学で同級、ぼくは別の大学。だから、針のむしろは真理子とメグミ。それだけでも、いくら脳天気なぼくとメグミでもストレスがくるだろ?さらに、脳天気なぼくは、今度は絵美だ。まったく、ぼくは何しているんだろうか?」


「ま、アホウは兄貴、あなただね。いい?メグミちゃんと私、会いたいけど、どうする?」
「会って、どうするんだ?」
「世界中で、兄貴、あなたの異性の存在で、セックスが介在しないで、兄貴のことを一番理解しているのは私でしょ?」
「ま、そうだな」
「じゃあ、私が何とかしてあげましょ。その代わりに、もっと飲んでいい?」
「キミね、誰かと似てきたね?」
「誰と?」
「メグミとかとね?」