フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦7、雅子と美姫編、ヒメと明彦 XXXV~XXXVI

よこはま物語
ヒメと明彦7、雅子と美姫編
ヒメと明彦 XXXV
 1977年7月18日(月)
 ●美姫の引っ越し Ⅱ


 千駄ヶ谷の明彦のアパートに美姫と一緒に行った。アパートの鍵は美姫が持っている。道すがら、美姫がアパートの大家さんは布団屋さんで生田さんというのだけど、面白いのは、彼女の大学の専攻が中世・近代の日本史なの、と言う。私や良子がちょくちょくアパートに来るのを了解しているんだ、という。ヘェ~。


 千駄ヶ谷の駅前通りを通って、和菓子屋に行った。生田さんへのお土産を買います、と美姫は言う。みたらし団子と大福にしようかしら?雅子さん、何がお好きですか?と聞かれた。そうやね?関東風のみたらし団子、結構好きやねん。でも、あれ?美姫が和菓子?意外だなあ、らしくない。


 駅からそれほど離れていない住宅街に明彦のアパートがあった。美姫の言うように1階は布団屋さん。おばさんが店先ではたきをかけていた。美姫をみかけて、「美姫ちゃん!先々週の日曜日以来じゃないか?良子さんも来ないし、どうしちゃったんだろう?って思っていたのよ」と言う。あれ?ここは明彦のアパートだよね?男子の部屋に女の子の出入りがないことを心配する大家さんってなんだ?


 美姫ちゃんが大家さんに和菓子のお土産を渡した。生田さんは、お茶を淹れるから待っててね、と言う。ほほぉ、下町みたいね?


「生田さん、今日は、明彦の部屋の私物を取りに来たんですよ。もうここへは来ません。お世話になりました」ほうじ茶を淹れてくれた生田さんに美姫が言う。「それで、これ、明彦から預かっていた部屋の鍵です。用事が済んだらお返しします。生田さんから明彦に渡しておいていただけますか?え?そんなギョッとした顔をしないで。え~っとね、私、もう彼の彼女じゃなくなったんです。この方、小森雅子さんが、今、明彦の彼女なんですが、私、雅子さんの飯田橋のマンションに引っ越すんです。雅子さんに家庭教師をしてもらって、大学を受け直そうと思ってます」美姫、その説明、関係者以外、絶対に理解不能だと思うよ。


「・・・あのね、彼氏と別れた彼女が、彼氏の新しい彼女に家庭教師をしてもらって、新しい彼女の部屋に引っ越して、大学の再受験をするってのは、美姫ちゃんの住んでいる横浜では、今、流行りなのかい?」
「流行りじゃないですよ、生田さん。私たち独特というか・・・」
「じゃあ、良子ちゃんはどうするんだい?美姫ちゃんは来なくなるけど、良子ちゃんはここに来るのかい?この鍵は良子ちゃんに渡した方がいいのかね?」
「いや、それは明彦が決めるべき問題ですので・・・」


「でも、そうすると、宮部さんの新しい彼女さんの小森さんが困っちゃうね?こっちに良子さんが来て、美姫ちゃんは小森さんの部屋に引っ越して、宮部さんはどうするつもりなんだろう?小森さん、訛があるけど、関西人?」
「ハア、京都の生まれですけど・・・」
「京都かい?京都の生まれも横浜に染まっちまうのかね?江戸っ子の私にゃ、わかんないご時世だよ」
「え~、あのぉ・・・」


「アハハハ、面白かった。美姫ちゃん、小森さん、私をボケ老人と思ったようだよ。小森さん、冗談だよ。冗談。わかってますよ。細かい事情は知らないけど、小森さんが美姫ちゃんと仲良さそうで安心しました」
「じょ、冗談だったんですか?」
「ええ、冗談。でも、細かい事情は知らないけど、去年から、年が明けてから、だんだん、美姫ちゃんが悲しそうな顔をしてるしね。良子ちゃんも悩んでいたみたいで。まあ、見るところ、問題は解決したようじゃないの?詮索しないけどさ。美姫ちゃん、スッキリした顔をしているし。がんばんなよ。この小森さん、信頼できそうだよ、美姫ちゃん。江戸のおばさんの第六感だけどね」
「ええ、頑張ります」って、美姫ちゃん、ここで涙ぐむ場面なの?フーテンの寅さんの世界かよ?
「まあ、いろいろあったろうけど、宮部さん抜きに、ここに遊びに来るんだよ。茶飲み話しをしようじゃないの」
「ええ、生田さん、また戻ってきますから」


 明彦のアパートに行った。初めてだった。彼の、というより、美姫と明彦の部屋と感じられる。美姫の私物は、ビニール製のファスナーの付いた収納にキチンと入っていた。クローゼットにも。可愛い下着がたくさんある。ユニットバスには洗顔用具や化粧品の類が。


 ここで、彼と美姫、良子がエッチしてたんだ。ちょっと生々しい。


 美姫が忘れ物がないように隅々まで点検した。一つの彼女の時代の封印。表情が悲しい。


 仕方がなかった。もっと早く私がついていてあげれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。彼女は、大学に通って、まだここにちょくちょく遊びに来ていて・・・そうだ、うまくいっていたら、明彦は私と付き合うこともなく、ただの大学、美術部の先輩、後輩の関係だったんだろう。この世界は、何かの歯車が噛み合わないと、起こる出来事も全て変わってくる。


 でも、これで終わったわけじゃないのよ、美姫。これから、また、再構築するだけ。後は登るだけ。もう、二度と堕ちないように。


 私が先に部屋を出る。美姫が部屋を見回す。バイバイと言う。


 布団屋に戻った。美姫が部屋の鍵を生田さんに渡した。お世話になりました。たまに茶飲み話をしにまいります。どう過ごしているか、報告に参ります、と言う。生田さんは、よしよしと美姫の肩を抱いた。美姫、ちょっと涙目になっている。


 総武線各停で飯田橋へ。千駄ヶ谷、信濃町、四ツ谷、市ヶ谷、飯田橋。四ツ谷を通り過ぎる時、美姫が「明彦のアパートを決める時、四ツ谷は絶対にイヤ!って言ったんです」と懐かしそうに言う。


「なぜ、四ツ谷はダメなの?」
「四ツ谷には、横浜の同じ名前の系列の違う女子校があるんですよ。私の高校と仇敵なんです。明彦のやつ、高校の頃、横浜のその女子校の女の子と一時付き合っていたんですよ。私が付き合いを止めさせました」
「アハハ、束縛」
「そうですよね。私って、彼をかなり束縛していたんでしょうね」
「こんな可愛い子に束縛されたら男子にしてみれば嬉しいでしょう」
「雅子さん、知ってます?」
「何?」
「雅子さんが私の容姿を褒めるのって、私とソックリの雅子さんは、自画自賛しているんですよ?」
「そうか・・・」


「でも、ファンファンが言うように、私と雅子さん、中身は別物なんですね・・・」
「雅子、でいいわよ。『さん』付け止めましょう」
「じゃあ、雅子も私を『ヒメ』と呼んでください。高校の頃、『美姫』って大木の『幹』みたいでイヤだから『ヒメ』と呼んでと明彦に頼んだんです。彼しか私のことを『ヒメ』と呼びません」
「じゃあ、ヒメ。良子みたいにヒメの頭を抱いてよしよししたくなった。私は、良子みたいに背が高くないけど」
「フフフ、良子だと同級生なのに私をおこちゃま扱いしているみたい。事実、おこちゃまですけど。雅子なら、お姉さまだからいいな。私、お姉さま、いないから。あのね、雅子、私とあなたは中身が別物で、私はおこちゃまなんですね。自分をどう変えたらいいんだろう?」
「ドイツの小説家のヘッセの作品の中で、『鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという』という一節があるの。人格は連続していて、飛躍はしない。だけど、次の状態に変わろうとするなら、以前の状態を破壊する必要があるのかもしれない。でも、あなたはあなた。別に自分を全部否定する必要もないし、過度に肯定する必要もないのよ。問題点を自己認識した上で、適切な部分修正で十分。てってー的にやる必要はないの」
「・・・ちょっと考えてみます。それで、相談します」
「急ぐ必要はないのよ。ゆっくり考えればいい」

ヒメと明彦 XXXV に続く。

ヒメと明彦 XXXVI
 1977年7月18日(月)
 ●美姫の引っ越し Ⅲ


 ヒメはしばらく泣いていた。先週の月曜日からいろんなことがあったんだろう。それを聞くのも癒やしと贖罪と浄化だと思う。急にヒメが顔を上げた。


「あとね、セックスが長くてうまい!朝まで何回も虐められる!」
「感慨深い。私たち、同じ男に抱かれたもの同士なんだ」
「そうだねえ。あとね、あとね、キスが好き」
「あの、口の中でねっとりして、舌を絡めるやつ?」
「それそれ!それだ!虐められるのよぉ。雅子も?」
「ええ、舌を吸われて、唾を飲まされる。お酒も口移しで飲まされてね」
「雅子もやられたのね?」
「いかん!欲情してきたわ」


 ねえ、雅子、キスしない?口移しで、そのカクテル、飲ませて欲しいとヒメが言う。おっと、初日からいきなり?寛政の改革を教えたから、いいのかな?これ、目の前に私ソックリの可愛い子(自画自賛になるのよね?)が私に肩を抱かれて、目を閉じて口を開いて待ってるって、なんなの?横浜の連中の影響で頭がおかしくなってきたのかしら?


 マンハッタンを口に含む。え~っと、彼が私にするように・・・唇を合わせて、お酒を彼女の口に少しずつ移して。唇を優しく噛んで、舌を奥深くまで差し込む。舌を吸う。ヒメの唾が湧いてくるのですすっちゃう。お~、ボォ~とする。ヒメがうっとりしている。私たち、顔かたち、体型がソックリだから、私たちの体は同じくらいすごくエッチなんだ。


 ヒメが私のチノパンのベルトを緩めてボタンを外された。ジッパーを下ろされる。ヒメの手が忍び込んできて、パンツの中に差し込まれた。わぁ~、彼女、私よりも明彦に仕込まれているんだった!良子ともしている。年上で家庭教師という優位性が崩れる!私もヒメのスカートの中に手をいれた・・・なんだ、毛のはえ方まで似てるじゃない。薄い。私はジンジンしてグチョグチョになってる。ヒメも同じく。


 ヒメ、私のオ◯コを左右に開いてる!下からなぞりあげて突起を上下に擦る。おいおい、オナニーしているみたいじゃない!ズ~ンと体の深いところから気持ちよさが全身に拡がる。ボォ~っとなる。自然に私もヒメのしているのを踏襲して、ヒメのオ◯コを触った。これ、自分のに似てる!ヒメに触られてるのにオナニーしているような気分だ。ヒメもボォ~っとなってる。


 キスしながら、触り合って、二人とも口を合わせているので、鼻でしか息ができない。鼻息がフイゴのようだ。うわぁ、女同士ってキリがないんだね?二人とも体がビクンビクンしてる。私、逝った。ヒメも逝ったみたい。


 明彦!あなたの今カノは、元カノとレズしました。これ、絶対に異常でしょ?横浜に私の倫理規程を汚染されてる!京都じゃあ・・・あれ?私は経験数が少ないから、これは全国的な現象なのか?まあ、気持ちいいんだから、許すとしましょう。私のセックスライフが広がったのかしら?


 ヒメが目を開けた。口を離す。雅子、あそこまでソックリってどういうこと?私、自分のをいじっていると勘違いした、と言う。私もそうだ。なんなんだろう?ドッペルゲンガーか何か?ヒメが上体を起こした。


「先生!ドッペルゲンガーって何?」
「自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種よ。自分とそっくりの姿をした分身、第2の自我、生霊の類。ドイツ語で、Doppel は英語のdouble の意味。だから、『二重』『生き写し』『コピー』で、Doppelgänger は、『二重の身体』ってこと」
「また、ひとつ、頭が良くなった!」
「ぜぇ~ったいに、試験にはでません!」
「先生!キス、うまいわね!」
「生徒!明彦に私より仕込まれたヒメに言われたくない!溺れそうになった。これは、夜だけにしよう。控えよう!」
「先生!でも、享保の改革は1716年、寛政の改革は1787年、天保の改革は1841年は、記憶に残った!」
「だったら良いのか・・・」


 何時だろう?腕時計を見たら、6時少し前だった。


「ヒメ、今、5時45分やん?5時半には明彦の今日の講義終わる時間やで」
「?」
「講義が終わって、15分、経過したやろう?彼は、公衆電話の周りをウロウロしてる思う。雅子は横浜から帰ってきたやろうか?部屋におるやろうか?ヒメは、一緒やろうか?それとも、雅子だけやろうか?やら、呻吟してんねん。それで、電話をかけよか、かけまいか、悩んでるとこや思う」
「雅子、京都弁が出てる。私、京都弁で喋る雅子にはキュンっとなる」
「関東の人はおもろいなあ。方言、好きなんて。ま、方言の事前練習やで。明彦は、方言フェチやさかい、うちの京都弁に弱いねん。ムラムラするみたいや。そろそろ、電話してくるはず。まあ、声を立てへんで聞いとき」


 2分経った。電話が鳴った。ヒメにシィっと言った。面白そうにニヤニヤするヒメ。受話器の後ろをヒメの耳に当てた。これでヒメにも聞こえる。


「あ!雅子、居た。明彦です。あのさ、講義が終わったんだけど・・・」
「明彦、夕飯、なんにする?横浜に行って、うち、疲れてもうたんや。店屋物取ろう思うんやけど、一緒に食べへん?今晩、どないすん?ここに泊まる?千駄ヶ谷に帰る?」
「ああ、今、行く。行きます。今晩、泊まろうか?泊まっていいかな?」
「泊まってくれるん?うち、うれしいわ。ほな、走って来てな。急いでな。ネグリジェに着替えよかいな?」
「25分!」ガチャ!


「ね?彼は、私一人だと思っている。ネグリジェ姿の私を想像。面白いでしょ?」
「雅子、良子並に悪い女ね?」
「私は良い子の良子じゃないわ。ヒメがここに居るのを見て、どう反応するかしら?ヒメ、私物にあなたの服があるわよね?」
「ありますけど?」
「私がヒメの服を着る。ヒメが私の服を着る。どう?もっと、面白くなるじゃない?」
「私、雅子はもっと真面目な人かと思ってました」
「へぇ~、そう見えるかな?」


 パンツがベトベトじゃない!ヒメ、これ、と、ラピスラズリの濃いブルーのお揃いのブラとパンティーを渡した。ヘェ~、私が着るとこう見えるんだ?予想以上にセクシーじゃない?あら?胸も似てる。良子ほど大きくない。お尻も私と同様小さい。


 ヒメに私のブカブカのサマーニットのプルオーバーを着せた。ゆるい首元から、ブラが見えるのよ。私は、ヒメの黒のブランドロゴがデザインされたTシャツと脚にフィットした白のチノパンツを着てみた。


 バスルームに行って、鏡の前に二人で立った。すごい!入れ替わってる!私の服でヒメは年齢が2才くらい上になった。ヒメの服で私は若くなった。化粧を直せば、もっとお互いに似てくるね?化粧品も交換して試してみた。ヒメが雅子に見える。雅子がヒメに見える。


 雅子、髪の分け方をお互い逆にするのよ、とヒメがトンボの髪留めを持ってきた。私も三角形の銀のヘアピンを渡した。完璧だ。


「雅子、明彦、これ、一瞬なら間違うと思う」
「チャイムが鳴ったら、二人並んで『さあ、どっちがどっち?』と声を揃えて聞こう。何秒、わからないかな?」
「10秒?」
「5秒」


 チャイムが鳴った。ドアの後ろに並んで立った。ロックを外した。ドアを開ける。さあ、どっちがどっち?明彦があとずさる。右を見て左を見る。1、2、3、4、5・・・12。


「右が雅子」と私を指差す。「左がヒメだ」
「12秒だね。どっちもはずれだ」
「まったく、何を二人ともしているんだ?」
「あら、受験勉強の息抜きです」


 みんなでソファーに座った。もう、ヒメのことで気まずくならなくなったようだ。よかった。


 彼がテーブルを見て「こののんべ!陽が沈む前から酒を受験生に飲ませたな」と言う。


「ウエルカムドリンクです」
「まったく・・・で、今日は何があったんですか?」
「気になる?気になるよね?」


 今日の出来事を説明してやった。


 また、腕組みして考えている。ストーリーを最初から反芻してるんじゃないわよ。ヒメはちょっと心配そう。明彦の気にいるかどうか気にしてるんだ。もう、自分で彼に対する呪縛を解かないとダメだ。これは時間がかかる。私は勝手に店屋物の注文を決めて電話した。かき揚げうどん3つ。うな重3つ。これで、どうだ?彼の分と私たちの分、三杯、マンハッタンを作った。明彦にハイっとカクテルを渡す。フォーフィンガーにしてやった。酔っぱらっちまえ。目薬いれればよかったかしら?って、おっと失言。


「ぼくはここに出入りするのを遠慮した方がよさそうだ。ヒメの勉強の邪魔をするわけにはいかない」とほら、想像通りのことを言う。熟慮の結果がこれだよ、まったく。じゃあ、私の体の疼きはどうしてくれるのよ?
「出入りしたっていいでしょ?じゃあ、私の体の疼きはどうしてくれるのよ?」
「ヒメもいることだし」
「明彦、私、毎日ここにいないわ。週3日くらいって、雅子さんも言ったでしょう?私のせいで明彦が雅子さんの部屋に来ないのはダメ。私のことは気にしないで」
「『ハーレムのことは、ハーレムの主は決められないのよ。女が決めるのよ』って、これはダメだろ?」


「明彦、さあ、飲んで飲んで。シラフだから、いろいろ考えるのよ。玄関でわかったでしょう?すぐには、私だかヒメだか区別がつかないんだから。部屋を暗くした寝室のベッドの上なら、ますます区別がつかないでしょ?二人一緒に抱いちゃえばいいんだから。良子とだってしてたくせして」
「あれは、良子とだから。雅子、いいですか?ぼくは、雅子がスキだ。それから、ヒメもスキだ。そういう女の子が二人いて、どう関係を保つというのだ?」


「明彦!良子に失礼!良子はあなたがスキなのに!大丈夫よ。雅子が教えてくれて、大学に入れれば、彼氏を作って、明彦に依存しないようにするんだもん。もう、明彦のことは忘れる・・・いいえ、忘れるんじゃなくて、写真アルバムの過去写真として飾っておく。それに、受験ストレスがあるでしょ?ストレス発散で、エッチしたっていいじゃん!スキは雅子に集中。私は良子並みの扱いでかまいません!」とヒメが力説する。良子並みの扱いって、ヒメも良子に失礼だろ?


「ヒメ、ぼくはそんなに器用じゃないって言っただろ?一度に一人でも手に余るんだ」
「私、浮気したんだよ?明彦以外の男に抱かれて、アンアンした尻軽女なんだよ?そんな女、スキだなんて言うな!」
「おい、明彦!また、ヒメが泣くぞ!それもうれし泣きだぞ!それでもスキだなんて言うんだから。明彦、ダメだろ?そうなったら、私とヒメがキミを取り合いになって、二人とも失うよ」
「まいったな」


「明彦、今日ね、雅子に受験勉強の極意をもう教わったの。考えるな!明彦みたいに原理原則なんかから始めるな!目前の問題だけ解くことに集中しろ!って。それでその通りにしたら簡単だった。9月の模試、偏差値60以上でもとれそうな気がする。でも、明彦が私を・・・私たちを抱いてくれないと、ストレス貯まっちゃって、それを雅子の体にぶつけそう。それ、困るでしょ?」
「それを雅子の体にぶつけそうって、何の話だ?」
「だって、エッチだけだったら、雅子でたぶん十分だよ」
「理解できない」


「だって、さっき、雅子とキスして試したもん」とヒメ。
「キミら、もうしたの?」
「ええ、試したわよ。悪い?キスとお触りをちょっと」あれ?悪くないでしょ?それとも、自分がいなかったから不服なの?
「・・・」
「ねえ、明彦、二人とも抱いたんだから、知ってるでしょ?姿格好だけじゃなくて、オ◯コも似たような感じだって?」と恥ずかしい名詞を言ってしまった。
「雅子、下品!」
「雅子、オ◯コってなあに?」とヒメが聞く。
「関西では、関東のオ◯ンコのことをオ◯コっていうのよ。ああ、恥ずかしい・・・」
「関東のオ◯ンコは恥ずかしくないんだ。オ◯コを口に出すと恥ずかしいんだ。ねえ、雅子、耳貸して」と耳を掴まれた。囁かれる。「雅子、雅子のオ◯コ、気持ちいい?オ◯コ、感じる?美姫のオ◯コはどう?よかった?私のオ◯コ?」恥ずかしい名詞を教えてしまった。
「止めてくれ!二人とも下品!わかった、わかった。わかりました。二人のご要望どおりにいたします」
「無駄な抵抗は早く止めればよかったのよ。それにエッチの最中も、雅子は『この英語の前置詞はどこにかかるんでしょうか?って質問』をしてくれるんで、受験勉強もバッチリ、大丈夫!」
「やれやれ・・・」


 かき揚げうどんとうな重を食べてしまった。考えたら、横浜に行ってから、生田さんのところでお団子を食べた以外、何も食べていなかった。ヒメも同じく。行儀が悪くてゴメンナサイ、と言いながら、私のノートを開いて、気になった部分を明彦に見せている。


 ほら、明彦、ここ。ここ見て!雅子、ちゃんと書いてる。江戸の三大改革。『今日(享)かん(寛)てん(天)食べたい』、享保の改革、寛政の改革、天保の改革、『よし(吉)! まず(松)は 水(水)だ!』で、享保の改革は徳川吉宗、寛政の改革は松平定信、天保の改革は水野忠邦、『いろ(16)んな花(87)がよい(41)改革!』、享保の改革は1716年、寛政の改革は1787年、天保の改革は1841年、これよ、これ。しかも色付き!


 これ、相当恥ずかしい。オタクの秀才の明彦はこういう覚え方をしないんだろうなあ?なんとなく、江戸初期からの時系列をまとめて、3大改革の時代背景と、それぞれの改革が必要だった理由、違いを調べて、それで全体のストーリーの中で、吉宗、松平定信、水野忠邦の人物像を想像して、イメージとして覚えたんだろう、と思った。


「雅子、これでいいよ。ぼくが間違っていた。ヒメには、この勉強の仕方が合ってる。試験に通る、成績を上げるなら、これが正解なんだ。ぼくみたいに、徳川吉宗、松平定信、水野忠邦の改革の違いを伝記を読んで調べるなんて、まどろっこしい」ほらね。やっぱり。こいつはそういうヤツだよ。だからスキなんだけどね。


 三杯ずつマンハッタンを飲んだので、彼の理性も吹き飛んだ。なんの疑問も抵抗もなく、三人で裸になってベッドに潜り込んだ。三人で、なんて初めてだ。ドキドキする。でも、なぜ、私が真ん中?想像では彼が真ん中のはず。


「ヒメ、なぜ私が真ん中?」
「良子説ではね、彼が真ん中だと、右に左に忙しくって、公平にしようと錯乱するから、なんだって。真ん中は第1夫人。右が第2夫人。左が明彦がバランスが取れていてよろしいんだそうです。私は、勝手に戦線離脱したから、第1は雅子。私は圏外です。それで、私と雅子で始めちゃうの。そうすると、明彦は我慢できなくなって、雅子の後ろからブスリとします。ところで、雅子、安全日?危険日?」
「金曜からだから、土、日、月曜日・・・まだ、安全日」
「私も同じく。じゃあ、避妊なし。生!」
「ヒメ、あなたか良子のどっちかが危険日だったらどうしていたの?」
「危険日の方に合わせて、どっちもスキンを使ったわ」
「合理的ね」って、胸をスリスリされていて、理性がもう飛んでる。


 ヒメが私を愛撫して、体中を触る。雅子、後ろ手で明彦のを触ってみなよ、もうカチカチだからと言う。触った。カチカチです。明彦が私の背中にしがみつく。おおお!固いのがお尻にあたる。彼は私の右脚を持ち上げて、脚を開かせる。あれを私のあそこに擦り付けて侵入口を探って、挿れられた。ヒメは明彦と私のつながった部分に指を這わせて、私と彼のを触る。突起を触って彼のを親指と人差指で輪っかを作って触っている。私は意識が飛びそう。

ヒメと明彦 XXXVI に続く。