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シリーズ『北千住物語』第三章 巫女

● シリーズ『北千住物語』第三章 巫女


あらすじ


 イチローの部屋を出て、分銅屋に帰る途中、「純子、いつもコンパスなんて持っているのか?」と紗栄子は純子に聞いた。


「神社の娘の必需品よ。小さい頃から持たされているのよ。方角が大事なの」


「神社の巫女って、あんなお祈りをするのかい?」
「ああ、あれ?普通の神社の巫女はあんなことしない。私は祖母に習ったの。あの動作は九字を切ったの。『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』って唱えて、邪気を払った。テンポラリーの結界を張ったの」


「でも、単なる巫女なの?」
「神職って、準国家資格みたいなもので、神社本庁が認定するものなの。認定試験もあるの。でも、この科学技術が発達した世の中で、大学のコースとか神職養成講習会で九字を切ったり、結界を張ったりとか、教えないでしょ?あくまで、準国家資格なんだから。だから、法律上巫女というのは、準国家資格を持たない神職の補助役なんだけど。でも、それとは別に、能力がないとお祓いも効果がないでしょ?だから、非科学技術の世界で、まだまだ、卑弥呼みたいな本来の巫女、巫(かんなぎ)というのが伝承されるの。私も妹もそれを習ったの」


「へぇ~、知らなかったよ」
「あまり言う話でもないでしょ?でも、真言密教の呪術とか、道教、方術、陰陽術とかと神社のお祓いは違うの。神社のお祓いは、あくまで、その場所を清浄にして、邪気が入らないように結界を築くだけ。エクソシストみたいに、憑依された人間から邪気を祓うということじゃないのね」


「純子は不思議なことを知っているんだね?」
「紗栄子、何言っているの。私は私、そのままの純子ちゃんだよ」
「純子は読心術なんてできるの?」
「できるわけないじゃん!私がわかるのは、清浄か不浄か、その世界だもん」
「じゃあ、私なんて、さしずめ邪気で満ち満ちているんだろうな?」
「いいえ、紗栄子から感じるのは、爽やかで優しい気よ」


「その気ってやつはどうなってんだ?どうなってるって、なんつーか、どう感じられるんだ?」
「引かないで聴いてね。私は集中すると視覚異常になるみたいなのよ。その視覚異常の時には、人でも物体でも、その周りにボヤァッとした光が見えるの。強い光もあれば弱い光もある。清浄な光もあれば不浄な光もある。それが見えるの。さっきの部屋では、残光みたいなものが見えたわ。飛行機は行ってしまったけれど、飛行機雲が残っている、そういうような。それはあまりいい光じゃなかった。不浄な弱い光が残っていたのが見えたの。それがコンパスで確認すると鬼門の方角から裏鬼門の方角に続いていたの。その方角に何かあるのかな?って。前の似たような話の時は、庚申塚と庚申塚を結ぶ線と道祖神の線が交差した位置にこういう物件があったわ」


「それって、霊視とか言うやつかな?」
「なんだろうね?オーラ?何らかのエネルギーの放射体?そういうようなイメージかしら?だから、集中しないとわからないけど、紗栄子からは、優しさや爽やかさが感じられるんだ。こんど、集中するから、見せてね」
「おいおい、そういうおっかないのは遠慮しておくよ」


第三章 巫女
 一話 楓と鉄平
 ニ話 佳子と一朗
 三話 事故物件
 四話 逆ナン
 五話 巫女
 六話 童貞
 七話 翌朝
 八話 下見
 九話 祝日
 十話 処女以前
 十一話 処女以後


登場人物


兵藤楓  :武の父親の再婚相手の連れ子、母はCA、兵藤武の義妹、高校2年生、処女
兵藤武  :渋谷に実家のある大学1年生。義妹に迫られて一人暮らしを決意、美久の彼氏、童貞
丸尾鉄平 :兵藤武の大学の数学科の同級生。オタクで女性恐怖症。楓はセーフ。武の紹介で楓と付き合う、童貞


佳子   :美久の手下、高校2年生
鈴木一朗 :内科医院で佳子に出会い付き合い始める、借りている部屋で超常現象が・・・


紗栄子  :美久の手下、高校2年生、自衛隊に入隊予定。アキラのセフレ、純子の親友
冨澤アキラ:紗栄子のセフレで純子の彼氏、童貞だったが紗栄子と初体験
時任純子 :氷川神社の娘、長女。アキラの彼女、処女だったがアキラと初体験、紗栄子の親友
時任直子 :氷川神社の娘、次女。超常能力では純子よりも上。


吉川公美子:小料理屋分銅屋の女将さん、元物理学科の大学院卒
田中美久 :北千住の不動産屋の娘、元レディースの総長、元ヤン。大学1年生、武の彼女、処女
節子   :美久の手下、高校2年生、分銅屋でアルバイトをする


南禅久美子:航空自衛隊二等空佐。防衛省防衛装備庁航空装備研究所所属
羽生健太 :航空自衛隊二等空佐。防衛省防衛装備庁航空装備研究所所属。紺野の元夫
紺野美千留:航空自衛隊三等空佐。自衛隊情報保全隊調査第2部


後藤順子 :美久の元手下、美久のレディースの後釜の総長、高校3年生
浩二   :小川康夫の手下
恭子   :身長145センチのチビの小悪魔のレズ、順子の手下、高校2年生
敏子   :身長170センチのノッポのマゾ、恭子のレズの相手、順子の手下、高校2年生
恵美子  :身長170センチの可愛い子ちゃん、順子の手下、高校2年生
智子   :合法JK、恭子がヤク中にして、売春をさせられる
小川康夫 :順子の彼氏、痩せ身のイケメンの半グレ。順子の売春組織のクスリの供給元


● シリーズ『北千住物語』


● 第一章 出会い
  田中美久と兵藤武の出会い
  → 2016年頃のお話



● 第二章 順子
  後藤順子らの合法JKの集団売春と美久たちの闘い
  → 2016年頃のお話



● 関連シリーズ『雨の日の美術館』