フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

A piece of rum raisin - 第1ユニバース - 第10話 絵美の殺害2、第11話 絵美の殺害3

第9話 絵美の殺害1、第二ユニバース、1985年12月7日、9日、10日、
ニューヨーク 👈NEWからの続き

第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース、1985年12月11日、
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第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース、1985年12月11日、
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第10話 絵美の殺害2


 空港の到着ロビーを抜けると、そこに黒のトレンチコートのポケットに手を突っ込んで立っている洋子がいた。「待っていたわ」と洋子が言った。


 ぼくはスーツケースを抱え上げて走り寄った。彼女の前に突っ立って、「洋子、来てくれてありがとう」とぼくは言った。洋子は、ぼくの肩に手をおいて、ぼくの目をしっかり見て、「私は、一昨日の午前中に着いたの。時差でぼけているわ。でも、明彦よりもマシかな?絵美さんのママは昨日の午後3時についたわ。今はホテルで休まれている。睡眠薬をホテル付きのドクターに処方してもらったの。私よりも時差がキツいし、なによりこの状況だから。レンタカーを借りておいたわ」と、ゆっくりと言った。


「さ、ホテルに行きましょう」と歩き出した。「パーキングエリアまで歩くのよ。数分よ」と言う。


 洋子の借りた車は、キャデラックの1982年型フリートウッドだった。まだ、アメ車がダウンサイジングをする前の最後の世代だった。トランクにスーツケースを放り込み、右座席に座る。洋子はドアを閉めると、エンジンをかけ、ヒーターのスイッチを入れた。エンジンをちょっと暖め、すぐ車を出した。相当に乱暴な運転だった。「慣れているのよ、学会で来るからね」と、洋子は言う。グランドセントラルパークウェイをたどっていく。「それでね」と洋子が説明した。


「NYPDが日本のニューヨーク総領事館に連絡をしたの。12月7日、つまり事件が起きて絵美さんが死亡した日は土曜日だったから、総領事館は、外務省にはFAXを送って、直接森さんの家に電話をかけたということ。本来なら外務省から連絡が行くんでしょうけどね。曜日の問題よ」


「・・・」ぼくは黙って聞いていた。

「この連絡があったのが7日の午後7時。死亡時刻は、7日の午前11時。まだ日が明るいときだったのね。即死よ。本人がパスポートを所持していて、パスポートのファイナルページに自宅住所、電話番号が記載されていたから、スムーズに本人の特定ができたということ」洋子が運転しながら、ぼくの方をチラッと見る。

第11話 絵美の殺害3


 マーガレットは白衣をひるがえして、ヒールなしのパンプスでさっさとエレベーターホールに歩いていった。金曜日の午前中。夕方から夜になれば山程仏さんが来るのだろうが、まだ、午前中はすいている。三人もモルグに来るのは初めてなんだろうが、平然とマーガレットについていっている。


 俺はと言えば、今朝朝飯で食べて胃袋に収まっているハムエッグとご相談だ。解剖をするわけではないが、絶対にああいった場所は好きじゃない。もちろん、現場なら屍体など日常茶飯事にお目にかかる。現場は大丈夫だ。しかし、消毒液の臭気が漂い、何百体もの屍体を保管しているモルグはいけない。


 マーガレットは、調書を再度確認して、番号を確かめている。75番。普段は解剖助手がついているのだが、マーガレットは何でも自分ですることを好む。さっさと冷蔵ブースの扉を開け、ストレッチャーに遺体を乗せて検台エリアに押していった。脚の親指につける本人確認タグも確認している。


 マーガレットは頭部のおおいを開いて、顔を見えるようにした。「たしかに、エミ・モリ本人に間違いありませんか?」とマーガレットは三人に訊いた。母親はハンカチを握りしめ「間違いございません。本人です」と気丈に言った。「わかりました。これで結構です。では・・・」と言いかけるとヨウコが「少々、ドクターにお聞きしたいことがございます」と言うのだ。


「ミス、話は上でしようぜ。ここはもういいだろう?」と俺が言うと、「そうね、ミセス・モリ、ミスター・ミヤベとミスター・ノーマンは上に戻ったほうがいいかもしれないわね。でも、私は、ドクター・タナーがよろしければここでお話があるの」と言う。「私は結構よ。お話をお聞きしましょう」と言うが、俺もいないわけには行かない。

シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」


第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)
第7話 スーパー・スターフィッシュ・プライム計画
第8話 第二ユニバース
第9話 絵美の殺害1、第2ユニバース
第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース
第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース

シリーズ「A piece of rum raisin - 第2ユニバース」


第1話 絵美の殺害1、1985年12月7日、9日、10日、ニューヨーク 👈NEW
第2話 絵美の殺害2、1985年12月11日、ニューヨーク 👈NEW
第3話 絵美の殺害3、1985年12月11日、ニューヨーク 👈NEW


第10話 誘惑、1986年10月10日(金)
第11話 転移、1986年10月11日(土)
第12話 交代、1986年10月11日(土)
第13話 デート、1986年10月11日(土)
第14話 買い物、1986年10月11日(土)
第15話 融合、1986年10月11日(土)
第16話 渡航、1986年10月12日(日) 第ニユニバース
第17話 第一ユニバース、2010年
第18話 洋子1、1986年10月20日(月)、モンペリエ、フランス、第ニユニバース
第19話 洋子2、1986年11月11日(火)、ニューヨーク、第ニユニバース
第20話 洋子3、1986年11月14日(金)、ニューヨーク、第ニユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)


第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)

 ●クリスマスイブのホテル・バー
 ●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
 ●森絵美の家
 ●御茶ノ水、明治大学
 ●明大の講堂
 ●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説

マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト

登場人物

●アメリカ、NYPD、監察医務局
ノーマン  :NYPDの警視、森絵美の捜査担当
マーガレット:ニューヨーク市監察医務局監察医、医学博士、森絵美の捜査担当
●フランス、洋子関連
島津洋子(第二): 仏モンペリエ大学の法学教授、1952年生まれ、1986年34歳
ピエール:仏モンペリエ大学の洋子の同僚
ジョン :ピエールの友人の米国人。フランス外人部隊の退役軍人。
●アメリカ、ハワード&ニック探偵事務所(ジョンの紹介の探偵事務所)
ハワード:アイリッシュ系白人男性、身長180センチ
ニック :黒人男性、身長200センチ
マリー :秘書、白人金髪女性、日本語を話す、捜査情報収集
●ビル・ゲイツ(第一、第二):マイクロソフト創始者
ビル・ゲイツ(第二):第一、第二での洋子たちの資金源。1955年生まれ、1986年31歳
●日本
森絵美  (第二ユニ):1979年21歳転移、1985年27歳の時NYで射殺、死亡
神宮寺奈々(第二ユニ):1979年21歳転移、1986年28歳の時絵美の記憶が転移、二つの人格
宮部明彦(第二ユニ):1970年12歳転移、1986年28歳
加藤恵美(第二ユニ):1978年20歳転移、1986年28歳