フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦5、芳芳編、ヒメと明彦 XXIV

よこはま物語
ヒメと明彦5、芳芳編
ヒメと明彦 XXIV

登場人物

宮部明彦    :理系大学物理学科の1年生、横浜出身
仲里美姫    :明彦の高校同期の妹、横浜の女子校の3年生
高橋良子    :美姫の高校の同級生
生田さん    :明彦のアパートの大家、布団屋さん
坂下優子    :美姫と良子の同級生


張本芳子    :良子の小学校の同級生、中華系帰化人の娘、
         張芳芳(ファンファン)
林田達夫    :中華街の大手中華料理屋の社長の長男
吉村刑事    :神奈川県警加賀町警察署所轄刑事


小森雅子    :理系大学化学科の学生、美術部。京都出身、
         実家は和紙問屋、明彦の別れた恋人
吉田万里子   :理系大学化学科の1年生、雅子の後輩、美術部
内藤くん    :雅子の同期、美術部、万里子のBF
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身


加藤恵美    :明彦の大学の近くの文系学生、心理学科専攻
杉田真理子   :明彦の大学の近くの文系学生、哲学専攻


森絵美     :文系大学心理学科の学生
島津洋子    :新潟出身の弁護士


清美      :明彦と同じ理系大学化学科の学生、美術部

ヒメと明彦 XXIV


 1977年7月16日(土)
 ●芳子の捜索 Ⅲ


 金曜日いっぱい歩き回ったが戦果なしだった。浩司に電話をかけたが、向こうも聞き回ってみたが、美姫って子が補導されたとかの話は、中華街の管区じゃないってよ、と言われた。仲里美姫、どこに消えちまったんだ?木曜、金曜と授業をフケたから、出席が気になったが、連絡するとなんとか友だちが代返してくれたようだ。


 今日で最後に彼氏の明彦が美姫を見かけてから後、6日経っている。日曜日から月曜日の間に家から衣服を持ち出したんだろう。封書の投函日はその翌日。明彦のアパートに封書がついたのが水曜日。美姫はどこに行きやがったんだ?新しいボーイフレンドとかと部屋にこもってやりまくっているのか?それとも輪姦されてでもいるのか?まったく世間知らずのお嬢様だ。案外、ケロッとして見つかって、家に帰りたくない、とか言いそうだ。


 今朝、良子に電話した。良子も大学を休んで美姫を探している。優等生の良子が大学を休むなんて、お天道様が西から昇るよ。良子、出席、大丈夫なのか?お前、代返なんて知らないだろ?と聞くと、あらあ、私が夜電話かけて、ちょっと生理痛ひどくって、代返お願いできないかしら?って男子生徒に言ったら、いくらでもどうぞ、良子姫って多数からオファーが来たわ、と言う。こ、この女!


 一応、目星をつけた中華街の区域を良子には説明してあるが(郵便局の高田局長にブラとパンツを見せたのは良子に受けた。真面目な顔して下ネタが好きなんだ、あいつは)、中村川を渡って中華街よりの郵便ポストに投函した可能性もある、というので、良子は元町の裏通りを探っている。


 我が家には1時間に1度電話を入れたが、誰からも連絡はなかった。アニメなんかに出てくる携帯型の電話でもあれば、公衆電話を探して十円玉を浪費することもないんだけどなあ。バックの中で両替した十円玉が唸ってるよ。仲里美姫、見つけたらタダじゃおかん。ビンタの1、2発、食らわせてやる。


 中華街をうろつき回った。中村川沿いのアパートなんかを覗いて回った。一昨日、話をしたプータローどもがまたたむろしていた。


 1977年7月16日(土)
 ●雅子 Ⅰ


 私のマンションから飯田橋駅で総武線、中央線で東京に。東海道線がすぐ出るようなので、東海道で横浜に行こう、横浜駅で京浜東北に乗り換えて関内駅に行くよ、と明彦が言う。京都生まれの私には、関東の地理はピンとこない。京都から大阪に行くよりも近いってことよね。1時間、かかるから。神戸から明石ぐらいの感じかしら?


 だけどなあ、この急展開はなに?数ヶ月、部室で顔を見合わせて、やっと告白されたのが昨日。早速、エッチして(自分から誘った節があるのは否めない)、翌朝、彼氏の元カノ探しに横浜へ行く?あれ、パズルのピースが合わない。詳しく話を聞いてないせいだ。そう思うと疑問が湧いてくる。最後に、仲里美姫に会ったのが、この前の日曜日と彼は言ったけど、その時、どうしたの?エッチィしたの?元カノとエッチィして、数日後、美術部の先輩に告白してエッチィするって、そういう男は誠実じゃないでしょ?


 東海道線は空いていた。ボックス席に座る。「ねえ、一点、ハッキリしたいことがある。日曜日に美姫ちゃんに会って、エッチしたの?それで1週間も経たないで私に告って、私ともエッチィした。それは、せーじつじゃないわよね?」


「詳しい話はしてないね。スマン。まず、日曜日にヒメとセックスしてません。大学受験を全部フケた2月から、ぼくらはギクシャクしていて、喧嘩が絶えなかった。ヒメはセックスでつなごうという態度で誤魔化すから、さすがにぼくも怒った。もう一度、立て直して、ちゃんと予備校に通って来年受験するんだ、と説得した。でも、今思えば、どうも去年の秋から冬、ヒメの態度がおかしくなってきたな、という気がする。これから連絡する良子とヒメは特に仲が良かったんだけど、彼女ともギクシャクし始めた。ぼくは受験勉強のストレスかな?と思っていたけど、あの手紙にあるように、ぼくと良子に内緒でボーイフレンドを作っていたのかもしれない。一人じゃないかも。そういう付き合いの影響で、もともと大学行きたくない、ぼくの嫁になる、という主義だったから、突発的に大学受験をフケたのかな?とも思う。良子も受験、全部フケに激怒して、ヒメをビンタしたと言っていた」


「ねえ、明彦。ぜんっぜん関係ない話だけど、昨晩、キミに『何人くらいと経験したのよ?』って聞いたら、『三人。ヒメと雅子も含めて』と答えたけど、もしかして、その三人目というのは、高橋良子さんじゃないんですか?」
「雅子、なぜわかる?」とギョッとしている。図星なんかい?やれやれ。
「女の勘です。『彼女の親しい友達を知らない?』と聞いたら、『一人は、高橋良子さん。もうひとりは坂下優子さん』とキミは答えた。その声のトーンでまずピンときた」
「やれやれ」
「それで、さっきの会話で急にキミは『良子』呼びした。自分じゃ気づいてないだろうけど。それで、ピンピン来ました。つまり、宮部明彦、これからですね、キミは、今付き合っている私、今カノと一緒に家出した元カノを探しに行くのに、エッチィした三番目、あれ、違うな?エッチィの順番では私が三番目だね。だから、二番目の女の子に私たちは会いにいくってことだよ。ゲェ~、なんなの、これ?明彦、三角関係だったの?その良子とは今でもエッチィしてるの?私、キミとの付き合いやめるわ。アホらしい!」
「弁解できるか?説明できるか?」
「被告人、自己弁護を許可します!さあ、白状しないさい!」

ヒメと明彦5、芳芳編、ヒメと明彦 XXIV に続く。