フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

よこはま物語、ヒメと明彦5、芳芳編、ヒメと明彦 XXII

よこはま物語
ヒメと明彦5、芳芳編
ヒメと明彦 XXII

「ヒメと明彦」を章別に4~5話で書いていたら、章にまたがって、話し手がバラバラになり時間軸も前後してしまったので、改めて、話し手別で分けていこうと思いました。それに、シリーズ「A piece of rum raisin - 単品集」がヒメの話は、全然単品集でなくなってきてますので、改めて、この別シリーズでまとめてます。

登場人物

宮部明彦    :理系大学物理学科の1年生、横浜出身
仲里美姫    :明彦の高校同期の妹、横浜の女子校の3年生
高橋良子    :美姫の高校の同級生
生田さん    :明彦のアパートの大家、布団屋さん
坂下優子    :美姫と良子の同級生


張本芳子    :良子の小学校の同級生、中華系帰化人の娘、
         張芳芳(ファンファン)
林田達夫    :中華街の大手中華料理屋の社長の長男
吉村刑事    :神奈川県警加賀町警察署所轄刑事


小森雅子    :理系大学化学科の学生、美術部。京都出身、
         実家は和紙問屋、明彦の別れた恋人
吉田万里子   :理系大学化学科の1年生、雅子の後輩、美術部
内藤くん    :雅子の同期、美術部、万里子のBF
田中美佐子   :外資系サラリーマンの妻。哲学科出身


加藤恵美    :明彦の大学の近くの文系学生、心理学科専攻
杉田真理子   :明彦の大学の近くの文系学生、哲学専攻


森絵美     :文系大学心理学科の学生
島津洋子    :新潟出身の弁護士


清美      :明彦と同じ理系大学化学科の学生、美術部

ヒメと明彦 XXII
 1977年7月14日(木)
 ●芳子の捜索

 良子の頼みだから、よし、今日は大学休んで調べてみよう。私がいないのがわかれば、友だちの誰かが代返してくれるだろうし。講義ノートは後で見せてもらえばいいや。

 私は良子に借りた仲里美姫の5枚の写真を見直してみた。良子の言っていた『2月の大学入試、全部フケて、受けなかった』って思い切ったことをする子には見えない。彼氏の明彦への腹いせ?違うなあ。謎のボーイフレンドにそそのかされた?そっちの方がありかもしれない。家族への反発と彼氏への腹いせも入っているかな?良子に後で聞いてみよう。

 まず、この封筒の消印。郵便局の集配範囲を調べる必要がある。どうしようかな。郵便局に直接聞きに行くか?

 格好は・・・郵便局が忙しいと聞きに行っても答えてくれないかもしれないね?まずは、大学生ルックにしよう。スカートは短いやつ。チェックのスカート。普段ははかないストッキング。おへその見えそうに短いTシャツ。髪の毛はポニテにして、化粧は薄く、ピンクのリップ。それで良子のしていたような度の入っていない黒縁メガネ。こんなもんかな?テキストとノートを十文字でバインドして抱える。

 中華街郵便局は、平日の午前中だったけど、預金窓口は混んでいた。郵便物の窓口はそれほどでもない。冴えない青の制服を着た女性が座っていた。ちょっと気弱げに聞いてみる。「あのぉ、私、大学生なんですが、大学の課題で、横浜市中区の郵便局の集配状況というのを調べていまして、お話をお聞きしたいんですが、どなたか説明していただける方はおられませんでしょうか?」

 窓口の女性はちょっと面倒くさそうな顔をしたが、後ろを振り返って奥に座っているハゲたおっさんに声をかけた。「高田局長、大学生の方が集配について話を聞きたいって言ってますが、局長、お暇ですか?」と『お暇』を強調して言った。確かに『お暇』そうだ。局長と言われた高田のおっさんは、デスクから顔を上げて私を見た。私はとびきりの笑顔を見せた。ニコッ!スケベそうなおっさんみたいだよ。

 高田局長は、よっこらしょと腰を上げて、窓口のこっち側に出てきた。私の頭からつまさきまで見た。どうかな?高田局長?悪くない脚だろ?
 
「キミが?」
「ハイ、張本と申します。大学の課題で郵便局の集配状況を調査しておりまして」
「ふ~ん。今、手が空いたところで、ちょっとだけだったら話をしてもいいよ」今、手が空いた?暇そうだったけどね。高田局長は奥の従業員専用のドアを開けて私を応接室に通した。

 応接室のソファーって、どれも低いのはなぜだろう?ミニスカで座ると裾がずり上がってパンツが見えそうになるよ。ま、今は、パンツを見せたほうが良いんだろうけど。高田局長、素知らぬフリして、私のスカートの奥をチラ見している。相手がいやらしくて良かったよ。私は家にあった中区の地図、中華街周辺の地図をバックから取り出して、応接セットのテーブルに拡げた。え?なんでそんな地図が家に普通あるのかって?シノギに使うなんて言わないよ。各店舗の状況で月極のシノギの集金に使うなんて私は知らない。カタギの女学生だよ、私は。

「この中華街郵便局の周辺には、石川町駅前郵便局、シルクセンター内郵便局、住吉町郵便局がございますよね?この中華街郵便局の集配エリアと他の局のエリアの区分はどうなってますでしょうか?」

「ほほぉ、詳しく聞くんだね」と高田局長。私はテーブルに乗り出して、首周りのルーズなTシャツの中が見えるように前かがみになった。おっさん、ブラ、見えるかい?
「ええ、担当教授が集配の区分でどう郵便局の負荷の軽重が出るのかを調べろと言うもんですから。そんなこと調べてどうするんでしょうね?なにか考えがあるんでしょう。まずは、エリア区分だけお聞きしたいんですよ」とわざとらしくメガネをすりあげた。首を傾けてニコッと。自然と膝が開いちゃいましたとピタッと閉じていた脚をちょっと開く。パンツ、見えますか?高田さん?


 高田局長は、ブラとパンツのせいで、道路名まで詳しく区分エリアを教えてくれた。説明の間も私の胸と脚からは視線を離さない。おうおう、郵便局職員が親切なことだよ。普段はつっけんどんなんだけどね。これを予想して服装を選んで正解であった。ブラとパンツで落ちない男は十人に一人ですよ。特に、私のようなチビだけど、胸の大きなカワイ子だったら。


 はがきや封書の消印の情報は、郵便局名、日付(YY.MM.DD、YYは和暦年)、時間帯(0-8、8-12、12-18、18-24)が押印されているそうだ。大きな郵便局は消印は機械で自動化されているが、この郵便局は規模が小さいので手作業で押印する。なるほど。


 高田局長、親切に地図を指し示しながら説明してくれた。「中華街の北、日本大通りを挟んで向こうの山下公園側はシルクセンター内郵便局の集配範囲です。(つまり美姫はその区域からは投函していない。除外できる)横浜公園(現在はスタジアム)の方も住吉町郵便局の集配範囲。(これも除外)中村川から南の元町の方は、石川町駅前郵便局の集配範囲。(これも除外)」ふむふむ。高田局長は、郵便ポストの位置がマークされている地図を出してきて、集配経路まで説明しだす。まあ、一応聞いておこう。


 ということは、横浜公園前の大さん橋通りから東、ほぼ中華街そのものの区域が中華街郵便局の集配範囲となるわけね?


 さてそこで、加賀町警察署前の海河道から東は住宅やアパートなどない。開港道から北も同じく。オフィスビルばかりだ。市立港中学の当たりも住宅やアパートなどない。中華街で見ると、住宅やアパートは裏通り。怪しいのは中華街の中村川沿いの建物だな。汚いアパートがかなり建ってるものな。

 高田局長!役に立つよ!ハゲのおっさん!話の最後に、低いソファーから苦労して立ち上がるフリをして、失敗して尻もちをついた演技をサービスした。どうです?これで、足が開いてパンツ丸見えになったでしょ?高田局長、鼻の下が思いっきり伸びたよ。「もしかしたら、教授に説明してから、またお邪魔するかもしれません」「ああ、張本さん、いつでもどうぞどうぞ」


 郵便局を出て、さて、どうしようと考えた。平日の昼だものなあ。高校の同級生は、ほとんど丘の上の子だから、役に立たない。小学校の中華系の同級生をあたろう。と、電話をかけるのも面倒なので、直接家を訪問する。大学に進学した子たちは授業に出ていて留守。浪人生で家にいる子に頼んだ。歩きまわっていると、プータローをしている男子の一団がいた。こいつら昼間っから路上でタバコ吸ってうんこ座りで何やってんだろ?


「おう、ファンファンじゃねえか!久しぶりだぜ。丘の上のガッコに行って、俺らはお見限りかよ?」と言う。バカ、私だって丘の下の子、ガッコで生まれが変わるわけじゃない。
「あのさ、人、探してるんだ。ダチの友だちで、男に騙されて、男の部屋に転がり込んでそうな、私と同い年の女の子なんだけどね」
「ほぉ~、わけありじゃねえか?」
「親の外聞もあるから、サツにも言ってないらしい。内緒で調べてんだ」
「写真があるか?」

ヒメと明彦5、芳芳編、ヒメと明彦 XXII に続く。

新シリーズ「よこはま物語」

ヒメと明彦 XXI

 1970年2月4日(水)
 ●良子、小学6年生