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ヒメと明彦 第4章、ヒメと明彦 XVI

ヒメと明彦 第4章
ヒメと明彦 XVI

登場人物

宮部明彦    :理系大学物理学科の1年生、横浜出身
仲里美姫    :明彦の高校同期の妹、横浜の女子校の3年生
高橋良子    :美姫の高校の同級生
生田さん    :明彦のアパートの大家、布団屋さん
山屋良平    :明彦のアパートの近所の酒屋の息子


小森雅子    :理系大学化学科の学生、美術部。京都出身、
         実家は和紙問屋、明彦の別れた恋人
吉田万里子   :理系大学化学科の1年生、雅子の後輩、美術部


内藤くん    :雅子の同期、美術部、万里子のBF
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身


加藤恵美    :明彦の大学の近くの文系学生、心理学科専攻
杉田真理子   :明彦の大学の近くの文系学生、哲学専攻


森絵美     :文系大学心理学科の学生
島津洋子    :新潟出身の弁護士


清美      :明彦と同じ理系大学化学科の学生、美術部

 1976年4月10日(土)
 ●Miki Nakazato Ⅲ

 明彦のアパートに戻ると、彼が「あのね、なんだ?山屋酒店の良平さんって人が、妹さんに配達をお願いされましたって訪ねてきたぞ!良子さん、美姫さん、可愛いですね。お兄さん、キレイな妹さんがいていいなあ。あの、山屋酒店の良平です!って連呼して配達してきたけど、なんなんだ?」と言う。


 やれやれ、私と良子、ご近所では明彦の妹になっちゃったよ。生田さんに口止めをしておこう。


「ぼくはお酒を頼んだ覚えはないぞ!」と明彦が私に文句を言う。
「まあまあ、明彦さん、私が飲みたいの。いいじゃない?」と明彦の顔にグッと顔を近寄らせて上目遣いで言う。こ、この女!
「・・・まあ、良子さんが飲みたいんだったら・・・」こ、こいつ!明彦!私がこんなことをしたら、説教するじゃん!扱いが違う!やっぱり良子は危険だよ!


「ヒメ、いくらだった?」と言うので「今日は私と良子の奢りだよ」と言うと、高校生に出させるわけには行かないとかブツブツ言う。あのね、キミもちょっと前まで高校生だったんだよ!5月の誕生日前だから、まだ18才じゃないか!


 明彦が「氷、2キロ?冷蔵庫に入り切らなかったよ」とブロックの氷を金槌で割ってロックアイスにしていた。アイスバケットなんて洒落たものはない。鍋にアイスを入れていた。ま、こういう貧乏くさいのがいい。秋吉久美子の世界。もっと汚い畳部屋だったら雰囲気でるんだけどなあ。


 良子と二人でお味噌汁を作った。キャベツを刻む。メンチカツとコロッケを盛り付ける。山盛りの焼き鳥。良子はなんでも適当に買ったり頼んだりしちゃう。おおらか過ぎる。こりゃ、将来の旦那さんは大変だよ。う~ん、良子をコントロールできる男性なんているんだろうか?


 ご飯は後にしてっと。まずは、ビール。良子は小指を立てながら、酒屋さんでもらった安物のガラスのコップのビールをゴクゴク一気に呑んでしまう。いつもながら、威勢がいいね。明彦も私もつられてゴクゴク。


 ビールが4本空いた。明彦がロックグラスに氷を入れて、自分用に角のオンザロックを作った。


「あら、明彦さん、ご自分だけ?私もウイスキー飲みたいな?」とビールの半分以上を呑んだ良子が上目遣いで明彦に頼む。頬がピンクだ。その高校生とは思えない色気をだすんじゃない!私が言えばなんだかんだと文句を言う明彦が良子のウイスキーをホイホイ作り出す。


「水割りだね?」と良子に聞く。「明彦さんと同じ、オンザロックがいいなあ、なんて・・・」「了解!」おい!私のは?私も飲む!「明彦、私も!」「え~?ヒメも?大丈夫?水割りだね?」「何いってんの!良子にはオンザロックを作って!私も同じの!」


 品よく焼き鳥を食べて、ウイスキーをクイクイ呑む良子。彼女がいると私の食べ方が品なく見えるかもしれない。いいんだ、いいんだ、私は私。でも、オンザロック、濃いね?失敗した。喉が焼けます。日本酒にすれば良かった。


 良子はちゃっかり、私と明彦の間に座ってる。それ、ダメだろ?い、いつの間にか、明彦にしなだれかかっている!ダメ!


・・・し、しまった!良子にお酒を飲ませてはいけないんだった!


 こ、この女、お正月なんかでみんなでお屠蘇とか飲む、家族が日本酒は?とか言って勧める。そうすると、ある一線を超えると、地が出るんだ!忘れていた!


 今年、お正月2日に良子と私はお呼ばれして、同級生の優子の家におじゃました。彼女は一人っ子。彼女のお父さんもお母さんも和服を着ていた。和室におせちが並べられぐい呑みが渡される。ぐい呑み?お猪口じゃないのね?お母さんがお屠蘇を注いでくれる。お屠蘇は日本酒に屠蘇散を浸したものだった。屠蘇散入れないほうがおいしいのに。お父さんは手酌で二号徳利から熱燗を飲んでいる。


 優子が「お父さん、私も熱燗の方がいい!」と言う。お父さんは「正月だからな。お母さん、もっと熱燗もってきて。お前も飲めよ」とか言い出す。私たちに注いで回る。優子のお父さんは建築関係の仕事で、体格も良い体育会系だ。豪快だ。高校生がお酒なんてと私のパパなら言うことを言わない。もっと飲め、高校生!とか言う。お父さん、娘じゃなく、私でもなく、品よく座ってクイクイお酒を飲んでいる良子を見ている。女を見る視線だよ。


 良子はヒラヒラした白いブラウスにワンピのミニ。黒のストッキング。私と違って大学生くらいに見える。長いロングの黒髪から妖精っぽく耳を出している。テレビに出ているアイドルの女の子よりもずっとキレイだ。頬がうっすらとピンク色になって艶っぽい。


 お父さんとお母さんの間に座って、二人にお酌しだした。優子はおせちをバクバク食べている。優子も「美姫、もっと飲もう!」なんて言ってぐい呑みにドボドボ注ぐ。おいおい、こぼれてるよ、こぼれてるって。この一家、酒飲み一家なのかね?お母さんも姿勢良く、クイッと呑んでる。ハイ、ご返杯なんて良子に飲ませてる。ペース、早くない?と思ったんだ。


 良子は、お父さんとお母さんの肩に頬をつけたりして甘えている。姿勢、崩れてるぞ!パンツ見えるぞ!こいつ、酔ってる。目が艶っぽい。おいおい、優等生はどうした?裏の顔の地が出かかってるぞ!優子も酔ってる。私以外みんな酔ってるの?


「ねえ、優子、良子、優子の部屋でトランプしようよ」と私が提案した。この場を離れないと。優子は良子の本質を知らないからね。学業優秀の良い子と信じている。違うんだ、こいつは。ビッチなんだよ。彼女には悪い仲間もいるんだよ。バレるよ、良子。酔うとこうなるとは知らなかった。


 私は、良子と優子を引っ張って優子の部屋に行った。それからが大変。良子は色魔でキス魔だった。良子は超甘え体質になって「優子ちゃん、好き!」と言って優子を抱きしめる。優子の体をあちこち触って「キスしちゃおう!」と優子にキスしだした。


 優子は十分に酔っている。後であまり覚えてないだろう。それは幸い。傍から見ても舌入ってるよ。こいつ、修学旅行の時にわかったけど、キスがうまいんだよ。ネットリ舌を絡めてくる。舌がくるまれて、ボォ~っとなるのよ。優子もボォ~っとキスを受けているんじゃない。優子の体を這う良子の指がいやらしい。あのさ、私がいるんですけど!


 なんて、呆気に取られて見ていたら、良子に手を引っ張られた。私もかい?優子の唇から口を離すと、私にもキスしだす。舌!舌!吸うんじゃない!良子は私に忙しいとおもったら、右手で優子のスカートに手を入れているじゃないの!この優等生の色魔!


 呆れたことに良い子の優子が良子にキスを迫る。こら!良い子を悪の道に引き込むんじゃない!わかるんだなあ。優子、感じてるよ。私は去年の8月4日に明彦としちゃったから処女じゃないけど、優子は絶対処女!おかしなことを覚えさせるんじゃない!


 結局、優子、良子に篭絡された。私よりもウブな優子を良子はその日お好みのようでした。優子、体をヒクヒクさせてる。これ、生まれて初めてエクスタシーを感じたんじゃないの?服はさすがに脱がさなかったが、良子、スカートの下でモゾモゾさせてたし、あれはパンツの中に指挿れてたよ。優子、酔ってて覚えてなければいいんだけど。


・・・なんてことがこの前の正月あったのだ。良い子のお面を被ったワルだったのは知っていたが、酔うと色魔でキス魔になることは知らなかった。


 その色魔が酔って、私と明彦の間に座っている。絶対ダメだろ?さっき、三人でしたら?なんて言ったから、絶対に良子の意識にそれが残っている!ゲェ~、冗談の思いつきだったんだよ?


 良子が明彦にしなだれかかる。色魔!近い!「明彦さぁ~ん、その空いている手を私の肩にまわしてよ」ととんでもないことを言う。「うん」とか彼が言う。ダメだろ?私の前で、それはダメだろ?でも、肩を抱いてしまう。


 でも?良子の頭越しに明彦が私にウインクした。どういう意味?「良子、明彦さんが好きだなあ。ねえ、美姫だって、良子も入れて三人と言っているんだし、どうかな?」と言う。この色魔め!


「うん、まあ、良子さんは妹みたいに思えるよ、可愛い」
「あら、私は妹?じゃあ、美姫ちゃんは?」
「うん、ヒメはぼくの女」明彦、ふだん、そういうことを言わないよね?ね?『ヒメはぼくの女』だってさ!勝った!
「私も明彦さんの女になりたい!」おいおい、良子!
「それはダメ。器用じゃないから、一度に一人だけ。複数はハンドルできないんだよ」
「え~、私が妹扱いで、美姫が明彦さんの女?」
「そう、その方が平和だ。ねえ、ヒメ?」


 良子が明彦にしなだれかかっていた体を離した。明彦の顔をじっと見て「え~?私、美姫に負けたの?」と言う。なんだ、明彦、良子に対する耐性があるんだね?「勝ち負けじゃないと思うけど」「魅力ないのかなあ、私」


「ヒメが言った通り、良子さんは頭が良すぎるんだよ。男の子は駆け引きの心理戦でどうなるもんじゃない場合もある。ヒメみたいにスキ!って思ったら、グイグイ押すだけの方の女の子が良いって男子もいる。でも、良子さんは魅力的だよ。グラッときたけどね」
「・・・美姫がいたからでしょ?いなかったらどうなの?」
「それは自信ないなあ。だから、ヒメはできるだけ手元において、ヒメを裏切らないようにしてるんだ」


「明彦さん、うまく言い逃れたわね?」と良子。
「良子、あなたの思うようにならない男もいるんだよ」と私は強調した。
「うん、勉強になった。悔しくないわよ・・・明彦さんを美姫から取るのは諦める。でも、三人ならいいんでしょ?それは諦めない!」良子、酔ってる!
「わけわかんないわ!」
「美姫!お酒頂戴!呑む!」
「良子、まだ呑むの?」
「振ることはあっても、振られることはなかったもの・・・実は、なんか悔しい・・・」


ヒメと明彦 第4章、ヒメと明彦 XVI に続く。