フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦6、明彦編、ヒメと明彦 XXX

よこはま物語
ヒメと明彦6、明彦編
ヒメと明彦 XXX

登場人物

宮部明彦    :理系大学物理学科の1年生、横浜出身
仲里美姫    :明彦の高校同期の妹、横浜の女子校の3年生
高橋良子    :美姫の高校の同級生
生田さん    :明彦のアパートの大家、布団屋さん
坂下優子    :美姫と良子の同級生


張本芳子    :良子の小学校の同級生、大陸系中国人の娘、芳(ファン)
林田達夫    :中華街の大手中華料理屋の社長の長男
吉村刑事    :神奈川県警加賀町警察署所轄刑事
王さん     :H飯店のマネージャー/用心棒


小森雅子    :理系大学化学科の学生、美術部。京都出身、
         実家は和紙問屋、明彦の別れた恋人
吉田万里子   :理系大学化学科の1年生、雅子の後輩、美術部
内藤くん    :雅子の同期、美術部、万里子のBF
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身


加藤恵美    :明彦の大学の近くの文系学生、心理学科専攻
杉田真理子   :明彦の大学の近くの文系学生、哲学専攻


森絵美     :文系大学心理学科の学生
島津洋子    :新潟出身の弁護士


清美      :明彦と同じ理系大学化学科の学生、美術部

ヒメと明彦 XXX
 1977年7月15日(金)
 ●拉致

 月曜日の午後、発作的に服や下着をバックに詰めて、家を飛び出した。もう4ヶ月。耐えられなかった。


 喫茶店でどうしようか?と考えながら、紅茶を飲んだ。店を出た時、偶然、達夫をみかけた。行くあてのない家出だったので、私から声をかけた。彼が中華街にアパートを借りている一人暮らしということを寝物語に聞いていたのだ。私、都合のいい女なんだろうか?良子だったら「わたくし、そんな行動原理で何かした経験はありませんわ!」と言うだろう。いいんだよ、良子は良子、私は私。


 そう言えば、渋谷で占いのおばあさんがいて、占ってもらったことがあった。「嬢ちゃん、あんたは、積極性があって、考えるよりも先に行動に移す直感的なタイプだよ。リスクを考えずに動いてしまう。だから、失敗が多い。人の意見や価値観を素直に聞き入れられない、自分とは違う考え方に拒否反応が出てしまう。言葉が強過ぎて、人間関係がこじれてしまう。注意するんだよ」と言われた。全部じゃないけど当たっているが、ムカッときた。


 2月の大学入試を全部フケてから、パパもママも私を見る目は冷たい。2月からもう4ヶ月も経っているけど、行動制限がかかっている。明彦のアパートにいます、という手も使えなくなった。予備校の申請を強制的にやらされて、今年はつきそいにママが一緒。明彦じゃ手ぬるいと思ったんだろう。もちろん、彼はバイトで忙しく、そんな暇はなかったのだけど。


 息が詰まるから、3回に1回は予備校に行くフリをして、公園で時間を潰したり、美術館で時間を潰したり。良子なら、そういう行動は逃避行動と言います、となじるんだろう。でもね、良子も大学合格したから、予備校でお目付け役がいないんだよ。予備校なら、浪人した知り合いもいる。残念なのは、達夫も大学合格したから予備校で会うということはできなかった。でも、私は、大学の入学試験を落ちたわけじゃない。全フケして受けなかっただけだ・・・受験しなかっただけ・・・


 最初の大学の入学試験で、ちょっと寝坊して、電車が遅れたりして、間に合わなかったのが始まり。誰にも言えない。滑り止めだったので、次から頑張れば良いと思ったけど、モチベーションが下がった。次の試験は時間の余裕があったけど、試験会場の手前で足が萎えた。それから、ズルズルと全フケになった。


 誰にも言わず、全フケはしばらく黙っていた。合格発表で大学に見に行くのも辛いから、大学から合格通知と入学手続きの書類が来るから見に行かない!と言って誤魔化した。良子が私の受けた大学は一緒に見に行けるじゃない?行こうよ、と誘われたけど、行かなかった。だんだん、パパ、ママ、良子が様子が変だとおもいだして、問い詰められた。全フケを白状した。最初のつまづきはあまりに情けないので言わなかった。


 パパ、ママ、茨木の大学から帰ってきていてこの話を聞いたお兄ちゃん、良子が激怒した。家の応接間で4人に問い詰められた。そこに、ママか良子に聞いたんだろう、明彦がノコノコやってきて、間に割って入った。


 まあまあ、浪人したと思って、また予備校に通って来年受ければいいじゃないですか。みんな浪人してますよ、いい経験だと思って、あまり問い詰めてもヒメが可哀想でしょう?と事を丸く収めようとする。パパ、ママ、お兄ちゃん、明彦で事後対策とか相談しだした。明彦だって、私の味方をするフリをして、みんなとグルじゃんか!


・・・良子に耳を引っ張られて、私の部屋に連れて行かれた。良子にホッペタを思いっきりひっぱたかれた。ムカッとした。お前なんかにビンタされる覚えはない。私は引っ叩き返した。頬をおさえて、目を見開いて睨まれた。フン、お嬢様は人にビンタされたことがないんだろう?スッキリした。


「フン!良子は第1志望に合格したからいいじゃないか!私のことは、ほっておいてよ!」
「そういうわけにはまいりません!美姫!あなた何を考えているの!去年の秋から様子が変だったでしょ?いろいろなものから逃避しても、問題は解決しません!問題に向き合いなさい!明彦も来年また受ければいいことだ、ってパパ、ママ、お兄様に言ってくれてるでしょ?」
「良子も明彦も、パパとママとグルだよ!明彦も私の心配をするフリをしてグルだ!」
「あなた、何を言っているの?明彦は味方になってくれてるじゃないの?」
「なんだ?良子?明彦の肩をやけにもつね?明彦は私の彼氏だよ?あんたのじゃないよ!」
「そうよ。当たり前じゃないの」
「何が当たり前だ!人の彼氏とエッチしておいて!」私から三人でしようよ、と言ったのはわかっているけど。
「三人の合意でしてました。美姫が不服ならもう彼とはいたしません」


「あんたは、どうせ他に男もいるだろう?中学校以来、何人の男と今まで寝てきた?相手には困らないじゃないか?私なんか、明彦しか経験してないもん!」自分で言っていて説得力はないと思った。良子の目を盗んで、明彦のアパートに泊まったとママにウソをついて、達夫と外泊していたんだから。だけど、それもこれも、明彦が私をかまってくれなかった、良子が私を監視して味方になってくれなかったせいじゃないか!


「美姫!私は、去年の夏から、明彦と美姫としかセックスしてません!誰でも彼でもお股を開くような女じゃありません!」こいつ!人がチクッとくることを言いやがった!
「おうおう、人の彼氏とさんざんやっておいて、開き直った!明彦としかエッチしてないって?どうせ、私のいない時に二人で隠れてやってたんだ!そうに決まってる!」
「なんの根拠でそんなことを言うかなあ?」


「生田さんに聞いたもん!私がいない時、良子が千駄ヶ谷のアパートに来ていたことが何度かあったって。泊まった時もあったって、生田さんが教えてくれたもん!」
「私は、美姫がいなければ、彼に抱かれません!確かに、美姫がいない時、彼の部屋には行きました。いつものことでしょ?だから、いちいちあなたには言いませんでした。信頼してくれているものだと思っていたわ。それで、科目でわからないところを教えてもらったりしていました。泊まった時もあった。でも、彼も私も、セックスなんてしていません。約束でしょ?美姫がいなければ、私は彼としないって」


「フン!男と女が一つ部屋にいて、夜を過ごして、何もないわけがないわ!」
「私はそうできます。明彦だって、美姫がいなければ私を抱く気にはならないわ。私は彼のことがスキだけど、彼は美姫がスキなのよ?わからないの?私は単なるおまけなのよ?正直、おまけはいやだけど、でも、今の関係で諦めてます」
「ウソつけ!私から明彦を盗るつもりじゃん!明彦だって、私なんかより、何でも完璧で美少女の良子の方がいいに決まってる!二人で私を騙して、笑うつもりでしょ!いいわよ、欲しければあげるわよ!」


 また、良子にひっぱたかれた。


「こんなくだらない話をいつまで続けても無駄ね。美姫、今、お話ししたことは私は誰にも言わない。明彦にも言わない。だけど、自分が何を言ったのか、思い出して頂戴。よく反芻して反省なさい」
「うるさい!良子!私の部屋から出ていって!出てけ!」・・・


 あ~、イヤなことを思い出した。


 どこからおかしくなっちゃったんだろう?去年の8月末に達夫とディスコに行った時からだなあ。あれが、良子と明彦にウソをついた始まりだった。私が飲みすぎたからいけなかったんだ。達夫は悪くない。達夫を明彦と間違えて、抱きついてエッチしたのがいけなかったんだ。よく覚えてないけど。私が悪い。


 だけど、明彦だって、良子とエッチしてるじゃん!私の目の前で私の彼氏に犯されて身悶えしてよがっているじゃん!今頃、私がいなくなったから、せいせいして、あいつら、エッチしてるんだ!決まってる!またムカムカしてきた。


 火曜日、発作的に便箋と封筒を買ってきて、明彦に手紙を書いた。これを読めば明彦が騒いで、みんなに相談するだろうと思った。手紙にはこう書いた。


ー 去年の末から、私の大学進学のことで、明彦はいっぱい心配してくれて、それに答えられませんでした。私をかばってくれました。うれしかった。私の味方は明彦だけだ、と思いました。


 事実なんだよ。あの明彦が、私に隠れてウソをつくわけがないじゃん!私がいないのに、良子とエッチするわけがないじゃない!わかってる。わかってます。


ー 以前にも明彦には言いましたが、私が大学に進学する意味がわからない、というのは明彦には認めてもらえませんでした。あくまで、あなたは私が大学に進むと決めていました。


 だからイヤだって言ったのに。私の望みは、明彦のお嫁さんになることだったのに。大学なんて行く必要がないじゃない?頭だって良くない。良子と違うんだ。美少女でもない。でも、明彦はこんな私がスキって言ってくれた。高校2年生の時から優しくしてくれた。その前からもそうだけど。6年間、私を見ていてくれた。だから、私は彼のもの、お嫁になっちゃダメなの?


ー だんだん私の心は明彦から離れていきました。


 自分でもウソを書いているのはよくわかる。


ー 日曜日に、明彦、私にボーイフレンドができたら、キミ、どうする?と聞いたけど、真面目に受け取ってくれなかったよね? そう、私、ボーイフレンドができました。もう明彦にいろいろ言われるのはたくさん!好きな人ができたので明彦から逃げます!私にもう構わないで下さい。


 我ながら、よくもこんな文章が書けたものだ。我ながら呆れかえる。これは、彼に対する捨て台詞そのものだ!あてつけだ!・・・でもなあ、彼なら、そうか、ヒメの感情は尊重するよと言うだろう、思うだろう・・・バカ!引き止めて欲しいのに・・・バカ!依存関係とか、難しい言葉を使いやがって!・・・単純に、私がスキなら、自分のもの、ぼくの女だ!って言えばいいのに・・・言ってほしいのに・・・


 月曜日は、達夫と久しぶりにエッチした。受験勉強で忙しく、良子も一緒だったから会う機会がなかった。家出間際なので、エッチが新鮮だった。今年に入って、明彦も忙しくて、ぜんぜんエッチしてくれなかったから、気持ちが良かった。何度も逝った、達夫に逝かされた。


 でも、火曜日に手紙を出してから、達夫とのエッチも面白くなくなった。後ろめたい。それに、このまま達夫の部屋にずっといるわけにもいかない。食事も何も達夫が買ってくれた。部屋代の代わりで達夫にエッチさせているみたいだ。自分が惨めになってきた。


 火曜日に投函したから、明彦は水曜日には手紙を読んだはず。それから、木、金曜日。私を探しているんだろうか?でも、あんなことを書いちゃったので、当然、他に相手ができたと思ってるかな。パパとママは激怒してるだろうな?良子も怒り狂っている?良子にまたひっぱたかれるのはイヤだ!


 日も暮れてきた。だるくて何もする気がしなかった。達夫は午後から外出している。大学に行かないのかしら?あ~あ、洗濯しなくちゃ。パンツに私と達夫のものがベットリついていて、汚い。そんなに下着を持ってこなかったものなあ。ウトウトした・・・


 目が覚めた。部屋に達夫と誰かがいる。薄目を開けた。男が二人。達夫とヒソヒソ話している。上海系が、とか、台湾がとか、横浜のは足がつくけど、上物だからとか言っている。男の一人が、封で止めてある1万円の札束を4つ、達夫に渡している。何?これ、何?


 男二人が私に近寄ってくる。飛び起きようとしたが、先に毛布を剥がされた。男に口を塞がれた。口に布を突っ込まれて、猿轡?をされて、目隠しされた。足を縛られている。後ろ手に手も縛られた。担ぎ上げられた。車のスライドドアを開ける音がする。車にほうりこまれた。


 何?これ、何?誘拐?拉致?なんで達夫は止めないの?・・・え?札束?達夫は平気な顔で受け取った・・・達夫が私を誘拐犯に売った?そんなバカな!今朝も抱いてくれたじゃない?・・・バカな私は、達夫に騙されたってこと?・・・あああ・・・どうしよう?


 車がどこかに向かっている。20分くらいかしら?カーブしたり、信号待ちをしたりしている。車が停まった。フェンスを横に引くような音がした。車がちょっと動いて停車した。また、担ぎ上げられた。英語で何か話しているのが聞こえた。ドアを通って建物の中に入ったようだ。右、左に曲がった。どこかの部屋に入ったみたい。


 床に転がされた。目隠しは取ってくれる。照明が眩しい。


 大きな部屋だった。私の隣に私と同じように縛られて猿轡をされている女性が4人いた。女性たちが目をパチパチして私を見る。私も彼女たちを見た。え?何?この人たち、何?


 部屋の中を見回すと、軍服を着た外国人が3人、私を運んできた男2人。外国人たちはトランプゲームをしていた。私を運んできた男の一人が私に近寄った。「おとなしくしてろよ。トイレに行きたい時は足で床を叩け。トイレに連れてってやるから。漏らされちゃたまらないからな。ちょっと辛抱していれば、船に乗せてやるよ」と言われた。船?私、どこに連れて行かれるの?私のすぐ’横に転がされている女性が泣いていた。

ヒメと明彦6、明彦編、ヒメと明彦 XXX に続く。