フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

奴隷商人 Ⅱ 第10章 ●奴隷商人8、紀元前47年

奴隷商人 Ⅱ
第10章 ●奴隷商人8、紀元前47年

「別に肉料理だと思えばいいんでしょ?」と小ぶりの半月刀で大脳皮質を切っていく。半月刀が固いものに当たった。骨?骨が脳内にあるわけがない。私は指を突っ込んで、大脳皮質を左右に開いた。


 なんだ?これは?


 脳内から現れたのは、血まみれのガラスの球だった。慎重に皮質を球から剥がしていく。球からは何百本ものワイヤーが出ていて、脳のいたるところに広がっていた。


 なんなの?これ?


 ムラーがそっとガラス球を脳内から取り出す。一緒にワイヤーも脳から抜けてきた。ムラーが水桶に球を浸して洗う。透明の球の中にあったのは、なんか、基盤とチップのようだった。基盤?チップ?この古代ローマで、半導体が半神半獣の脳の中にあるのよ!


 エミーが知りたがるので、ざっと半導体とかCPUの説明をしてやる。


「絵美、そんな未来の代物が、なぜ、この古代の半神半獣の頭の中に入っているの?」と聞かれた。私だってわかりゃしないよ。


 ムラーが捻っている。


 それから、ムラーとパシレイオスと私は、アヌビスの胴体を解剖していった。脳以外で、このガラス球のようなものはなかった。つまり、脳内以外は、これは生物だ。信じられないが、生物だった。


「う~ん」とムラーが唸る。「こりゃ、ちょっと考えないとな。まあ、これまでだ。パシレイオス、屍体を縫っておいてくれ。それで布でくるんで、ナルセスとアブドゥラと一緒に埋葬しておいてくれ。この中にあったものとか、パシレイオス、誰にも言うんじゃないぞ」と彼に言う。


 ムラーは、ガラス球を持って「絵美、ご苦労だった。さあ、行こうか」と言う。なにがなんだか、私にはわからない。ムラーもまだよくわかっていないようだ。


「昼飯前の行事にはちょうどいい。絵美、昼飯前にベッドに行こうか?」ととんでもないことを言う。

「ムラー、あなた、こんな後、セックスするつもり?」

「あれ?したくないの?昼飯前の運動をしないと」

「あ~、信じられない」