フランク・ロイドのブログ

フランク・ロイドの徒然

奴隷商人 Ⅲ 第20章 ●奴隷商人18、紀元前47年

奴隷商人 Ⅲ 第20章 ●奴隷商人18、紀元前47年

 私とムラーが先に港に着いた。ピティオスと私の執事は、手下を呼びに行った分、遅れているようだ。まだ、海賊船はもやいを解いていない。甲板から盛大な音がしていた。なんだ?内輪もめか?

 ムラーの旦那と私は、タラップを駆け上がった。私は、甲板の光景を見て、唖然とした。


 甲板では、ムラーの旦那の奥方のエミーが、両手に半月刀を持って、海賊の首を切りながら、もう一人の腹を切り裂いていた。奴隷頭のソフィアは、船具のロープで海賊の首を締め上げて、吊し上げている。ジュリアはナイフで海賊の首を突き刺している。若い子の、ムラーが言うアイリスとかいう奴隷の子は、海賊の額に右手を当ててアイアンクローのようにしている。海賊は泡を吹いている。


「あ~あ、女ども、皆殺しにしちまったようだぜ。な?モハメッド、俺はこいつら海賊の方が心配だったんだよ」と言う。甲板は血だらけだった。


 私の執事、ピティオス、その手下もタラップを駆け上がってきて、血の海の甲板を見て唖然としている。


 ムラーの奥方が気がついて、両手に半月刀をぶら下げながら、ムラーの旦那に駆け寄ってきた。「あなた、助けに来てくれたのね。うれし~い」とムラーに抱きつこうとする。「エミー、抱きつかないでくれ。おまえ、血まみれだ。服が汚れるじゃないか?怪我はないのか?」と聞くと、「大丈夫よ。縛られたんで縄目がヒリヒリする程度だわ」と言っている。可愛い顔をして怖い女だよ。奴隷頭二人も若い子もつええ。なんなんだ?


 ムラーが「モハメッド、悪いがお前の馬二頭を貸してくれ。こいつらを連れ帰る。それから、これ「と私に金貨を握らせた。「このことは黙っといてくれ。ピティオスと手下がやったことにしてくれ。外聞が悪いからな。うちの女がこんなことするなんて噂が立つと商売に差し支える。それで、ローマの護民官のところに行って、報告しておいてくれ。その金貨をつかませてくれ。後で、モハメッド、借りは返すから。お前の執事にも言い含めておいてくれ」と言う。


 ムラーは、彼とピティオスの乗ってきた馬、それと私と執事の馬に女どもを乗せて、さっさと行ってしまった。こりゃ、護民官にどう説明しようか?私とピティオスは顔を見合わせた。