恭子と明彦、エピソード Ⅱ
恭子と明彦、エピソード Ⅱ
●1981年12月11日(木)
恭子は最初の日と同じウールのミニのワンピースを着て、同色の紫のストッキングをはいていた。ぼくのベッドに腰をかけ、太腿の下で手を組んで、自分の足の指を見ていた。ミニのスカートがずりあがって、太腿がみんな見えるのだけれども、彼女、気がついているんだろうか?
可愛い、なんてものじゃない。セクシーだ。小さな鼻、小さな唇。妖精の耳がクレオパトラカットの髪の毛からのぞいている。華奢な手足、小さく細い指。壊れてしまいそうな子だ。窓から1月の弱い日差しがそそぎ、ベッドの上の彼女を照らす。すべて静まりかえっていて、フェルメールの油絵のような光景だった。
「あら、コーヒー出来たの?」と恭子。
「あ・・・ああ、熱いよ」とぼく。
彼女の横に坐って、マグカップを渡す。彼女はちょっと口をとがらせて「ちょっと訊いていい?」という。
「何?」
「この前、私たち、キスしたわよね?」彼女は膝にアゴをあずけて、下から見上げるようにして訊いた。
「うん、したな」
「なんで?」
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