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A piece of rum raisin - 第1ユニバース第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日

A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日


「メグミの覚醒1、2」で

A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)

A piece of rum raisin - 第1ユニバース
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)


 リーインカーネーションみたいな、輪廻転生みたいな状態にはなっていないから安心して欲しい。輪廻転生は別の人格に転移するようだから、類似体への転移とは違う。


 私の転移状態は、20才までの記憶がある部分では第3ユニバースの記憶に置き換えられている。上書き保存みたいに。ある部分は別フォルダーに保存されていて、この第1ユニバースの記憶が優先されている。


 どう選別したのかはわからないが、この体の脳が気に入る記憶は上書きされ、矛盾のある記憶は別フォルダー、という感じかな。幼少時からの性格形成は似たようなものだから、基本の性格はほぼ同じだ。しかし、知識体系は大いに違う。


 第3ユニバースの2010年の39歳だったキミの記憶が、何テラバイトあるかわからない膨大な加藤恵美博士の記憶が、第1ユニバースの1978年の20才の類似体のキミに移植された。


 第3ユニバースは、ここ第1ユニバースよりも25年時間軸がずれている。物理定数が違う宇宙なんだろう。だから、今のキミ、20世紀の1978年の加藤恵美が21世紀の2010年の別の宇宙の加藤恵美博士の記憶を持っているってことだ


 と、39度の熱を出して、別の宇宙の自分の39歳の記憶が転移してきた20歳のメグミちゃんは急に年をとってしまったような気分を味わっている。



 とまあ、そういう話が前回まででした。しかし、これって、読んでいてもわけわからなくなりますね。


 ここでも説明していて多少重複しますが、

マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト


 このマルチバースにおける設定をザックリと説明します。

筒井康隆のSF小説『時をかける少女』


 筒井康隆のSF小説『時をかける少女』、学習研究社の学年誌『中学3年コース』1965年11月号から『高1コース』1966年4月号に連載(全6回)、鶴書房盛光社「ジュニアSF」シリーズ第5巻として1967年3月に刊行された。ラベンダーの香りを嗅いだことで時を自在に超える能力を身につけた中学3年生の少女が、その能力を通じて重ねていくさまざまな思いや経験を、サスペンス要素や青春、ラブロマンスを交えて描く。

『時をかける少女』ストーリー

 ある日、中学3年生の少女・芳山和子は、同級生の深町一夫や浅倉吾朗と一緒に理科室の掃除を行っていた時に、実験室でラベンダーの香りを嗅いで意識を失う。


 その3日後、和子の周囲にはいくつかの事件が起こる。深夜に起こった地震により、吾朗の隣の家が火事になる。そして、その翌日に吾朗と共に交通事故に巻き込まれそうになった瞬間、和子は前日の朝に時間を遡行する。


 もう1度同じ1日を繰り返した和子は、一夫と吾朗にこの奇妙な体験を打ち明ける。最初は信じなかった1人も、和子が地震と火事を予言したことで、和子の話を受け入れる。3人の話を聞いた理科の担任である福島先生は、和子の能力はテレポーテーションとタイム・リープと呼ばれるものであることを説明し、事件の真相を知るためには、4日前の理科室に戻らなければならないことを指摘する。


 やがて自分の意思でタイム・リープを行えるようになった和子は、4日前の理科実験室で『正体不明の訪問者』を待ち受ける。そこへ訪れたのは、深町一夫であった。一夫は自分が西暦2660年の未来で暮らしていた未来人であると語り、未来では採取できなくなったラベンダーを得るために、この時代にやってきたのだと説明する。


 さらに、和子や周囲の人間が持っている一夫の記憶は「催眠術によるもの」であり、実際に和子が一夫と過ごした時間は、1か月程度であることも打ち明ける。しかし、その1か月の間に一夫は和子に好意を抱くようになっていた。タイム・リープのための薬品を完成させた一夫は再び未来へ帰還するが、その直前に「和子の前にいつか再び別の人間として現れて再会する」ことを約束する。


 タイム・リープの秘密を守るために、和子や他の人々から一夫の記憶は消されてしまうが、和子は心の底に残る「いつか再び自分の前に現れると約束した誰か」を待ち続けるのだった。

どうにも腑に落ちません

 1966年の発表で、タイム・リープ物の先駆けなんですが、なんでラベンダーの香りが、芳山和子のタイム・リープとテレポーテーションという潜在能力をアクティベートさせるのか?このお話のタイム・リープは、未来記憶が過去の自分に飛ぶが、未来記憶が過去の同一人物に転移するなら、その未来も既に変わるだろう?とか、どうにも腑に落ちませんでした。


 実写映画とかアニメとか、人気作品ですから何度も作られていますが、さすがにラベンダーは無理筋と思ったのか、タイム・リープを起こさせる薬にしたり、未来から持ち込まれたガジェットを壊したりしますが、そもそも未来から過去に転移する記憶って何?まではどの作品もあまり説明してません。


 それに、起こったことが起こらなかったり、その逆だったりして、そこの宇宙の時間軸はどうなっちゃうの?マルチバース理論で分岐して、際限なく無数の宇宙が産まれちゃうの?と考え込みました。だって、そうでしょ?未来の記憶が過去の自分に飛んだら、その未来は起こらないことになるので、その記憶の出所はどこにあるのか?だから、分岐した別の宇宙でその未来記憶の通りに物事が進んでいないとおかしいなどなど。


●マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト


異なる並行宇宙間の、同じように存在する人物に記憶が転移する、という設定

 まあ、だから、私のフィクションでは、タイム・リープはタイム・リープですが、同じ宇宙の同一人物の記憶転移だと話がややこしくなるので、異なる並行宇宙間の、同じように存在する人物(類似体と勝手に呼びます)に記憶が転移する、という設定にしました。


 これら並行宇宙、マルチバースは、人間の行動程度では分岐せず、物理定数が変更されるような、例えば、巨大ブラックホールとか中性子星の崩壊で、光速が0.0000000000000000000000000005%ほど遅くなるなどして、宇宙の分岐が起こる、という仮説(たわごと)の設定にしました。


 そして、タイム・リープは、異なるユニバース間を結ぶワームホールを通して、物質だったらあとかたもなく崩壊してしまうが、質量のないデータ、人間の記憶みたいなものは、別宇宙に移動できるという仮説(たわごと)の設定です。


 その記憶を別宇宙に飛ばす仕組みは、登場人物の一人がトリガーになって、宇宙から飛来するガンマ線や落雷などで生じるガンマ線の対生成での陽電子(時間を遡る)に乗って発生するという仮説(たわごと)の設定にしました。


 電子の対生成は、1.02 MeV以上のエネルギーを有するガンマ線が原子の近くを通る際、原子核のクーロン電場の中で光子が消滅し、陽電子と電子が対になって生成される現象です。


 また、新たに生成した陽電子は運動エネルギーを失い静止すると、近くにある電子と衝突し、エネルギーがmc^2に等しい2つの光子が互いに逆方向に飛び出します。


 だから、最初に起こるタイムリープは、1.02 MeV以上のエネルギーを有するガンマ線が必要。そんなエネルギーを発生させる装置は、スイスとフランスの国境にあるCERN(セルン、欧州原子核研究機構)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)や日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の粒子加速器しかありません。
A piece of rum raisin - 第3ユニバース、第1話 プロローグ、2008年9月8日(月)


 記憶というデータは、脳のシナプスに依存しないデータセットの形で存在するとか、量子脳理論などがありますが、これはいまいち説明するのがしんどいので、端折りました。このブログ「マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト」の下の方のマンデラ効果を参照して下さい。


 オリジナルの他の宇宙からの干渉なしのお話は、第2ユニとほぼ同じ第4ユニでも起こったお話です。

1978年2月24日(金)以降の第4と第1ユニの時間軸


 しかし、第4ユニで起こった、

第二話 メグミ Ⅰ


は、神楽坂を降りても、落雷もなく、別の宇宙からの記憶の転移などというとんでもないことも起こりませんでした。第1話 メグミの覚醒1で覚醒しちゃったメグミちゃんじゃない、他の宇宙からの干渉のないオリジナルのメグミちゃんです。


 だから、これ以降、真理子にNTRを見つかったとかが起こりますが、第1ユニバースではそれは時間軸から抹消されてしまいます。

第3話 メグミの覚醒3

●順応

 メグミの第三ユニバースの記憶が戻って以来、やることが山積みだった。ここではメグミは20才の女の子だが、異世界のあちらの39年間の記憶を持っている。それも1978年よりもはるかに科学技術も理論も進んだ32年後の2010年の世界の記憶だ。おまけに彼女は世界一流の物理学者でもあった。


 この世界の20才のメグミに生活する術(すべ)を教えなければいけなかった。矛盾する記憶知識を公にすると宇宙が変わりかねない。異世界の知識だから同一世界のパラドックスは生じないかもしれないが、注意するに越したことはない。


 ここはジョンだけではなく、ロバート・ケネディもジョン・レノンも暗殺された世界なのだから、そもそも向こうと矛盾している。ただ、現在だけではなく、79年、81年の記憶が転移した向こうの世界の森、島津、湯澤、小平、ジャヤワルダナがいたのだから、少なくとも81年までのこの世界にパラドックスは生じないはずなのだ。


 時間軸が小平先生の推測では第一と第三は25年ずれていて、類似体の生まれ年も違う、記憶に関して、第三と第一の出来事の年月日を換算するのにいちいち計算しなければいけない。1978年以降第三で起こったこと、第一で起こるであろうことも他言できない。時間に干渉することは避けなければいけない。


 ただ、私もメグミも2010年までの記憶が転移している。2008年のCERN(セルン)のLHC熱暴走による転移ではなく、2010年のJ-PARKのガンマ線フラッシュを利用した転移だ。私たちはその点、記憶転移に成功したのだ。もちろん、第三の記憶を持った第一のこの私たちの類似体が存在していること自体、時間に干渉していることになるのだが、自分自身の存在を否定してどうなることか。それは触れないでおこうと思った。


 宇宙における因果関係、一連の原因と結果が並行宇宙間でどうはたらくのかは説明ができないが、私たちが今この時点で存在しているということは必然であって偶然でないような気がする。逆に、私たちがここに存在しないことがパラドックスを生むのではないか?と思われた。


 私もメグミに負けず劣らず、SF小説も映画も読んだ、観てきたつもりだ。だが、実際に自分の身にSF的な事が起こってフィクションがノンフィクションになった場合、あれらSF小説も映画もかなりの部分を端折ったか、作者の想像が追いつかなかったのだと思う。


 私にとってもメグミにとってもこれは一種の若返りだった。私にとっては、39年間の大人の記憶が転移した12才のガキの頃から8年間、その秘密を持ちながら悶々としていたことは確かだ。


「メグミ、たまには家に帰らないと、ご両親が心配するよ」とある日の日曜日に原宿のアジトのベッドでゴロゴロしているメグミに注意した。土曜日、日曜日は仕事をしないことにしていた。昭和53年はまだまだ週休2日は外資系企業を除いて普及していなかったが、2010年、平成22年に慣れている記憶は、土日は休みなのだ。


「明彦のところにいる、とママには話してあるよ」ベッドでうつ伏せになって両ひじを立て、頬杖をついていた。膝を折り曲げて、交互にかかとでお尻を叩きながらメグミが言った。チュニックニットのひざ丈のミニスカートを着ていた。39才の大人の女性、白衣のパンツスーツ姿のメグミを見慣れていたので、その若々しさにはドキッとする。


「私のことはママにはなんと説明しているんだい?」
「え~っと、ボーイフレンド、恋人って言ってある」
「ふ~む、まあ仕方ないか。そのうち、メグミの家に挨拶にいかないといけないな。だけど、5月以来、外泊が増えているのに注意されないの?」
「明彦と一緒にいるから安全だよ、と言っているけど、いけない?」
「昭和53年だよ?結婚前の娘が、とか言われないのか?平気でメグミをここに泊めている私も私だけどね」
「性病と妊娠だけは注意しなさいって、ママに言われました」
「かなりさばけた家だなあ」
「ここ(第一)も向こう(第三)も家の雰囲気は変わらないみたいね。この家の住所も電話番号もママに伝えているから安心しているわ。そうそう、ママと言えば、どうも子供っぽく感じられてダメだわ」
「どういうこと?」


「ここのママは43才じゃない?私は物理的には20才だけど、経験は39年間の記憶がある。ママは専業主婦だけど、私はあちらでは仕事を持っていたじゃない?扶養家族のママと私の感覚がすれ違うのよね。43才と39才ってほぼ同年輩でしょう?彼女、子供っぽいのよ。なんでもパパに訊いてみましょう、という返事ばっかり。自分の判断がないのかしら?向こうの世界ではこんなことは思いもしなかったわ。もちろん、向こうでは23才年上の母親として見ていたのだけれど。同年輩の感覚だと、彼女がやけに女性に見える。パパに接する態度がオンナ、オンナしているのよ。向こうでは気が付かなかったわ」


「なるほど。女性だとそういう感覚も出てくるのだね。私は気が付かなかったけど。そのような感覚も、メモしておいてくれ」
「メモするの?」
「そうだよ。これから森くんも島津くんも湯澤も小平先生もアイーシャも向こうからやってくるのだから、私たちと同じ感覚を味わうはずだ。メモしておけばこの転移という経験に対する対処も楽になるだろう」


「SF小説は役に立たないわね」
「筒井康隆に教えてあげたいね。タイムリープはそんなもんじゃない、ってことをさ。おまけに私たちのこれはタイムリープですらないんだ。たとえ類似体とは言え、同一人物ではなく、同じ世界でもないのだから。さあって、折角の日曜日だから外に出ようか?」
「どこに行くの?」
「代々木公園のホコ天にでも行ってみよう」


 私たちは神宮前に出て、五輪橋を渡って代々木公園に向かって歩いた。2010年と違って街並みも低い建物ばかりだった。代々木公園の交番前から青山通りまでの2キロくらいが歩行者天国、いわゆるホコ天になっていた。


 カラフルでダボッとした衣装で踊る「竹の子族」や50年代ファッションでロカビリーを踊る「ローラー族」などが土日になるとホコ天に集まって、踊っていた。原色の赤や紫のダボッとしたつなぎを着たグループ、リーゼントパーマをかけてロカビリーを踊っているグループとにぎやかだった。


「みんな幸せそうね」
「2010年よりも1978年の日本のほうが不便だけど幸せだったのかもしれないね」
「不思議な感覚だわ。ピンク・レディーが同い年なのよ」
「キャンディーズが解散した年で、成田空港も今年開港した。こんな過去に戻るなんて思ってもみなかったよ」


「明彦、私たち、孤独よね?これから、絵美も洋子も研一も小平先生もアイーシャもこっちにくるけど、今は私たち二人。こんな秘密を誰にも言えない。どうしたらいいの?」
「私は、こちらに来て、8年間、一人ぼっちだった。メグミの言うことはわかるよ」
「筒井康隆に文句を言いたいわ。時をかける少女って、こんな悩みをもっていなかったんだから」
「・・・それは・・・面白い考えだ」「え?何?」


「あのさ、筒井康隆は確か昭和9年生まれ。今、40才くらいのはずだよね?赤塚不二夫もそのくらいだ。タモリは30才くらいかな?彼らに会いに行こう。あいつら、新宿のゴールデン街で毎日飲んでいるはずだからね」
「ええ?どうしようというの?」
「彼らに会っても不都合はないだろう?酔っ払いの集団だし、私たちの話だって、冗談にしか過ぎないよ」
「・・・明彦、冗談だよね?」
「なに、暇つぶしだよ。未来の知識を私たちが話さなければ良いだけなんだから」


第3話 メグミの覚醒3 P.3、●新宿ゴールデン街 に続く