フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

エレーナ少佐のサドガシマ作戦(30) P.2~5

エレーナ少佐のサドガシマ作戦(30) P.2、沖縄へ 👈NEW

 ●ニャーナ 2、ハバロフスク
 ●エレーナ少佐の指令
 ●買い物

「以上がこちらのスパイの諜報報告なのよ、エレーナ」とアーニャ。

「う~ん、台湾侵攻、南西諸島攻略・・・台湾の太平島占拠・・・北朝鮮の半島南進で韓国は放棄・・・今が台湾侵攻の好機・・・、この情報は日本政府には伝えたんですか?」

「内閣情報調査室と自衛隊の幕僚監部の担当者には話したわ。え~っと、誰だっけ?空自の紺野二等空佐という女性が担当していた」

「紺野二等空佐?(この前来ていた遠藤夫妻を派遣した人だったような・・・)」

「紺野二等空佐は真剣に受け止めてくれたわ、彼女はね。だけど、あの日本でしょ?この情報がどこまで上に届くのか?またまた、お話し合い、善処します、検討します、憂慮しています、遺憾に思います、で終わっちゃう気がする」

「確かに、この国の危機意識は低いわ。だけど、私レベルでなんとかできる問題じゃない」


 ジトコ大将が話に割り込む。「それから、日本政府から正式に依頼が来たんだ。佐渡に駐留しているオスリャービャとペレスヴェート、ポモルニク型エアクッション揚陸艦を4隻、貸してほしいと」


「ハイ?なんのことです?」

「兵器輸送をお願いしたいという話だ。北の韓国侵攻で自衛隊の艦艇が払底している。貨物輸送艦も足りない。そこで、我が海軍艦艇で、佐渡を出港、佐世保で燃料とミサイルなどの補給を行って、沖縄を経由、石垣島という沖縄本島から400キロ、台湾から240キロの距離にある離島に自衛隊装備を運搬する任務なんだ。戦闘をするわけじゃない」

「それで、パパ、了解したの?」

「ああ、こちらこそ、日本政府にまた貸しを作れてうれしいよ。なにせ、ロシア連邦と手切れしたからカネがないんだよ、我々は。日本の財閥に樺太でジャンジャン天然ガスを採掘していいから、前借りさせて欲しいくらいだ」

「銭ゲバみたいね?この兵器輸送は・・・有償?有償なのね!お金を要求したのね!」

「無い袖は振れない。金がなければ国民も文句を言う。南西諸島が百億円で防衛できれば安いもんだよ。ところで・・・」

エレーナ少佐のサドガシマ作戦(30) P.3、沖縄へ 👈NEW

 ●佐渡出港
 ●佐世保入港、ペレスヴェート艦上、広瀬二尉の居室
 ●佐世保入港、ペレスヴェート艦上、食堂

 海自では、毎日の食事を調理する専門の職種である給養員が十数名乗艦している。今回、オスリャービャとペレスヴェートには、数名の給養員が配置されているが、通常の乗員以上を乗せているため、陸軍女性兵士各二十名ずつは、給養員の手助けをしている。

 アニータ少尉の乗船しているペレスヴェートでは、水陸機動団二百名は広瀬二尉が率いている。彼らの居室は広く快適とはとても言えない。広瀬は尉官なので、尉官用の個室を割り当てられている。


 アニータ少尉が広瀬二尉の居室のドアをノックした。「広瀬二尉、アニータ少尉であります」「お入り下さい」

「広瀬二尉、水陸機動団の食事メニューの相談に参りました。これから、佐世保、オキナワ、イシガキジマと7日程度の行程になりますが、何を隊員の皆様にお出ししたらいいのか、食材の制約もございますが、できるだけ飽きない食事を作りたいと思いまして」

エレーナ少佐のサドガシマ作戦(30) P.4、沖縄へ 👈NEW

 ●佐世保入港、ペレスヴェート艦上、艦橋
 ●佐世保入港、ペレスヴェート艦上、広瀬二尉の居室
 ●ソーニャの推測、広瀬二尉の居室

 アニータ少尉はキッチンを覗いてみた。ソーニャ准尉がいて、食器洗いをしていた。偉いじゃない。尉官が文句も言わず食器洗い。健気っていうのか、何ていうのか、可愛いなあ。


 アニータの横を通った曹長に「ソーニャに洗い物させているの?」とソーニャに聞こえないように耳打ちする。


「滅相もない、少尉。彼女が率先してやってくださっているんですよ。アカデミーの優秀な卒業生なのに。尉官がそんなことをされては困ります、と言ったんですが、『卒業したての新入りですので、下積み仕事をみなさんとしたく思います』ていうんですわ」

「ふ~ん、いい子よねえ」

「そりゃあ、もう。兵士、下士官で、ソーニャを悪く言う人間はいません」

「いいわね、実にいいわ。曹長、彼女、借りてもいいかしら?」

「もちろん、結構ですとも」

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 ●デート、佐世保市内
 ●婚約指輪、佐世保市内

 途中で宝飾店があった。広瀬はショーウィンドーを覗き込んだ。


「カオル、どうしたの?あら、キレイな宝石ね」

「ソーニャ、記念に指輪か何か買いたいんだけど?」

「え?こ、婚約指輪ですか?」

「え?こ、婚約指輪になるの?」

「だって、紺野さんが自衛隊公認とか言われてて・・・私、カオルと、け、結婚するの?カオル、私と結婚してくれるんですか?」

「え?えええ?俺と結婚してくれるの?」

「昨日の今日で、気が早いかも・・・」

「いや!気が早くない!」チャンスはそうそうないもんだ、と広瀬は思った。


「ソーニャ、もう、結婚、決めちゃおう!お、俺と結婚して下さい!」

「わ、私でいいんですか?!」

「ソーニャがいいんです!」

「よ、よろしくお願いいたします」


 宝飾店のおやじが、店先でなんかもめているカップルを眺めていた。「お客さん、お店にお入りなさい。何をお求めですか?」とドアから顔を出した。

●ハウステンボスの一夜 に続く。