フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦6、明彦編、ヒメと明彦 XXXII~XXXIV

よこはま物語
ヒメと明彦6、明彦編
ヒメと明彦 XXXII

 1977年7月17日(日)
 ●口裏合わせ


 美姫がギョッとした表情で雅子を見た。「あなたは、スケッチブックのMasako Komori さんね?そうでしょ?ここにいるということは、明彦と大学で出会ったのね?そうよね?」と雅子を睨みつける。なんで、美姫はたった一度すれ違っただけの女性にこれほどの敵愾心を燃やすんだろう?

「美姫、私は昨日からの当事者でよくわからないけど、美姫はたった一度すれ違っただけ、明彦の手袋を拾っただけのこの小森雅子さんをなぜそうも憎々しげに思うの?見るの?ま、それはおいおいの話として」私はハイエースに積んであった美姫のバックを良子の足元に押した。「これはあなたのバック。達夫の部屋のクローゼットにしまってあったわ。達夫がはらいせに私たちに教えたのよ、このバックのありかと中身のことを。ここのみんな達夫が言ったから知っている。でも、中身を見たのは私だけ。生々しいからね」と言った。美姫がガックリと首をたれた。そりゃあ、達夫ので汚されたパンティーなんて実物があるんじゃ、雅子がどうとか言えないわよ。

ヒメと明彦 XXXIII

 1977年7月17日(日)
 ●雅子の提案


「雅子、それ、今カノのマンションで、元カノが受験勉強するってことじゃないの?」と良子。
「何か問題ある?私は構わない。美姫ちゃんさえ気にしなければ、これで、偏差値は上がる。そうね、六大学くらいなら大丈夫と思う」
「美姫、どうするのよ?雅子の言うことを聞いたら、あなた、なんとかなるかもよ?今のままじゃあ、泣いてばかりになって、パパもママも不信感を持ったままよ?」と良子が美姫ちゃんの頭をなでながら聞いた。
「あの、その、雅子さんがそれでよろしいって言って頂けるなら、こちらこそ、お願い致します」頭をあげて、初めて私の目をちゃんと見てお辞儀した。よしよし。
「本当にいいのね?私、あなたのいう『スケッチブックの女』なのよ?」
「雅子さんのさっきからのお話で、雅子さんのことが少しわかりました。雅子さんのアイデアが一番いいと思います。誘拐されていたら、香港か中国に売り飛ばされていたかもしれないし、達夫のアパートにいる時から、これからどうするんだろう?と途方にくれていました」

ヒメと明彦 XXXIV

 1977年7月18日(月)
 ●盗み聞き


 ファンの知り合いのプータローたちが中華街近くの喫茶店でだべっていた。ソファーの背もたれは背が高く、隣は見えない。観葉植物が目隠し代わりに置いてあった。目隠しの後ろの隣のブースで、北京語で喋っている男二人がいた。プータローは、もちろん、各地の中国語はわかる。仲間とだべりながら、彼は聞き耳を立てた。


「ふ~ん、一網打尽じゃないか?」
「俺とお前と跡継ぎだけだよ。あとはみんなしょっぴかれた」
「現場に居たウチの二人は?」
「一人は刑事みたいなのに連行された。もう一人も在日米軍郵便局からずらがろうとして、外に出たところを県警に逮捕された。現場に居た米兵三人には昨日、事情を聞いた。襲撃したのは、男三人、女二人らしい。みんなバラクラバ帽を被っていたので、面がわからねえ。男の内、一人は刑事らしい。警察バッジを人質に見せていたようだ。残りの二人は、米兵は日本人じゃねえんじゃないかと言っている。中華街のもんかもしれない。女二人はわかんねえ。背高のっぽと中背の女で・・・