フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦6、明彦編、ヒメと明彦 XXIX R1

よこはま物語
ヒメと明彦6、明彦編
ヒメと明彦 XXIX R1


「XXIX」を書いていて困ったことに、私は女性を強姦したり、酒を飲ませて意識を混濁させたりして犯した経験がない。これは困った。犯される方の女性、犯す方の男性の心理などまったくわからない。


 まさか、強姦や和姦の経験のある人ぉ~、教えてください、なんて言えないので、想像でしか書けないのだ。こんなようになるんだろうか?

 ディスコに行く前にパスタでも食べようよと行って、新宿のイタリアンに連れて行った。彼女の方から自分の話をいろいろした。お友達は成績優秀な生徒会長だった子だけど、私はあまり出来がよくないの。大学行く意味があるのかなあ?予備校も強引に行かされているのよ!と言う。ご不満がたくさんありそうだ。親身に聞いてやるフリをした。


 ディスコで、二人で踊り回った。俺は結構踊りはうまい。気の弱いヤツを演じているが「踊りは、ぼくうまいと思うよ」なんて言って誤魔化す。彼女は「あ!教えて、教えて」とボディータッチもする。人懐っこい子だ。調教しがいがあるってもんだ。


 お酒、飲んじゃおうか?と聞いたら、少し飲めるという。カクテルを注文する。トイレに行きたくなるジュース系を。でも、混ぜているのはウォッカダブルだ。


 踊ると喉がかわく。彼女はゴクゴクとカクテルを飲む。踊っては飲む。飲んでは踊る。5杯飲ませたら、案の定、トイレに行きたいと言う。しめしめ。彼女がトイレに行っている間に、飲み残しのカクテルに周囲から見えないように目薬を7滴たらした。


 トイレから戻った彼女がもっと踊ろうよ、と言う。踊ればさらに酔いが回る。だけど、仲里美姫って、可愛い名前だよなあ。こういう子を犯すってたまらない。また、勃起してきた。


 踊っていると、美姫がウッとなった。気持ち悪くなったんだろう、と達夫は思った。目薬を入れすぎたかな?ここで吐かれちゃたまらないので、トイレに連れて行く。一人で歩けないようなので、手を俺の肩に回した。彼女、背が低いんでちょっとかがんで歩いた。この頃のディスコのトイレは狭く汚く男女兼用だった。


 美姫が膝をついて、大便器を抱えた。ウ~、ウウ~と情けない様子で嘔吐している。食って飲んだものを多少吐けば、意識混濁なんてことにはならないだろう。意識朦朧程度がいいんだ。自分が犯されているのをあまり感じない程度で、と達夫は思う。俺は自分のハンカチで彼女の口を拭ってやる。


「達夫さん、私の汚いのでハンカチが汚れちゃうわ」と美姫が言った。

「大丈夫だよ。美姫さんのなら、汚いなんてあるもんか」と達夫。内心、ゲロ吐き女だからって、俺のチ●コ舐めさせるんなら、チ●コに舌はついてないぜ、キスするんならうがいさせるか、歯磨きさせりゃあいいってもんだ。ゲロ吐いた女のほうが心理的に弱っているし、やりやすいのが、みんなわかんねえんだ。


 出ようか、どこかで休まないといけないみたいだね?と言って、彼女の腰を抱きかかえて、ディスコを出た。おお、お腹のお肉がプニプニしてるぜ。こりゃあ、抱き心地が良さそうだ。ディスコの近くのラブホに入った。美姫は、今日あった男とラブホに入る、という状況を理解してなさそうだ。まだ、ふらふらしている。


 ごくごく普通の部屋にした。美姫がベッドにぶっ倒れる。俺は、バスルームでタオルを濡らして、美姫の顔を拭いてやった。美姫が言う。「明彦、ありがとう」と言う。おや?彼氏とでも俺を間違えているのか?まあ、いいや。こちらこそ、おいしい体を自分からベッドに横たえて頂きまして、ありがとう。


 部屋のテーブルの下に自販機があって、飲み物があった。ウォッカのミニボトルもある。俺は、ミニボトルとコーラを買った。スキンも買う。ナマより味が落ちるが、妊娠されちゃあかなわない。女は美姫だけじゃないからな。


 軽くキスをした。彼氏と間違えているので、抵抗しない。お!こいつ、自分から舌を入れてきやがる。なれてんじゃねえか?相当、彼氏に仕込まれているみたいだな。いいじゃん!ミニボトルとコーラを口に含む。口移しで美姫にゆっくり飲ませた。酔っ払った状態を長引かせないとな。俺の常套手段だ。彼女が喉を鳴らして飲んだ。舌を絡めてくる。俺は美姫の唾液をすすってやった。


 さあ、これからだぜ。俺はズボンを脱いだ。美姫の服も全部脱がせた。俺のチ●コを口にあてがうと、慣れてやがる、喉の奥まで含んでねっとりと舌を使う。こりゃあ、上玉だぜ。もう美姫のあそこは、彼女の体液でベトベトだ。彼女のマ●コに口をつけて、舐めあげてすすってやる。美姫がもだえて、彼氏の名前を呼ぶ。俺の頭を自分からマ●コに押し付ける。背中をそらして、これだけで逝った。


 これだよ。逝っている最中に俺のチ●コを奥まで突っ込んでやるんだよ。女はさらに逝く。おお!美姫、極上だ。ものすごい締りだ。美姫が俺に抱きついて、脚を絡めて離すまいとしている。しがみついて俺の肩を抱いた。いい女だぜ。今晩は、たっぷりかわいがってやるからな。


 やっぱり、日本人女は最高だ。節操のない中国人女はどうも合わない・・・いや、中華街でも一人は、この美姫に匹敵する中国女がいる。小学校の頃からの高嶺の花だ。あいつを犯せるなら数百万円積んでもいい。あの女を思い通りにして、引っ叩いて、俺のチ●コをしゃぶらせて、ヒィヒィ言わせてみてえ。


 ああ、張芳芳(ファンファン)、あいつもこの美姫みてえに犯してえ。おっと、ファンファンのことを考えていたら、また、固くなってきやがった。美姫、美姫、どこまでも逝きやがるぜ。こりゃあ、良いや。夜は長いぜ。ズタボロになるまで、犯してやる。

ヒメと明彦 XXIX
 1977年7月16日(土)
 ●作戦会議

 王は、若いヤツで目端が効きそうな25才の徐永福を選んだ。細身で少林寺をやっている。店のバンに偽造ナンバープレートをつけて、仲木戸公園の前で待っていろと指示した。そうそう、ワイヤーカッターを持っていけと言った。金網のフェンスで防護されているかもしれん。バラクラバ帽は・・・あの4人と運転手、吉村刑事がくるんだったら彼の分と俺か。7つ持ってこさせた。21世紀の明るい中華街とくらべて、1970年代は物騒な町だったのだ。事務所には色んな物がある。


 仲木戸公園は京急東神奈川駅のすぐ前、港側にある。ノース・ピアのすぐ近くだ。本牧ではなく、大黒町寄りの神奈川区の埋立地だ。もともとは瑞穂埠頭と言って、外国貿易埠頭として作られたが、終戦後には連合国の駐留軍に接収され、在日米軍が使用している。横田飛行場の兵站拠点の米軍物資の陸揚げを行う陸軍所管の埠頭地区と海軍所管の海軍艦船乗組員への軍事郵便の配達を行う郵便局地区とがある。

 達夫が言った108棟は確か郵便局地区だったな、と王は記憶を探った。瑞穂鉄橋を渡った先の埋立地が鈴繁町、瑞穂町といって米軍物資の陸揚げを行う陸軍所管の埠頭地区にあたった。瑞穂鉄橋の手前に長方形の埠頭よりも小さな埋立地が2つあって、東神奈川駅から村雨橋、千鳥橋で陸側とつながっている。この2つの埋立地は、米軍所管の土地と日本企業所有の土地がまだらになっている。108棟は、千鳥橋でつながっている2つ目の埋立地だ。

 だが、村雨橋、千鳥橋、瑞穂鉄橋には、それぞれに米軍のMPが警備についているはずだ。そこに車で乗り付けるわけにはいかない。米軍にバレないルートというと、二車線の竜宮橋を渡って、星野町の東高島貨物駅から2つ目の埋立地につながる貨物の鉄橋を渡れば、米軍に見つかる恐れはまずないはずだ。三井倉庫前から貨物線沿いに200m 行くと飛び地になっている海軍所管の海軍艦船乗組員への軍事郵便の配達を行う郵便局地区の飛び地の108棟があるはず。軍事郵便倉庫なので警備は普通警備はたまの見回り程度だ。ただし、今回は台湾の連中が米軍兵士とグルになっているとすると、米軍兵士の連中が付近にいて、倉庫の中の誘拐された女性たちを見張っているだろう。

 問題は、ファンファンの言う神奈川県警に踏み込ませると言っても、日米の境界線をまたいで、日本側に誘拐された女性を移さないと、県警は手出しできないということだ。これは頭が痛い。俺たちとファンファンたちは、仲里美姫だけ救出してずらかればいいが、ファンファンは他の女性たちを助けたいという。どうやって?誰が?少なくとも、吉村刑事が署に内緒でやるしかないが、一人では無理だろう。そうなると、仲里美姫以外は関係ないはずだが、俺たちも刑事の手助けをするしかないのか?余計な手間がかかるもんだ。


 俺は、林(リン)のばあさんに拾われる前、昭和27年頃、闇物資を扱うグループにいて、米軍からの横流し品の受け渡しにその埋立地をよく使っていたので、あそこいらの地理には詳しいのだ。


 店の裏に回った。ファンファンのハイエースが従業員駐車場に止まっていた。スライドドアをノックした。「俺」ファンファンがドアを開けた。


「あれ?もう一人は?」
「先に仲木戸公園の駐車場に行かせた。俺はこの車に乗っていく」
「道中、作戦も立てられるしね!王さん、そう言えば、私、瑞穂埠頭って知らないんだった!」と底抜けに明るくファンファンが言う。お嬢様の頭の構造は俺にはわからん。人質救出に行くんじゃないのか?もっと深刻になれよ。
「嬢ちゃん、この4人だけでどう仲里美姫を取り戻すつもりだったんだ?」
「だってさ、おばあちゃんに私ら4人で行く!って言えば、当然、林(リン)からも人を出すと言うと思ったのよ」
「それで、俺か?」
「王さん、戦後からの長い経験があるじゃん?当然、知ってるとおもってさ」
「やれやれ。嬢ちゃんが張の家を継げば安泰だな」
「やなこった。私は、検事か弁護士志望なのよ」
「やれやれ。それで彼氏は刑事なんだな?」
「そういうことです」
「そのラブラブの彼氏はどうした?」
「アパートにいたんで、H飯店の裏に停めてあるハイエースまで来てね、と電話しました」
「刑事を顎で使うか?ハニトラだな。まあ、いいや、ほらバラクラバ帽。吉村刑事の分も含めて6つ」
「ありがとうございます」
「それで、みんな聞け。ノース・ピア、瑞穂埠頭の近辺の地理はこうだ・・・」と一通り説明した。運転手も頭の中でどう行くか、覚えているようだ。


「なるほど。王さんのご推薦は、竜宮橋を渡って、星野町の東高島貨物駅から2つ目の埋立地につながる貨物の鉄橋を渡る。三井倉庫前から貨物線沿いに200m 行く飛び地になっている海軍所管の在日米軍郵便局の隣の108棟倉庫までたどり着く。ただし、美姫以外の女性の人質は、日米境界線の外、倉庫の敷地の外に連れ出さないと県警は手出しできない。浩司、吉村刑事一人では無理、王さんも手伝うってことなのね?」
「厄介だぞ。順番としては、この車とウチの車は、貨物線の鉄橋手前の東高島駅の駐車場に停めておく。俺とウチの若いのが倉庫に忍び込んで、仲里美姫を運び出す」
「手勢がいた方がいいじゃん!私と良子も倉庫に忍び込むよ。明彦と雅子は倉庫の外に待っていて、美姫を車まで連れて行く」


「お転婆め。吉村刑事は?」
「彼も倉庫侵入組かな?」
「倉庫に入るのは5人だな。いいか、倉庫内はアメリカ領だからな。倉庫周辺と倉庫内には、台湾の連中とグルになっている米軍兵士がいると思う。何人なのか。嬢ちゃん、仲里美姫だけ救出して、他の女性たちは、県警と米軍に通報して任せる、ってわけにはいかんのか?」
「米軍敷地内に、日本各地から誘拐された日本人女性が海外に売っ飛ばされる、台湾マフィアと米軍兵士が組んでいる、なんて、アメリカ合衆国が認めるでしょうか?王さん?」
「認めねえな」
「じゃあ、私たちで敷地外に救出する他ないじゃん?」


「気楽に言ってくれるぜ。ところで、紹介されてないが、この4人の組合せはなんだ?」
「あら、忘れてた。良子は私の小学校の同級生。嫌な奴でさ、学級委員長や生徒会長をやる清楚なお嬢様みたいだけど、近寄る男は食っちまう悪い女」
「失礼な!去年の夏以来、明彦以外としてないもん!」と良子。
「まったく。それで、女を次々とたぶらかすのがこの明彦。美姫は良子の同級生で、明彦は美姫の兄貴の同級生。美姫は、明彦の元カノ。良子は・・・なんだ?明彦のセフレ?」


「失礼な!第2夫人よ!」と良子。
「・・・なんだってさ。ハレムか?それで、雅子は、明彦の大学の先輩ののんべの京女で、彼の今カノだよ。私は、こいつらを蹴散らして、第1夫人になろうとしている女だ」
「・・・それ、今の若いものの間で流行っているのか?そういう複雑なのが?俺にはわからん。俺の娘がそんな関係を持ったら家を叩き出してやる」
「ヘヘヘ、女なんて、父親に隠れて何しているか、わかったもんじゃないよ、王さん。父親、騙すのは簡単だよ。パパァ~って言えば良いんだもん。母親の方が厄介だよ。女の勘は鋭いからね」
「・・・嫁に聞こう」
「聞いておいたほうが良いよ。何才?」
「22才の大学4年生だよ」
「あ!それ、もう何人かにやられてるね。王さん!」
「嬢ちゃん、この件、ほっぽって、家に帰って娘を問い詰めていいか?」
「王さんも冗談言うんだ?」
「嬢ちゃんに影響されたんだ。全然深刻じゃねえからな」


 ドアがノックされた。ファンファンが開ける。吉村刑事だ。


「なんだ?この面子は?」と車に乗り込んで吉村刑事が見回して言う。「ファンファン、紹介しろ」


 嬢ちゃんが一通り紹介した。「あ!浩司!これが良子だよ!2m 以内に近づかないでね!良子、浩司を食うなよ!」


「誰が人の彼氏を食うものですか!」
「お前、自分を棚に上げて何言うかね?明彦はどうなんだ?」
「肉体関係のあるお友達よ!」
「やれやれ、雅子の身にもなれよ。自分の彼氏の横で、女が彼氏を『肉体関係のあるお友達よ!』って言うんだぜ?」
「あら、今日で慣れました」と雅子。明彦がやれやれ、と言う。俺には若いもんがわからん。娘が心配になった。


 また、おさらいで、吉村刑事に状況と地理と分担を説明した。「俺も倉庫侵入組なんだな?署にバレたら懲戒免職だよ」と言う。「首になったら、私のヒモにしたげるわ。ハイ、バラクラバ帽」と嬢ちゃんが目と口が開いている毛糸の覆面を吉村に渡した。


「お!忘れていた!」と俺は持ってきたバックから銃を取り出した。「これはエアピストルだ。本物じゃないぜ。スプリング式で、コッキングレバーで一発一発、レバーを引いて発射する。弾丸は狩猟用の物が装填してある。何もないよりましだろう。エアガンで殺傷能力はないが、目に当たれば失明する。4丁持ってきた。俺と若いの、吉村刑事と嬢ちゃんが持つんでいいな?」


「王さん、これ、必要ですかね?」と吉村。
「米軍兵士と台湾マフィアが相手だよ?何を持っているか、わからんからな」
「やれやれ。こんなことに巻き込まれるとは」
「この女たちと関わると女難の相が強化されるんだよ、吉村さん。あんたも明彦さんも額に女ってでっかく書いてある。俺も娘が心配だ・・・こっちの話だが・・・ところで、倉庫から女たちを連れ出して、その後は?県警とどう連携するんだ?」
「三井倉庫まで連れ出せたら、倉庫の警備室から県警に連絡できる。俺が残って、あんたたちはフケるってのはどうだ?」
「米軍倉庫から三井倉庫まで250m くらいだ。嬢ちゃんと良子さんが女たちを誘導して、俺と若いの、吉村さんが殿(しんがり)を守る。女たちが何人いるか、それ次第だ。米軍兵士には手出しできない。狙いは台湾マフィアだ。女たちを救い出せたら、マフィアはほっとけばいい」
「まあ、それしか手はないな」


「さて、話はそんなところ?じゃあ、出発しましょう!マーくん、仲木戸公園よ!」
「ファンファンは気楽だな?」と吉村。
「浩司、一件落着したら、この女子大生の体をもてあそんでいいからね!」
「あ!ファン!私もまぜて!」と良子。
「王さん・・・俺、刑事辞めて王さんとこで雇ってもらうかな?」
「知らん。みんな狂ってる・・・俺の娘はこうじゃないことを祈るぜ」
「王さん、娘さん、紹介して。お友だちになりたいな」と嬢ちゃん。
「やなこった!」

 1977年7月16日(土)
 ●作戦会議

 ファンファンに渡されたバラクラバ帽というのを被ってみた。あれ?私のは目だけ開いている。明彦も被って試している。彼のは目と口が開いている。おかしな顔だ。忍者じゃない?明彦の耳にささやく。

「ねえ、あなたが私を最後に抱いたの、いつだっけ?」
「十年前?」
「19時間前の今日の午前3時だよ。十年間ぐらいの経験してるね?」
「まだ、1日経ってないの?信じられんな」
●雅子の部屋 Ⅲ


「美姫ちゃん、心配だね」
「ぼくは、林田達夫を縊り殺してやりたいよ」
「確かにそうね・・・彼女の話も聞かないと・・・林田の話だけで鵜呑みにはできないわ。それはわかるわね?」
「あいつの話、どこまで本当なんだか。最初は、酒に目薬を仕込んで酩酊させたって言うだろ?卑劣なやり方だ」
「私が言うと誤解を生むけど、二度目からは薬はなしで、強引に美姫ちゃんとしたわけじゃないって話・・・」
「どこまで本当なのか?わからんな」
「美姫ちゃんが林田とセックスしたのは、明彦と良子に対する腹いせなのかな?」
「大学受験のストレスだったのか。ぼくも去年の秋からかまってやれなかったし、寂しかったのだろうか?」


「・・・林田は、薬を最初に使って、最後は、美姫ちゃんを売り飛ばしたけど、最初と最後を除けば、彼女は浮気していたんだよね・・・手紙にあった『明彦、私にボーイフレンドができたら、キミ、どうする?と聞いたけど、真面目に受け取ってくれなかったよね?そう、私、ボーイフレンドができました。もう明彦にいろいろ言われるのはたくさん!好きな人ができたので明彦から逃げます!』」と書いてあったボーイフレンドは林田のことだよね?」
「そうだな、たぶん、そうだ」


「林田は『俺が美姫を拾ってかくまったが、俺は美姫を拘束しちゃあいないぜ。あいつがここにいたいというからいさせたんだ』と言っていた。手紙を彼女が投函できたんだから、拘束してない、というのは本当だと思う。それで、月曜から林田と一緒だった。あの手紙を火曜日にあなただけに投函した。あの手紙の意味はなんだったんだろう?本当に林田と付き合うつもりだったの?それをわざわざ、あなたに宣言して、ザマアミロ、明彦は私を失ったんだ!って思わせようとしたの?それとも、林田とはいたくない、本当は明彦といたい、探して、私を探して、という意味だったの?」
「雅子、ぼくにはわからない・・・」


「去年の8月から先週までの11ヶ月間、彼女に何があったんだろう?」
「ぼくには断片的にしかわからない。良子も同じだろう。ぼくよりも知っているかもしれないけど」
「本人に聞くしかないわね。でも、私は聞けないわね。スケッチブックのMasako Komori なんだから。それで、今はあなたと付き合っている小森雅子なんだから。林田から裏切られて売り飛ばされて、これでファンファンと良子がうまく助け出して・・・あなたと私が車まで連れていく?彼女の心理は耐えられないかもしれない。私は隠れていたほうがいいのかも・・・明彦、私との付き合い、考え直そうか?彼女にあなたが必要なら、考え直してもいい・・・いや、よくない・・・でも・・・ああ、どうしよう・・・美姫ちゃん、可哀想・・・明彦は、今の美姫ちゃんを受け入れられる?」


 ハイエースの前の座席で私たちの話が聞こえたのか、良子が振り向いて言った。


「雅子、明彦、受け入れられる、受け入れられないの前に、こういう事態になった彼女は罰を受けないといけない。雅子、優しくしちゃダメ。甘えているんだよ、あいつは。腹いせだかなんだか知らないが、林田の誘いにホイホイのって、知らない男とディスコに行って楽しんだんだ。それが悪い男で薬をもられた。だが、性懲りもなく、次からはホイホイまたついていって、薬をもられてもいないのに、しらふで林田に抱かれた。自業自得だろう?」
「良子、林田の話でハッキリしてないけど、美姫ちゃんは、最初の時、薬をもられたことに気づいたんだろうか?林田は薬をもったことを正直に彼女に言ったんだろうか?私は、林田だったらそれを隠して、美姫ちゃんが酔っ払いすぎて、明彦と勘違いして抱かれてしまった、という状況にして、彼女に罪の意識を抱かせたんじゃないのかな?」
「その可能性は高いと思う。だけどね、雅子、薬をもられるまで、美姫は自分の意志で林田についていったんだからね。それはあの子が悪いよ。だからね、雅子が身を引くとか言っちゃダメだよ」


「良子はどうするのよ?」
「私?私は明彦のお友だち。だけど、私がお友だちを続けると、美姫が心理的に辛いわよね?だから、美姫と私はワンセット。明彦にはバイバイする。美姫の面倒は私が見るわ」
「・・・残念ね・・・私とは?」
「雅子と私には関係ない話。美姫と明彦には言わない、言えない話は、私は雅子とファンしかできないでしょ?・・・チクショウ、腹立ってきたわ。誰でもいいからぶん殴りたい!今は、牛くらいなら相手できそうよ」


「やれやれ。『失いしは多くあれど 残りしも多くあり』かぁ」と明彦が言う。
「それは何?詩の一節か何かなの?」悲しい響きだと思った。
「アルフレッド・テニスン。19世紀、ヴィクトリア朝時代のイギリスの詩人さ。ユリシーズ、ギリシャ神話のオデュッセウスの話を詩にした長い作品の有名な一節だ・・・」

オデュッセウス、アルフレッド・L・テニスン

 友よ 来たれ
 新しき世界を求むるに時いまだ遅からず
 船を突き出し 整然と座して とどろく波を叩け

 わが目的はひとつ 落日のかなた
 西方の星ことごとく沐浴(ゆあみ)するところまで
 命あるかぎり漕ぎゆくなり
 
 知らず 深淵われらをのむやも
 知らず われら幸福の島をきわめ
 かつて知る偉大なるアキレウスを見るやも

 失いしは多くあれど 残りしも多くあり
 われら すでに太古の日 天地(あめつち)をうごかせし
 あの力にはあらねど われら 今 あるがままのわれらなり

 時と運命に弱りたる英雄の心
 いちに合っして温和なれど 
 努め 求め たずね くじけぬ意志こそ強固なれ。
オデュッセウス、アルフレッド・L・テニスン

「・・・こういう詩だよ」
「明彦、それ、書いてくれない?味わってみたい」
「ぼくの意訳なんだ。原文もあったと思う。今度ノートを貸すよ」
「うん、ありがとう。『失いしは多くあれど 残りしも多くあり』。『あり』なんだね」
「そう願いたいね」

ヒメと明彦6、明彦編、ヒメと明彦 XXIX に続く。