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奴隷商人 Ⅲ 第23章 ●奴隷商人21、紀元前46年

奴隷商人 Ⅲ
第23章 ●奴隷商人21、紀元前46年

「ムラー、アイリス、絵美、考えたことがあってね、聞いてくれる?」

「お!たまに真面目じゃないかよ?エミー」とムラーが言う。彼はだんだん慣れてきて、エミーと私、どっちが出てきたか、わかるようになってきた。「なんだ?話してみろよ」と木のカップのブランディーを飲み干す。アイリスが陶器のツボの酒をお酌する。王家の娘にしては気が利くわね。ま、このお酒、20世紀のお酒じゃないけど、荒削りでいける。エミーと私、どっちが体の主導権を持っても、五感は共通しているのだ。


「アイリスは、『ベータの完全体のプローブユニットは、紀元前190年、クレオパトラ1世が14歳の時に彼女の体に転移しました。女王になってから3年後のことです。彼女の父はシリア王アンティオコス3世、母はラオディケ3世です。セレウコス朝シリアがエジプト領土に侵攻して、ローマの仲裁で停戦、アンティオコス3世の娘のクレオパトラ1世は、コイレ・シリアなどを持参金にして、プトレマイオス5世と結婚しました』と言っていたわね?」


「ハイ、今から140年前のことです」

「それで、代々のクレオパトラの体に憑依して、ベータの完全体のプローブユニットは受け継がれてきた。その間に、人間の醜い属性もプローブに影響を与えて、純粋な知識欲が薄れ、人類の負のさまざまな欲望を求めるようになった。純粋知性体のベータ本体が戻ってこないので、ベータのプローブユニットは捨てられたも同然、本体に吸収されなければ、たとえ知性体のプローブだといっても人間化してしまう、とこういうことだよね?」


「ハイ、その通りです」

「それで、6世から記憶が転移した時、アイリスは、クレオパトラ7世と一緒に6世の病床にいた。代々のクレオパトラは、死ぬ間際に次の代のクレオパトラを呼んで、身体接触でプローブの受け渡しをしてた。6世は、娘の7世を呼んで手を握り、プローブの受け渡しをしようとした時、アイリスも偶然、6世の手を握っていた。既に、彼女の脳の電気信号は弱まっていたから、彼女は7世とアイリスの区別がつかなかった。それで、アイリスは途中で手を離してしまった。7世は最後まで手を離さなかった。だから、アイリスの転移記憶は不完全。転移が終わった後、7世はアイリスを睨みつけた。事故でアイリスに部分的に転移が起こったことがわかった、こういうことよね?」


「ハイ、その通りです」

「なぜ、クレオパトラは、その時、あなたを殺さなかったの?」

「え?異母妹だから?」

「プローブユニットがそんな人間的感情を持つわけないじゃない?」

「では、なぜです?」

「6世から7世に転送された記憶データ、知性データがもしも不完全だったら、アイリスを殺してしまっては、コピーがなくなるから?ということ?」

「ええ?」


「だから、予備のコピーは残しておこうと、あなたと姉、ペトラをカルナック神殿に幽閉した」

「でも、それで、私の記憶データをどうやって?」

「プローブのやることだから、方法は知らないけど、7世がもしも不足したデータがあることに気づいたら、あなたを吸収するとかするんじゃないの?だから、もしもそうなら、あなたは私たちの弱点。あなたを7世が吸収するのを防がないといけない」

奴隷商人 Ⅰ

奴隷商人 Ⅱ